【スピマスって何種類あるの?】
オメガの代名詞たるスピードマスターの全て
オリンピックのタイムキーパーやNASAの公式装備への採用、果てなき海洋探査への支援、伝説のスパイのアイテムなど、いちウォッチメーカーとしては他に類を見ないほど世界への影響力を見せてきた、オメガ。
代表的なシリーズとして、スパイも愛したダイバーズウォッチ「シーマスター」、上質なエレガンスを演出する「コンステレーション」、そして、人類初の月面着陸に同行した「スピードマスター」が挙げられる。
さて、そのスピードマスターだが、シリーズを代表するモデル「スピードマスタープロフェッショナル」通称「ムーンウォッチ」以外にも、たくさんのリスペクトすべきモデルがリリースされているのはご存知だろうか。
当ページでは、スピードマスターの基本的な紹介とともに、スピードマスターの見せる多彩なラインナップの魅力についてご紹介しよう。
なお、オメガのもう一つのアイコニックなシリーズであるシーマスターについてはこちらのページで詳しく紹介している。ぜひ参考にしていただきたい。
目次
スピードマスターの誕生
その圧倒的知名度と逸話については最早語るまでもないと思うが、改めてその歴史について解説しよう。
1957年、腕時計がファッションアイテムではなく時を刻むという本来の機能を重視されていた時代、それまでのオメガの代表的なコレクションであったシーマスターのプロフェッショナルシリーズとしてスピードマスターは誕生した。
1950年代当時、計測機能のついた腕時計はモータースポーツや陸上競技のプロフェッショナルたちが扱うようなツールとしての側面が非常に強く、スピードマスターは使う人間を選ぶ腕時計であったようだ。
現代では、ウォッチフェイスを装飾する個性の一つという立ち位置も否めないクロノグラフやタキメーターだが、シリーズ誕生当時は確かにプロフェッショナルのための機能であり、腕に巻ける計測機器は非常に実用的だったことだろう。
※タキメーター
TACHY(速さ)METER(計る)の名の通り速さを計測できる機能。目標が1kmを通過する秒数から、ベゼルのスケールを使って時速(マイル)を導き出すことができる。ベゼルに300を超える大きな数字が刻まれている腕時計にはたいていタキメーターが搭載されており、ダイバーズウォッチの大きなベゼルとは一味違ったスポーティさが魅力。
実際、初代スピードマスターを愛用していたのはほんのひと握りの人間だったようで、現在ではほとんど現存していない幻の一本となっている。
そんなスピードマスターの魅力は、腕時計の”オシャレさ”と”実用性”が問われる現代においても決して色褪せることはない。熱狂的なスピードマスターファンである「スピーディ」が毎週火曜日にスピードマスターの写真を投稿する「スピーディ・チューズデイ」を筆頭に、シリーズに対する人気が今も強く根付いている。
なお、この1957年にはシーマスターをベースにしたプロフェッショナルモデル「シーマスター300」「レイルマスター」も登場しており、オメガの歴史が大きく変わった記念すべき年となっている。
スピードマスターの見せる多彩な表情
それでは、ここからはスピードマスターが見せる多彩な世界をご紹介しよう。なお、広義で言えばダークサイドオブザ・ムーンも2カウンターに分類されるはずだが、オメガオフィシャルに見倣いそれぞれに分けて紹介する。
プロフェッショナル
スピードマスターシリーズの起源にして頂点に君臨するモデル、スピードマスタープロフェッショナル。その文字盤にPROFESSIONALの名を刻んだのは第4世代モデルからのことである。
知っての通り、当初スピードマスターはモータースポーツにおいて活躍することが想定されたモデルであり、現代のように宇宙が想起されるモデルではなかった。
しかし、過酷な環境に耐えうる強固さと実用性を併せ持ち、無重力空間に適した手巻きだったことが功を奏し、スピードマスターは月面探査の正式装備品に選ばれることとなる。
このエピソードはスピードマスターに宇宙のイメージを強く印象づけるに至り、そのプロ仕様ゆえにプロフェッショナルという名を冠するに至ったのだ。
なお、「ムーンウォッチ」という愛称はこの宇宙に行ったこの第4世代から使われる名前である。
さて、現在我々が最も手に入れやすいスピードマスタープロフェッショナルと言えば、2021年新作の第8世代と一つ型落ちの第7世代だろう。ここでは第8世代を詳しく紹介するが、こちらで詳しく新旧比較紹介しているので参考にしていただきたい。
第8世代スピードマスタープロフェッショナル
2021年にリリースされたスピードマスタープロフェッショナルの最新モデル。
