
ジン(Sinn)の腕時計は、無骨なデザインだけでなく、実用性を徹底的に追求した独自技術「ジン・テクノロジー」でも高い評価を受けています。
その代表的なものが、以下の3つの技術です。
- テギメント
- Arドライテクノロジー
- マグネティック・フィールド・プロテクション
これらのテクノロジーは、外装の耐久性、内部環境の安定性、そして精度に影響する磁気対策と、それぞれが異なる角度から時計の弱点を補い、普段使いにおける信頼性を高めています。
この記事では、これら3大技術の仕組みや特徴、採用されている時計を詳しくご紹介します。ぜひ最後までご一読ください。
この記事でわかること
– テギメント・Arドライ・耐磁、各技術の仕組みと効果
– 搭載モデル一覧と価格
– 各技術のメンテナンス方法と注意点
– 正規販売店で購入すべき理由(技術メンテナンス視点)
※本記事で登場する商品価格は、2026年3月時点のものです。最新価格は各商品ページをご確認ください。
テギメント|1,200ビッカースを誇る表面硬化技術

テギメントは、ラテン語で「覆い」「保護」を意味する“Tegimentum”に由来する、ジン独自の表面硬化技術です。2002年頃から本格的に採用され、現在ではブランドを象徴する技術のひとつとして知られています。
特筆すべきは、コーティングのように表面へ層を重ねるのではなく、素材自体の性質を変化させて硬度を高める点にあります。ステンレスやチタンの表層に窒素・炭素を浸透させることで、外装全体の耐久性を向上させている仕組みです。
この技術では、炭化層に加えて、窒素による強固な窒化層が得られるため、非常に高い耐傷性を実現します。
一方で、素材全体を硬化させるわけではないので、金属本来の粘り強さを損なわない点も特徴。外側は硬く、内側はしなやかというバランスが、衝撃にも配慮された構造となっています。
硬度の比較|1,200ビッカースの実力

ビッカース硬度(HV)とは、ダイヤモンド圧子を素材に押し込み、そのくぼみの大きさから硬さを数値化した指標です。数値が高いほど傷が付きにくいことを意味します。
| 素材 | ビッカース硬度(HV) | 比較 |
| 純金(18K) | 約130 | 約1/9 |
| ステンレス(316L) | 約200 | 約1/6 |
| チタン | 約300 | 約1/4 |
| テギメント | 約1,200 | 基準 |
| サファイアクリスタル | 約2,200 | 約1.8倍 |
テギメント加工による表面硬度は約1,200HVとなり、日常で傷の原因となる物質(500〜800HV)を上回る硬度を有しています。
また高い硬度により、研磨が必要となるような深い傷自体が付きにくい点も特徴です。日常使用の中で外装の美しさを長く保ちやすい理由といえるでしょう。
加えて、このテギメントはポリッシュやサテンといった腕時計の表面仕上げを問わずに施せる技術であり、応用性にも優れています。また、テギメントを基本に、PVD加工を用いてDLC(ダイヤモンドライクカーボン)を施したブラックハード仕様も登場しています。
ハラダスタッフのコメント
通常のDLC加工は鋼材の表面に黒い炭素膜を作成しますが、この膜と内部の鋼材との硬度の大きなギャップから、衝撃などが加わった際にDLCの膜が剥がれてしまうことがあります(エッグシェル現象)。しかし、ブラックハード仕様では、硬度の高いテギメントが下層にあるため、このエッグシェル現象によるDLC膜の剥がれが、極めて起こりにくいというメリットがあるのです。
チタンへのテギメント|世界で唯一、ジンが到達した領域
ジンはステンレススチールに加え、チタン素材にも独自の表面硬化技術「テギメント」を適用しています。チタンへの窒化浸炭処理は非常に高度な技術を要し、ジンはこれを実現できる数少ない存在となっています。
チタンはステンレスと比べて約40%軽量である一方、硬度は約300ビッカースと高いとはいえず、傷が付きやすい素材とされてきました。しかしテギメントを施すことで、軽さという利点を保ちながら、約1,200ビッカースという高い表面硬度を実現しています。
テギメント搭載モデル一覧

