
腕時計の世界には、「GADA(Go Anywhere, Do Anything)」という言葉があります。文字通り「どこへでも行ける、何でもできる」という意味ですが、これは実用時計にとって最高の褒め言葉かもしれません。
正規販売店のスタッフとして数多くの腕時計に触れてきましたが、私、松下がこの“GADAウォッチ”として数年間愛用しているのが、「シーマスター アクアテラ 150M コーアクシャル マスター クロノメーター 41mm(Ref. 220.10.41.21.03.001)」です。
今回は、この一本をなぜここまで愛用しているのか、その魅力を私なりの視点で紐解いてみたいと思います。なお、本型番は現在生産終了となりましたが、普遍的なデザイン、優れた性能を持つアクアテラは、ケースサイズ違いを含めた多くのバリエーションをそろえています。本記事を参考に、ぜひ別のアクアテラも手にとっていただけると幸いです。
(以下は現行モデルです↓)
オメガ「シーマスター アクアテラ」
デザインの詳細に触れる前に、まずは「シーマスター アクアテラ」というコレクションについて簡単にご紹介させてください。
2002年に「シーマスター 120」から派生する形で誕生したアクアテラは、オメガが誇る「シーマスター」ファミリーの中でも、とりわけ都会的なモデルに位置づけられています。その名の通り、「Aqua(海)」と「Terra(陸)」という二つのシーンに対応するコレクションとして開発されました。

コンセプト通り、アクアテラは、150m防水に始まるダイバーズウォッチのスペックを背景に持ちながらも、回転ベゼルやヘリウム排気バルブを持たず、ドレスウォッチのような気品あふれるデザインを特徴としています。ラグジュアリーなヨットのデッキ上から、そのままビジネスの商談へと向かえるような、まさに“エレガントスポーツモデル”と呼べるかもしれません。

加えて、シーマスター アクアテラは技術面で、マイルストーン的な役割を果たしたコレクションとしても有名です。2013年に登場した「Ref.231.10.42.21.01.002」にコーアクシャルムーブメントCal.8508を搭載することで、15,000ガウス以上の超高耐磁性能を実現。このモデルの登場こそが、現在のオメガのスタンダードである「マスター クロノメーター」認定の礎となったのです。
派手すぎず、個性が光る絶妙なデザイン
さて、私がこのアクアテラを手に取ってまず惹かれたのは、その卓越したデザインバランスです。ダイバーズウォッチ譲りのスポーティーな軽快さを備えつつも、全体としては普遍的で端正な佇まいにまとめられているため、着用するシーンを選びません。この「攻めすぎず、引きすぎない」絶妙な塩梅こそが、本機の真骨頂と言えるでしょう。

顔とも言えるブルーダイアルには、クルーザーのウッドデッキを彷彿とさせる「チークコンセプト」の水平ラインが刻まれ、独特の立体感を演出しています。さらにサンブラッシュ仕上げが施されているため、光の当たる角度によってドラマチックに変わる表情も、好みのポイントに挙げられます。

細部に目を向けると、12時位置の「Seamaster」ロゴや、外周の分表示、秒針の先端にはベースより一段明るい鮮やかなブルーが配されています。この涼しげな“ブルー・オン・ブルー”へのさりげないこだわりは、大人の遊び心を象徴する要素ではないでしょうか。
加えて、立体的な楔形のインデックスやアロー針にはロジウム仕上げが施されており、高級感を演出するだけでなく、あらゆる条件下で優れた判読性を約束してくれます。総じて、エレガントさと実用性を高次元で両立させた、愛用に足る1本と感じていますね。
エレガントなケース仕上げと、絶妙なサイズ感
ケースの仕上がりも、アクアテラならではの魅力が詰まっています。
ベゼルを含めた全体はポリッシュ(鏡面)仕上げを基調としていますが、ケースサイドなど随所にヘアライン仕上げを取り入れることで、高級時計らしいメリハリが演出されています。特に、このポリッシュ仕上げのベゼルは、同じシーマスターファミリーの「ダイバー300M」などと比較しても、よりエレガントでドレッシーな印象を際立たせています。

そして直径41mmというサイズ感ですが、実際に着用してみると数字ほどの大きさは感じさせません。また、ラグトゥラグは47.90mm、厚さは13.20 mmで、手首の幅に収まりやすい縦の長さと、程よい厚みに抑えられています。そのため、ジャケットやシャツの袖口にもスムーズに収まり、ビジネスシーンでもストレスなく着用できます。