この第8世代を一言で表すなら初代スピードマスターへの原点回帰ではなく、正当進化モデルだと言えるだろう。プロフェッショナルの名を冠し初めて月へと飛びたった第4世代スピードマスター、通称初代ムーンウォッチに、現代の技術を加えて蘇らせたムーンウォッチである。
正統進化の要とも言えるのはマスタークロノメーター認定のコーアクシャルムーブメント「Cal.3861」の搭載である。スピードマスターの伝統を尊び、「CO-AXIAL MASTER CHRONOMETER」の文字は盤面でなく裏ぶたに刻まれることとなったが、しっかりとオメガの最新ムーブメントの恩恵を受けているわけだ。
これにより、ただでさえ実用性の高かったスピードマスターはさらなる精度と耐磁性を手に入れたこととなる。
デザインは細かいところまで初代モデルを踏襲。アシンメトリーのケースにステップダイヤルなど、初代を彷彿とさせる意匠も忘れていない。
バリエーションには初代ムーンウォッチと同様のヘザライトガラス(強化プラスチック)モデルと、現行モデルにのっとったサファイアガラスのモデルがラインナップされた。
それぞれのモデルにオメガのこだわりが見せられており、へザライトガラスモデルには小さなオメガのロゴが刻まれ、サファイアガラスモデルにはシースルーバックが採用されるなど、敬虔なスピーディも納得の仕上がりが見ることができる。
ダーク サイド オブ ザ ムーン
オメガがムーンウォッチを再解釈し新しく提唱したスピードマスター、それが月の裏側を意味するこのシリーズである。
かつて、アポロ8号に搭乗した宇宙飛行士たちは月の裏側を見た史上初の人類となった。
この人類史に残る一瞬は、のちのアポロ11号の月面着陸の偉業と併せて永久に語り継がれることだろう。
その偉大なミッションにオメガはインスピレーションを見出し、セルフオマージュとして生み出されたのが、この「ダーク サイド オブ ザ ムーン」である。
そのシリーズの特徴として「月の裏側」という名前にふさわしい、黒基調の色合いが挙げられる。
この黒色を生み出すのが酸化ジルコニウムを原料とした、ブラックセラミック。多彩なカラーの表現が可能かつキズがつきにくく、肌に優しく、軽やかなこの素材はスピードマスターの新たな可能性を開いた。
盤面中央の「ZrO2」がその証である。
バリエーションには、黒一色に統一された「ブラック・ブラック」、アンティーク・スピーディとも呼ぶべき「ヴィンテージ・ブラック」、ラグジュアリーな「セドナブラック」など、コラボデザインモデルも含め豊富なラインナップが出揃う。
ここでは代表的なモデルをいくつかご紹介する。
ブラック・ブラック
数あるスピードマスターの中でも異色のコレクション。
名前の通り、黒に黒を重ねたオールブラック・スピードマスター。
仕上げの違い、黒色の濃淡によって腕時計に必要な要素を際立たせ、ダークなフォルムと申し分ない視認性を両立した非常にテクニカルなモデルであると言える。要所要所にブラックのスーパールミノバがしっかりと塗布されており、暗所でもその使用感に全く問題はない。
私たちの見ることのできない月の裏側、そのブラックボックスめいた印象を見事に表現した一本だ。
ヴィンテージブラック
第一世代モデルから色褪せることのないスピードマスターの魅力は、現代でも通用するそのスタイリッシュなフォルムゆえだと筆者は考えている。
しかしそこにあからさまなヴィンテージ感をマッチさせると、ほとんど完璧なアンティークウォッチが完成してしまった。
ブラック主体にブラウンの差し色という、ヴィンテージの定石を見事にスピードマスターに当てはめたこのモデルは、年代物のようなレザーストラップも手助けし、その名にふさわしい輝きを放っている。ブラウンのスーパールミノバはタキメーターにまで及び、暗所ではまた違う表情を見せてくれることだろう。
ピッチブラック
「真っ黒」という意味を持つ、モノクロのカラーリングが特徴的なモデル。
いかにもスーパールミノバが塗布されていそうな各種インデックスやスケールは、真っ黒という名前に反し、暗所で確かな存在感を放つ。ついでに言えば、ブランドロゴにまでルミノバが及んでいるモデルは珍しく、他モデルとの差別化がしっかりと図られているように感じる。
写真では蛍光グリーンの差し色がされているように見える一本だが、明るいところではしっかりと白色であることにも注目したい。暗所が近づくにつれ表情を変えるウォッチフェイスは、夜になるにつれ存在感が増す月のようにも感じられるだろう。
オメガスピードマスターダークサイドオブザムーン ピッチブラック
? 時計 宝飾 眼鏡 ハラダ (@kk_harada) August 22, 2021
311.92.44.51.01.004
この腕時計は暗闇でこそ、真価を発揮します。
タキメーターまで全てが輝く様子は、男心を擽ります!