当店で取り扱っているテギメント搭載モデルの一部をご紹介します。
| モデル | カテゴリ | テギメント範囲 | その他搭載技術 | 税込価格(目安) |
| 856 | パイロット(40mm) | ケース全体 | Arドライ+耐磁 80,000A/m | ¥572,000〜 |
| 856.B | パイロット(40mm) | ケース全体 | Arドライ+耐磁 80,000A/m | ¥643,500〜 |
| 857 | パイロット(43mm) | ケース全体 | Arドライ+耐磁 80,000A/m | ¥693,000〜 |
| 857.B | パイロット(43mm) | ケース全体 | Arドライ+耐磁 80,000A/m | ¥731,500〜 |
| U50 | ダイバーズ(41mm) | ベゼルのみ | Uボート・スチール+特殊結合方式ベゼル | ¥638,000〜 |
| U1 | ダイバーズ(44mm) | ベゼルのみ | Uボート・スチール+特殊結合方式ベゼル | ¥649,000〜 |
| T50 | チタン(41mm) | ベゼルのみ | Arドライ+純チタン | ¥884,400〜 |
パイロットウォッチに分類される856や857シリーズは、ケース全体にテギメントが施されており、普段使いの外装ダメージを抑えやすい点が特徴です。加えてArドライテクノロジーや高い耐磁性能も備えているため、ビジネスからアクティブなシーンまで幅広く対応します。
またU50やU1といったダイバーズモデルでは、ベゼル部分にテギメントを採用しつつ、Uボート・スチールによる高い耐食性と強度を確保。過酷な環境での使用を想定した設計といえるでしょう。
さらにT50はチタンケースを採用し、軽量性と耐久性を両立したモデルです。装着感の軽さと実用性を重視したい方にとって、有力な選択肢となります。
Arドライテクノロジー|防曇・除湿技術

Arドライテクノロジーは、ジンが独自に開発したケース内部の除湿・防曇機構です。
機械式時計のムーブメントには各パーツの動きを円滑にするため潤滑オイルが用いられていますが、内部に残る湿気はオイルの劣化を招き、精度低下の原因となります。
そこでジンは、
- ドライカプセル
- EDRパッキン
- プロテクトガス
という3つの技術を組み合わせ、ケース内部を極めて乾燥した状態に保つ構造を採用。オイルの劣化を抑えつつ、温度変化による内部の曇りも防止しているのです。
内部環境そのものをコントロールすることで、長期間にわたり安定した精度と高い信頼性を維持できる点が、この技術の大きな特徴といえるでしょう。
ハラダスタッフのコメント
Arドライテクノロジーの効果は、冬場の屋外と室内の行き来で特に実感できます。
スタッフが856.Bを着用して冬場にランニングを行った際、冷たい外気や暖房の効いた室内でも風防は曇らず、常にクリアな視認性を維持していました。この「曇らないのが当たり前」という感覚こそ、実用性の高さを物語っているといえるでしょう。
Arドライテクノロジーの3つの要素
Arドライテクノロジーを構成する3つの技術について、詳しくご紹介します。
ドライカプセル|湿気を吸収する中核機構

ドライカプセルは、この技術の中心となるパーツです。内部には特殊乾燥剤が充填されており、ケース内に存在する水蒸気を吸収します。
吸湿量に応じて色がライトブルーからネイビーへと変化するため、状態を視覚的に確認できる点も特徴です。内部の湿度管理を担う、いわば除湿装置となっています。
プロテクトガス|内部環境を安定させる役割
ケース内部には、安定性の高い希ガスが封入されています。これにより、空気中の不安定なガスや静電気の影響を抑え、潤滑オイルの劣化要因となる放電腐食を防止可能です。
封入後は新たな湿気の流入を最小限に抑えつつ、侵入した水分のみをドライカプセルが吸収する仕組みです。
EDRパッキン|水分の侵入を抑制

EDRパッキンは、外部からの水分侵入を抑えるための専用ガスケット(パッキン)です。従来素材と比べて水分透過を大幅に低減し、ケース内部への湿気の侵入を抑制します。
外部からの流入を防ぐことで、内部の乾燥環境を長く維持する役割を担っています。
メンテナンス|乾燥カプセル交換の必要性

