文字板で魅せる宇宙。
カンパノラの「漆文字板」
デザインコンセプトを「宙空の美」とし、宇宙や星空を数々の腕時計の中に表現してきたカンパノラ。
カンパノラのこのコンセプトの表現には漆が施された文字板が不可欠です。
今回はカンパネラの顔とも言える美しい漆文字板についてご紹介します。美しい時計に目がない方はぜひご一読ください。
カンパノラとは
その圧倒的な技術力で世界に名を馳せたシチズンの最高級モデル、それが「カンパノラ」です。コンセプトは「時を愉しむ、日常を愉しむ、個性を愉しむ」。
シチズンのコンセプトである「時計本来の機能」の追求ではなく、「愉しむ」ためにデザイン・機能を追求するブランドになっています。
工芸品のような美しさを持ちながら、パーペチュアルカレンダーをはじめとする数々の複雑機構を搭載した、シチズンの一大ブランドが「カンパノラ」です。
漆塗り
カンパノラの文字板の漆塗りは、会津の伝統工芸士、儀同哲夫氏を始めとする職人たちの手により施されています。
漆は何層にも塗ったものを細やかに研ぐことにより美しい表情を見せ、色合いや装飾を使い分けることによって様々な表現が可能です。
この美しい漆塗りにはシチズンの高い技術も生かされており、高精度の電気鋳造により0.001ミリより小さい模様を実現。その模様により生まれる立体感と漆塗りの緻密さは宙空の美の表現に一役買っています。
螺鈿
カンパノラの漆文字板で特筆すべきはその美しい装飾です。
この装飾方法は螺鈿(らでん)と呼ばれ、貝殻の内側の虹色光沢を持つ真珠層の部分を切り出し、漆にはめ込む装飾技法です。
螺鈿によって文字板に散りばめられた貝殻はあたかも宇宙に輝く星々のように見え、カンパノラの求める宇宙を美しく表現します。
今回は、その美しい螺鈿がいかにして加工されているか、カンパノラの漆文字板モデル「琉雅」の製作工程を例に挙げて紹介します。
まず、約1ヶ月かけて下地を塗ります。その後全体塗りと研磨を5~6回ほど繰り返し、塗の部分が0.12mm位の厚さになるまで塗り込んでいきます。
次に盤面を磨き、螺鈿を行います。
貝片は文字盤上の限られた空間に適合するものを数百片の中から形・色をもとに職人が選び抜き、貼り付けていきます。
貝貼が終了したら表面を全部覆いかぶせるように、一度黒漆を塗りこみます。黒漆を縫い込んで十分に固まった後、駿河炭を使って埋まっていた貝を研ぎだすことにより、漆と貝の段差のない美しい均一な面が得られます。
その後、生漆の塗布、拭き上げ、艶出しの1セットを繰り返し行うことで、漆特有の深みのある艶が現れます。この手法を「呂色仕上げ(呂色塗り)」と呼びます。
上記の工程で約3ヶ月間必要な文字板もあり、カンパノラの漆文字板に対するこだわりが窺えます。
モデル紹介
カンパノラからは漆文字板モデルが多く発表されています。
今回は、特に漆文字板の螺鈿が美しいメカニカルモデルをいくつか紹介します。
・暈響(かさねきょう)
暈響はなんといってもその万華鏡のような螺鈿細工が特徴的です。
外周部にまで散りばめられた切り貝の模様は他に一つとして同じ表情のものがないため、世界にたった一つだけの時計を手に入れることができます。匠の技が惜しみなく注ぎ込まれた20周年にふさわしいモデルだと言えるでしょう。
・紅明(べにあけ)
夜が終わった後の、明け方近くの空の暁色を表現したモデルです。
漆が5層に渡って重ね塗りされており、その層と層との間に銀粉を蒔くことにより、暁のような深い紅を表現。
また、中央部に向かって明るくなるようコントラストが意識されており、明け方が近い空の表現を手助けしています。
・千夜燈(ちよのとぼし)
カンパノラのモデルは空に浮かぶ星々を表現したものが多いですが、この千夜燈は宇宙からみた地球の人々の営みや都市の夜景を文字板に表現しています。
漆黒の塗りを背景に金箔と金粉で光の景色を表現、アクセントに螺鈿を加えた彩りあふれる文字板は、1枚1枚手作業で約3ヶ月程かかって作り上げられています。