メチャクチャカッコいいので是非動画でご確認ください?https://t.co/0o3JQizb4r pic.twitter.com/FEsYvi0kV4
2カウンター
スピードマスターの象徴たるクロノグラフの3つのサブダイヤルを一つ減らし、新たなスタイルを手にしたスピードマスター。シリーズには、原点のコンセプトに立ち返った「レーシング」、最大級の月へのリスペクト「ムーンフェイズ」、そしてスピードマスターの新星「クロノスコープ」が並ぶ。
スピードマスターレーシング
スピードマスターの当初の開発コンセプトから考えると、むしろ本流とも言えるレーシングスタイル。
特徴的なモノクロフラッグのようなミニッツトラックは、これまでのスピードマスターになかったスポーティさをダイヤルに与え、レーシングという名前の由来にもなっている。サブダイヤルの代わりに配されたデイト機能も他のスピードマスターとの差別化が感じられ、カラーリングは黒基調に黄系の差し色を加えたものが多く出揃う。まさに往年のレーシングカーのようなスタイルを楽しめること間違いなしのシリーズだ。
ムーンウォッチが他人とペアになることにうんざりし始めたスピーディたちの中には、このレーシングモデルを選ぶ人も少なくないだろう。
ムーンフェイズ
腕時計と月が関係しているのなら、スピードマスターに”ムーンフェイズ”という機能が搭載されるのは必然かもしれない。
ムーンフェイズは腕時計における7大複雑機構に分類される機能で、月が描かれたディスクを月相のサイクル通りに回転させることで、腕時計の小さな窓で月の満ち欠けを表示できるロマンあふれる機構である。
この機構によりクロノグラフにも改良が加えられており、スモールセコンドとデイト機能が組み合わさった特別仕様となっている。
複雑機構ゆえ一般的なスピードマスターの値段をかなり上回るが、かつてスピードマスターが降り立った月にムーンフェイズで想いを馳せるのもまた一興だと言えるだろう。
クロノスコープ
2021年に登場したばかりのスピードマスターが見せる新たな可能性、「スピードマスター クロノスコープ」。
クロノスコープといえば、古来の心理学者が用いた1000分の1秒まで計測できる時間測定装置が有名だが、たびたびクロノグラフ等の計測機能のついた時計に名付けられることがある。オメガも過去に「デ・ヴィル クロノスコープ」をリリースしていたが、満を辞してスピードマスターにその系譜を継ぐこととなった。
鈍く光を反射するダイヤルに、レトロなフォントのインデックス、優雅なリーフ針など、どちらかというとクラシカル感を醸すスタイルは、名のある学者が愛用していた計測器のような印象さえ受けさせる。
実際にこのモデルも測定機器としての側面を持ち合わせており、様々な機能が搭載された。
光、音の速度差を用いて対象物までの距離を計るテレメーター、30回の脈拍から1分あたりの心拍数を算出するパルスメーター、そしてお馴染みのタキメーター。
これらの機能によって盤面中央には放射状にそのスケールが広がっており、スピードマスターとしては異例の佇まいを見せるモデルが完成している。
カラーバリエーションはモノクロ調に赤のアクセントを加えたモデルや、「スピードマスター 1957コーアクシャル ブロードアロー」でも採用された白文字盤と青の組み合わせを中心に、豊富なカラーリングが出揃う。
中でも、シーマスター300で採用されたブロンズゴールドを使用したラグジュアリーモデルはファン垂涎の逸品だ。
実際のところ、科学の進歩した現代ではより正確な計測機器が多く存在しているし、それこそ最近のスマートウォッチは生体センサーで我々の身体のことをなんでも教えてくれる。
しかし、それをアナログで実現するロマンこそ、現代に残る機械式時計に求められる哲学の一つではないだろうか。
オメガスピードマスター クロノスコープが遂に到着しました!初めに入荷したのは、白黒モデル。
? 時計 宝飾 眼鏡 ハラダ (@kk_harada) October 21, 2021
ケースサイズは43mmと少し大きめですが、そこまで大きく感じませんでした。
スタートボタンのクリック感が非常に良い、丁寧な仕上がりのクロノグラフです!https://t.co/3S3ckrKxK9 pic.twitter.com/hq22p4QqtD
スピードマスター38mm
「スピードマスター38mm」はレディース、ユニセックスモデルが並ぶ、小さめなスピードマスターのシリーズライン。
小さめといっても、スピードマスターの洗練されたデザインが38mm径の中にしっかりと再現されており、その美意識が損なわれることは決してない。アルミとステンレスを組み合わせたシリーズ独自のベゼルを搭載し、見事に「コンパクト・スピードマスター」として成立している。
一般的なスピードマスターとの差別化は、ベゼルの他にサブダイヤルにも見ることができる。
レディースモデルを中心にそのフォルムにオーバル(横楕円形)が採用されており、本流になかった柔らかな印象を獲得。グリーン&ゴールドの独自カラーも38mmだけの魅力である。
自動巻ムーブメント採用で実用性も高く、ムーンウォッチの44mm径が似合わない方や、手首の細い日本人には隠れた人気のあるシリーズだ。
2022年新作!
