メカニカルかつ洗練された見た目が印象的で、機械式腕時計の中で一大ジャンルを築いている「パイロットウォッチ」。その名の通りパイロット向けに開発された背景を持ち、視認性や操作性に優れています。今ではパイロットのみならず腕時計愛好家からの人気も高く、パイロットウォッチのみをコレクションしている方もいるほどです。
中には、ダイバーウォッチやスポーツウォッチ、ドレスウォッチなどを所有していて、いずれはパイロットウォッチを購入したいと考えている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
そこで本記事では、パイロットウォッチの概要や搭載されている代表的な機能、魅力、実用性などを解説します。併せておすすめのパイロットウォッチを3つご紹介するので、腕時計選びの参考にしてください。
パイロットウォッチとは?
パイロットウォッチとは、その名の通りパイロット向けに開発された背景を持つ腕時計です。フライトを安全に完遂できるよう、高い視認性や耐磁性などを兼ね備えています。
ダイバーウォッチはJIS規格(Japanese Industrial Standards:日本国内の産業製品に関する規格)やISO(International Organization for Standardization:国際標準化機構)の定めた基準を満たす必要があります。その一方で、パイロットウォッチにはそのような規格はなく、実は明確な定義はありません。つまり、腕時計ブランドが「これはパイロットウォッチである」と定めれば、パイロットウォッチに一般的に見られるクロノグラフでなくても、パイロットウォッチに分類されます。ただし、耐久性や視認性が優れていないと、カテゴリー化は難しい印象です。
しかしながら明確な分類がない分、アナログ式からデジタル式まで幅広いタイプのパイロットウォッチが誕生しており、独自の進化を遂げてきたユニークなジャンルと言えるでしょう。
パイロットウォッチの歴史と進化
1903年にライト兄弟が人類初の有人飛行を成功させてから、人類は空という新たなフィールドに進出しました。
そして1906年、アルベルト・サントス・デュモンの「飛行中も時刻を確認したい」という要望によって誕生したのが「サントス」です。このサントスは世界初の男性用腕時計として誕生しましたが、パイロットウォッチの歴史も、まさにこのときに始まったといえるでしょう。
1928年にはスイスの腕時計ブランドであるロンジンが、フィリップ・ヴァン・ホーン・ウィームス米軍大佐と共同で、秒単位の計測を可能とするウィームス セコンドセッティング ウォッチを発表。加えて1931年には、大西洋単独無着陸飛行を達成したチャールズ・リンドバーグのアイデアを基に、現在の経度を把握できるアワーアングルウォッチを開発しました。
二度の世界大戦や航空旅行の大衆化により、飛行機が「より速く、より多くの人を運ぶ」という移動手段になった背景と共に、パイロットウォッチもさらに発展します。1948年には視認性を高める効果のあるデザインのマーク11がIWCから、1952年には航空計算尺が付いたナビタイマーがブライトリングから発売されました。
こうした背景を踏まえると、航空史の発展と共にパイロットウォッチの機能も強化されてきたことが読み取れるでしょう。
パイロットウォッチに搭載される代表的な機能
現行のパイロットウォッチには以下のような特徴があります。
・暗闇でも見えるよう夜光塗料が施されたインデックス
・気圧変動に耐えられるような気密性の高いケース
・無反射コーティング加工が施された風防ガラス
・激しいフライトに耐え得る耐衝撃性・耐振動性・耐G性能
これらの機能は、いずれも空の旅を快適に過ごすためには欠かせません。
なお、パイロットウォッチには明確な定義がないと先述しましたが、ドイツにはパイロットウォッチに関する規格が存在します。ドイツの腕時計メーカーsinn(ジン)が定めた「DIN8330」では、パイロットウォッチは以下を満たすものだと定められています。
・高い航空スペック
・防水性・耐衝撃性・高い精度
・他の機器との互換性
・高い安全性
パイロットウォッチの魅力
パイロットウォッチには、以下にあげる3つの魅力があります。
・どんなシーンでも時刻が確認できる視認性の高さ
・多彩な機能性と耐久性
・操作性の高さ
それぞれ詳しく見ていきましょう。
どんなシーンでも時刻が確認できる視認性の高さ
フライトは昼間だけでなく、夜間に行われるケースもあります。そのためパイロットウォッチには、さまざまなシーンで時刻が確認できるような、高い視認性が必要です。
パイロットウォッチのインデックスや文字盤、時針・分針には蛍光塗料が塗布されており、暗闇でも見える仕様になっています。
また、太陽の光が反射しにくいよう反射防止加工も施されているので、強い日差しが指しこんでも時刻を正確に把握することが可能です。
多彩な機能性と耐久性
パイロットウォッチには多彩な機能も搭載されています。その理由は、万が一飛行中に機内に搭載されているレーダーが使用できなくなった際でも、安全なフライトに必要な情報を得るためです。モデルによっては、経過時間を測定できる回転ベゼル、単位換算に役立つ計算回転尺に加えて、マップ機能なども搭載されています。
また、フライト中の揺れや温度・気圧の変化、重力に耐えるタフさも兼ね備えています。元々フライトに携帯されることが想定されているので、日常使いの範囲内では壊れる心配は少ないでしょう。
操作性の高さ
パイロットウォッチは、操縦に支障をきたさないよう、パイロット・グローブをつけたままでも回転ベゼルやリューズを回せるほどの操作性の高さも持っています。
また、ボタンやリューズが大型かつ角型で押しやすいように工夫されているモデルもあり、安全にフライトするための配慮がなされています。
パイロットウォッチの実用性は?