Arドライテクノロジーの性能を長く維持するためには、乾燥カプセルの定期交換が欠かせません。
- 推奨交換サイクル:4〜5年に1度
- 交換タイミング:オーバーホールと同時が理想的
- 作業内容:カプセル交換/プロテクトガス再充填/気密テスト
乾燥カプセルには吸湿量の限界があり、交換時期を過ぎると、温度変化で風防がわずかに曇る場合があります。ただしこれは故障ではなく、消耗品の交換時期を示すサインです。
カプセルを交換することで、本来の性能は回復します。
Arドライ搭載モデル一覧

当店で取り扱っているArドライテクノロジー搭載モデルの一部をご紹介します。
| モデル名 | カテゴリ | その他の技術 | 税込価格 |
| EZM3 | ミッションタイマー(41mm) | テギメント+耐磁 80,000A/m | ¥550,000〜 |
| 856.B | パイロットウォッチ(40mm) | テギメント加工+耐磁 80,000A/m | ¥643,500〜 |
| U50.S | ダイバーズ(41mm) | ブラック・テギメント+Uボート・スチール+特殊結合方式の逆回転防止ベゼル | ¥754,600〜 |
| U1.S.E | ダイバーズ(44mm) | ブラック・テギメント+ サブマリンスチール+特殊結合方式の逆回転防止ベゼル | ¥776,600〜 |
Arドライテクノロジーを搭載したモデルは、いずれも温度変化や湿気の影響を受けにくい点が特徴です。環境変化の大きいシーンでも、安定した視認性と精度を保てるでしょう。
特にEZM3や856.Bといったモデルは、テギメントや高い耐磁性能も組み合わさり、外装・内部・精度のすべてをバランスよくカバーしています。またU50.SやU1.S.Eは、ダイバーズウォッチとしての堅牢性を重視し、過酷な環境でも活躍します。
マグネティック・フィールド・プロテクション|80,000A/mの優れた耐磁性能

機械式時計において、精度を左右するヒゲゼンマイは非常に繊細なパーツです。この部品が磁気を帯びると動きが乱れ、進みや遅れといった精度不良の原因となります。
現代ではスマートフォンやパソコン、イヤホンなど、日常的に磁気を発する機器に囲まれており、知らないうちに影響を受ける環境といえるでしょう。
一般的な耐磁基準は約4,800A/mですが、現在の生活環境ではやや心許ない数値とも考えられます。
こうした背景のもと、ジンは軟磁性素材を用いた構造を採用し、ムーブメントを包み込むことで外部からの磁力を遮断。文字盤や裏蓋にも同素材を用いることで保護性能を高め、約80,000A/mという高い耐磁性を実現しました。
従来の耐磁構造からのスリム化を両立
腕時計における耐磁構造は、磁力の影響を受けやすいムーブメントを軟磁性のインナーケースで包み、ケースの中に内蔵する方法が一般的となっています。しかしこの構造は、耐磁性と引き換えに腕時計自体が大きくなってしまうというデメリットがあります。
その点、このマグネティック・フィールド・プロテクションでは、腕時計を薄型にできる点も大きなメリットになります。軟磁性素材のリングを採用し、同素材を文字盤、裏蓋に採用することで、一般的な耐磁インナーケースと同様の働きを実現。耐磁性だけでなく、従来からの薄型化も実現しているのです。
80,000A/m耐磁搭載モデル一覧