満を辞して復活したスピードマスター'57
2022年3月、オメガから多くの新作モデルが発表され、オメガの過去最大防水性能を更新するウルトラディープが登場するなど、オメガファンの心を鷲掴みにするモデルが多く発売された。
そんなラインナップの中でスピードマスターファンである「スピーディ」たちの目を引いたのは、新素材ムーンシャインゴールドを用いたムーンウォッチ・・・もそうだが、7年ぶりに登場した「スピードマスター’57」ではないだろうか。
前年のCal.321に続いて、今年も初代スピードマスター「CK2915」にインスピレーションを得たモデルが発表されたのである。
この’57シリーズは今回で2度目のリリースとなっており、その初登場は2015年。
伝説の初代モデルに敬意を払いつつも新たな技術を加えた、初代スピードマスターの復刻というよりもオマージュモデルの位置付けの強いシリーズである。
初代インスパイアのブラウンルミノバを採用したそのヴィンテージテイストによって他のスピードマスターとの住み分けがなされていたが、当時の評価としては初代の復刻モデルというよりは”初代のテイストを加えたヴィンテージ風のスピードマスター”であったようだ。
そんな’57シリーズの登場から6年後の2021年、スピーディ達待望のスピードマスターが発表される。それがスピーディ垂涎の復刻モデル「スピードマスターCal.321」である。
Cal.321シリーズは、今や幻となっている初代スピードマスターに搭載されていた伝説のムーブメント「Cal.321」をあらためて作り直し、現代に蘇らせたモデル。現行スピードマスターに比べ圧倒的に高い値段ながらも、現在に至るまで圧倒的な供給不足を生み出し続けている。
そんな初代オマージュモデルの登場は、スピーディたちの初代モデルへの熱狂的な愛を強く刺激することとなったのである。
そして2022年、我々の前に7年ぶりに姿を見せたスピードマスター’57も、その初代スピードマスターへの愛に応えられるポテンシャルを秘めるモデルだと言えるだろう。
初代モデルさながらのストレートラグ、リューズガードの撤廃、ドットオーバー90に始まるタキメーターの各種仕様の変更、ブロードアロー針など、伝統を重んじるスピーディ達をも唸らせる仕上がりを見せてくれた。
それでいて革新技術の採用も忘れておらず、今やオメガのスタンダードとなったコーアクシャルムーブメント・マスタークロノメーターである、Cal.9906がしっかりと搭載されている。
加えて、特筆すべきは黒文字盤におけるサンドイッチダイヤルの実装だろう。
文字盤を二重構造にし、ルミノバをインデックス位置の”穴”からのぞかせることで奥行きを見せるサンドイッチダイヤルは、2021年に登場した復刻版シーマスター300でも採用されたオメガヴィンテージの象徴とも言える仕様だ。
’57シリーズは現行スピードマスターで唯一このサンドイッチダイヤルを採用しているモデルであり、他のスピードマスターと明らかに感じる印象が異なっている。
完全な初代モデルのオマージュであるCal.321シリーズと異なり、革新技術と独自のディテールを採用した、いかにもオメガらしいシリーズごとの区分けのこだわりを感じられるシリーズだ。
なおこの’57シリーズには黒文字盤の他に、ヴァーガンディにも似たレッドダイヤルや、サンレイパターンのグリーンとブルーのダイヤルも同時にラインナップされている。こちらはホワイトルミノバが採用されるなど、ヴィンテージテイストが抑えられたシティウォッチ寄りのカラーリングとなった。
ヘリテージ、計器
ここでは紹介しきれないので一部省略するが、スピードマスターシリーズには限定モデルや復刻モデルが中心の「ヘリテージ」に、計測機器としての側面を強調した「計器」シリーズもラインナップされている。
特にヘリテージシリーズはオリンピック開催ごとに記念モデルがリリースされており、2020東京オリンピックではあの秀逸なプロモーション映像が話題を呼んだのも記憶に新しい。