私は比較的細腕であるため、普段は38mm径ほどの腕時計を手にすることが多いです。しかしながら、バランスの良いプロポーションのおかげで、このアクアテラも違和感なく、毎日快適に着用できています。抜群の視認性は言わずもがな、腕元での確かな存在感には頼もしさすら感じます。
裏蓋からの眺めも格別

ちなみに、このケースを裏返すと、裏蓋のサファイアクリスタル越しにムーブメントを眺めることができます。ローターには、オメガ製ムーブメントに多く見られるアラベスク調の美しい装飾が施されており、内部機械が時を刻む様子と合わせて見ると、所有する喜びをしみじみと感じます。
毎日使うからこそ実感する、圧倒的な「信頼感」
さて、ここまでデザインを中心にレビューしてきましたが、もちろんスペックの高さも、現行のシーマスターアクアテラの大きな長所となります。マスター クロノメーターをはじめとする実用性の高さは、オメガならではの魅力のひとつと言えるでしょう。
驚くほどの精度と、磁気への強さ

心臓部には自社製の「キャリバー8900」を搭載しています。非常に厳しい検査をパスした「マスター クロノメーター」認定機なだけあって、精度は驚くほど安定しています。私の個体では、日差は1秒あるかないかというレベル。さらに、15,000ガウス以上の耐磁性能があるので、パソコンやスマートフォンに囲まれたデスクワークでも磁気帯びを気にせず使えるのが、現代のライフスタイルにおいて本当にありがたいポイントです。

強い雨も、丸洗いも大丈夫
ダイバーズウォッチ由来の優れた防水性も、本作の大きな魅力です。150m(15気圧)防水でリュウズもねじ込み式なので、突然の激しい雨でも動じる必要はありません。汚れたら水を使って大胆に手入れできる気楽さも、日常使いには欠かせない要素となりますよね。

マリンスポーツなどは実践したことこそありませんが、そういったシーンでも文句なく使用できるスペックだと思います。
実は「お財布にも優しい」維持費とコスパ
高級時計で気になるのがメンテナンス費用ですが、オメガ独自の「コーアクシャル・エスケープメント」のおかげで、本作はオーバーホールの推奨期間が一般的な時計よりも長く設定されています。通常の機械式腕時計が3〜5年とすると、本作は大体8年程度でしょうか。購入して2年ほど経ちますが、もちろん何の不具合も感じていません。

オーバーホールの頻度を抑えられるのは、結果として長期的なメンテナンスコストを抑えることにも繋がりますし、ブランドの知名度や仕上げ、性能を考えると、アクアテラは非常にコストパフォーマンスに優れた時計と言えます。「良いものを、長く、賢く使う」という楽しみを教えてくれる時計です。
ストラップひとつで、これほど印象が変わる
補足的ではありますが、私がアクアテラを「万能」と思う理由のひとつに、どんなストラップも着こなしてしまう「懐の深さ」があります。シーズンや気分に合わせて着せ替えるのが、本当に楽しい時計なんです。
・メタルブレスレット: センターリンクの鏡面仕上げが美しく、ビジネスシーンでビシッと決めたい時に。
・レザーストラップ: ネイビーのレザーを合わせると一気にクラシックになり、ジャケットスタイルを格上げしてくれます。
・ラバーストラップ: 夏場やアクティブに動きたい時はこれ。スポーティーながら品良くまとまります。
・NATOストラップ: ブルー系のベルトを合わせると、週末のリラックスしたスタイルにぴったりのこなれ感が出ます。
以上のように、一本で何通りもの表情が楽しめるので、飽きることがありません。万能なブルーダイアルゆえ、合わないストラップが少ないのも魅力です。
さらなる進化を遂げた現行モデルの選択肢
さて、私が愛用しているこのアクアテラは素晴らしいのですが、本作は残念ながら廃盤となってしまいました。そのため、これからアクアテラをご検討される方には、現行の最新モデルである「Ref. 220.10.41.21.03.004」も強くおすすめしたいです。
最新モデルでは、細かい箇所がさらにブラッシュアップされたほか、ロゴのカラーリングもホワイトに改められ、より洗練された印象が際立っています。もちろん、マスター クロノメーターをはじめとする実用性の高さはそのままであるため、ぜひ、店頭で手に取って体感していただきたい1本に仕上がっています。
総評
オメガ シーマスター アクアテラは、華美すぎず、それでいて地味でもない。機能性と汎用性が高いレベルでまとまった、まさに私にとってのGADAウォッチのひとつだと確信しています。
オメガの最初の一本として選ぶ上でも、本作のような隙のない腕時計は最適ではないでしょうか。もし迷っている方がいたら、正規販売店のスタッフとして、そして一人の時計愛好家として、自信を持って「間違いありません!」と背中を押したい、最高の相棒です。
この記事の監修