当店で取り扱っているマグネティック・フィールド・プロテクションモデルの一部をご紹介します。
| モデル | カテゴリ | その他の搭載技術 | 税込価格 |
| EZM3 | ミッションタイマー(41mm) | テギメント+Arドライ | ¥550,000〜 |
| 856 | パイロットウォッチ(40mm) | テギメント+Arドライ | ¥572,000〜 |
| 856.B | パイロットウォッチ(40mm) | テギメント+Arドライ | ¥643,500〜 |
| 857 | パイロットウォッチ(43mm) | テギメント+Arドライ | ¥693,000〜 |
| 857.B | パイロットウォッチ(43mm) | テギメント+Arドライ | ¥731,500〜 |
80,000A/mの耐磁性能を備えたこれらのモデルは、現代のデジタル環境においても安心して使用可能です。スマートフォンやパソコンなど、日常的に磁気を発する機器に囲まれていても、精度への影響を抑えやすい設計となっています。
中でもEZM3は実用性を重視したミッションタイマーとして、過酷な環境下でも安定した性能を発揮します。856や857シリーズはパイロットウォッチとしての視認性を備え、普段使いからビジネスシーンまで幅広く活躍するでしょう。
いずれもテギメントやArドライテクノロジーと組み合わさることで、耐傷性や防曇性能も高められており、総合的な信頼性に優れています。
技術を長く活かすために|正規販売店という選択
ジンの3大独自技術は、適切なメンテナンスによってこそ本来の性能を維持できます。長く安心して使うためには、購入先まで含めて考えることが重要です。
専門技術を維持するための正規販売店

テギメントは通常の研磨が行えない特殊な表面硬化技術であり、不適切な処理を行うと硬化層が損なわれる可能性があります。またArドライテクノロジーも、定期的な乾燥カプセル交換やプロテクトガス再充填、気密テストといった専用設備を必要とするメンテナンスが前提です。
これらは正規サービスルートでのみ適切に対応できるため、技術を長く維持するうえで重要なポイントとなります。
さらに、正規販売店ではテギメント仕様の選び方や、Arドライ搭載モデルの必要性、耐磁性能の適性など、使用環境に応じた具体的なアドバイスも受けられます。
購入後も、メンテナンス時期の案内を含めた継続的なサポートが受けられる点は見逃せません。
費用の明確さと長期的な安心感

| モデル | 機能 | 標準価格(税込) | 正規品価格(税込) |
| 機械式 | 3針 | ¥83,600 | ¥41,800 |
| 機械式 | GMT・レギュレーター | ¥94,600 | ¥47,300 |
| 機械式 | クロノグラフ | ¥132,000 | ¥66,000 |
| クォーツ | 3針 | ¥79,200 | ¥39,600 |
| クォーツ | クロノグラフ | ¥116,600 | ¥58,300 |
ジンの修理・メンテナンス料金は正規販売店で統一されており、あらかじめ費用の目安を把握できる点が特徴です。正規品はメンテナンス費用が抑えられる傾向にあり、長く使うほど差を実感しやすくなります。
一方で並行輸入品の場合、乾燥カプセルの入手や交換、プロテクトガスの再充填は難しいでしょう。
ジンの3大技術は、正しいメンテナンス環境があってこそ活きるもの。その性能を安心して使い続けるためにも、正規販売店での購入は有力な選択肢といえるのではないでしょうか。
ジンの3大独自技術で実用時計の真価を体感しよう

ジンの3大独自技術は、あらゆる環境下で起こりうるトラブルを未然に防ぎ、機械式時計の信頼性を高めています。
- テギメントによる高い耐傷性
- Arドライテクノロジーによる内部環境の安定化
- マグネティック・フィールド・プロテクションによる優れた耐磁性能
――それぞれが時計の課題に対して、実用的な解決策をもたらしています。
これらの技術は、単なるスペックの数値にとどまらず、使い続けることでその違いを実感しやすい点も特徴です。外装の美しさが保たれる安心感や、曇りや磁気を気にせず使える快適さは、日々の中で確かな価値として感じられるでしょう。
ぜひ、その実力を腕元で体感してみてください。
※本記事で登場する商品価格は、2026年3月時点のものです。最新価格は各商品ページをご確認ください。
この記事の監修

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時計は単なる時間を知るためのツールではなく、個性やスタイルを表現する大切なアイテムであるという信念のもと、ハラダではお客様一人ひとりのライフスタイルに合った時計を提案し、長く愛用できる商品選びをサポートしています。
当ブログでは、最新の製品レビュー、メンテナンスのコツ、時計に関するトリビアなど、腕時計に関する多岐にわたる情報を提供しています。
腕時計に関する質問や相談がある場合には、いつでも気軽にお問い合わせくださいませ。
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