他にも、初代スピードマスターを再現したキャリバー321搭載モデルやシーマスター300といった復刻モデル、プレミア価格が今も上がり続けるスヌーピーエディションもこちらに分類される。
番外編:「カラー サイド オブ ザ ムーン」
満月の放つ神々しい白光。宇宙から月面を見たもののみが知る灰色の世界、そして、極めて稀なことを表す”once in BLUE MOON”のモチーフとなった青い月。
月にまつわる色はさまざまに存在するが、オメガはそれも月の見せる側面としてラインナップに加えているのはご存知だろうか。ダークサイド オブ ザ ムーンシリーズは月の裏側を表現する一方で、月の見せるこの多彩な色の表現も試みているのである。
オメガが公言しているシリーズではないが、ここではそれを「カラー サイド オブ ザ ムーン」と題し、まとめてご紹介しよう。
ホワイト サイド オブ ザ ムーン
これまでのスピードマスターの多くのモチーフであった宇宙から見た月ではなく、地球から見た輝かしい月を表現した穢れのないタイムピース。
ケースには酸化ジルコニウムを使用した純白のフルセラミックケースが使われており、針、インデックスには18Kホワイトゴールドが採用。ストラップもホワイトレザーが用意された。細かなディテールとして、スピードマスターのロゴとタキメーター針にはレッドの差し色が加えられ、ブランドカラーを象徴するようなカラーリングを見せている。
オメガはこの純白の一本をレディースモデルとして推奨しているが、44mmの径大ケースということもあり、メンズモデルとしても申し分のない美しさを発揮してくれるだろう。
古来より数々の伝承に残る偉大な存在である月だが、かつてここまでその神秘性を表現したタイムピースがあっただろうか。
グレー サイド オブ ザ ムーン
アポロ8号の艦長が発した”The moon essentially grey.(月は圧倒的に灰色だった)”という言葉が想起されるこのタイムピースは、人類初の月面着陸で収集された月のカケラにインスピレーションを見出したモデルだ。
本質的な月の色を表現したこのモデルは、オメガの突出した技術力の産物と言わざるを得ない。プレス加工、焼結、機械加工、プラズマ加工、レーザー刻印。鈍くグレーに輝くセラミックケースには、オメガの卓越した製造技術が息づいているのを感じられる。
また、月の表面のようなダイヤルはサンドブラスト仕上げを施したプラチナであり、セラミックケースと合わさって完璧な月に仕上がっている。
タキメーターやインデックス、針にはスーパールミノバが塗布されており、確かな視認性とともに暗所ではこの時計の持つもう一つの妖しい表情を見せてくれることだろう。
ブルー サイド オブ ザ ムーン
青い薔薇はしばしば「ありえないこと」の例えに用いられるが、実は”青い月”も古来からあり得ないもの、転じて「非常に稀なこと」の象徴として扱われてきたのはご存知だろうか。
このタイムピースもその例え通り、他では非常に得難いムーンフェイズモデルとして仕上がっている。
ムーンフェイズ搭載の腕時計は、盤面に夜空を演出するのはもはや定番となったが、ケースまで含めた全体で夜空として完結しているのはこのモデルだけの特権と言えるだろう。
その立役者と言えるのが、ブルーセラミックとシーマスターでは常連となったリキッドメタル。この2つの素材がブルー サイド オブ ザ ムーンに卓越した美意識と堅牢さを与え、ムーンフェイズを引き立たせるダークブルーの夜空を完璧に再現して見せたのだ。
なんにせよこのモデルの登場により、スピードマスターは月をリスペクトするタイムピースの最前線に立っていることは疑う余地も無くなった。
まとめ
当記事ではスピードマスターシリーズのラインナップについて詳しくご紹介した。
「スピードマスターを買うならムーンウォッチ以外ありえない」と思っている人は確かにいるはずで、その意見についてはっきりと肯定も否定もすることはできない。
しかし、当記事の紹介でスピードマスターの持つ多彩な表情やその多様性を理解し、ムーンウォッチだけではないスピードマスターの良さを少しでも知っていただけると、筆者としては喜ばしい限りである。