パイロット用に開発された背景を持つパイロットウォッチですが、日常使いでも実用性が高いです。
暗闇の中や強い光の下でも正確に時刻を確認できる視認性の高さ、強い衝撃に耐え得る堅牢さ、応用の幅が広い多彩な機能などは、実生活でも十分役立つでしょう。
ナビタイマー・航空用回転計算尺の使い方
ナビタイマー・航空用回転計算尺は、数字が印字されたベゼルを回して内側と外側の数字を組み合わせることで、掛け算や割り算などの計算が可能です。2つの比が等しいとき、外積と内積の和は等しくなるという原理が使われています。
また、航空用回転計算尺は単位換算も可能です。変換される単位と外側の10の目盛りを合わせた後に、変換したい単位の数字を読み取ることができます。
販売員が厳選したパイロットウォッチ3選
ここでは、販売員が厳選したおすすめのパイロットウォッチを3つご紹介します。
・【ロンジン】スピリットフライバック
・【Garmin】マーク アビエーター
・【Sinn】ジン インストゥルメントクロノグラフ
それぞれのパイロットウォッチの概要や特徴、魅力を解説するので、時計選びの参考にしてください。
ロンジン独自のフライバック機能を搭載「スピリットフライバック」
1832年に創業したロンジン(Longines)は、乗馬スポーツやアルペンスキー、F1など数多くのスポーツの計時に貢献してきた腕時計ブランドです。飛行機に搭載される機材や航空用計器の製造も手掛けており、航空業界にも大きく貢献しています。
そんなロンジンのパイロットウォッチ「スピリットフライバック」は、クロノグラフ機能の中の一つであるフライバック機能を搭載しています。フライバック機能(Fly Back)とは、200年近くの歴史を誇るロンジンの高い技術力と歴史が育んだ画期的な機能。一般的なクロノグラフの場合、スタート→ストップ→リセット→リスタートの流れでボタンを3回押さなければなりません。しかし、フライバック機能搭載のモデルなら、タイマー使用中でも、ワンタッチで計測の中断・リスタートができます。
ロンジンが世界に先駆けてフライバック搭載のモデルをリリースしてから、今日では多くのクロノグラフで見られるようになりました。
さらに、同モデルに搭載されているムーブメントは、シリコン製ヒゲゼンマイを採用しており、耐磁性・耐水性・持久力に優れている点が特徴です。C.O.S.C.のクロノメーター認証も取得しており、その信頼性も魅力となるでしょう。
また、「ロンジンスピリット」シリーズで初のシースルーケースバックが採用されており、地球儀と「ロンジン フライバック」の文字が刻印されたガラス部分から、メカニカルな内部構造を確認できます。
ブラックもしくはブルーのサンレイ仕上げが施された文字盤と、スーパールミノバ®加工が施された針・インデックスは、高い視認性をもたらすと同時に美しい輝きを放っています。サテン、マット、ポリッシュ、エングレービングなどの表面加工が細部にまで適用されており、ディテールまで強いこだわりが垣間見えるでしょう。
「スピリットフライバック」の価格や機能などの詳細が気になる方は、以下のページを参考にしてください。
航空機能を備えたスマートウォッチ「Garmin マーク アビエーター」
Garminは、航空や海洋、自動車、アウトドア、フィットネスなど幅広い産業で役立つスマートウォッチを提供する企業です。創業は1989年と比較的歴史は浅いですが、今日では各業界におけるトップブランドとして知られています。
「Garmin マーク アビエーター」は、Garminのスマートウォッチの中でも、航空機を操縦するときに装着する前提で作られた多機能フライトウォッチです。 数あるパイロットウォッチの中でも搭載されている機能はトップクラス。世界各国の航空データベースや緊急時直近空港ダイレクトナビゲーション、フライトログ記録、水平姿勢表示計、直接誘導ナビゲーションなどが搭載されている他、NEXRAD気象レーダーとガーミン航空電子機器(Garmin Pilot™)が統合されています。パイロットにとって役立つのはもちろん、身につけるだけでまるでコックピットにいるかのような雰囲気を味わえるとして航空ファンにも人気です。
フライトだけでなく、日常生活にも活用できる点も同モデルの利点にあげられます。天気予報やスマート決済など普段何気なく使う機能に加えて、スキー場マップやゴルフの距離計などスポーツシーンで役立つ機能も豊富です。鏡面仕上げの24時間GMTベゼルと2箇所のタイムゾーンの合計3つのタイムゾーンを確認できるので、世界各国で活躍するビジネスパーソンにもマッチします。
豊富な機能もさることながら、無駄のない流線型のフォルムにより、どのようなシーンでも腕にぴったりとフィットする感覚を味わえます。
「マーク アビエーター」の詳細情報は以下のページにまとめているので、興味のある方はぜひ参考にしてください。
ドイツ空軍に正式採用されたモデルを継承「ジン インストゥルメントクロノグラフ 」
ジン(正式名称:ジン スペツィアルウーレン)は、視認性や機能性など時計の本来の役割を最重要視したパイロットウォッチやダイバーウォッチを手掛ける、ドイツ発の腕時計ブランドです。ダイバーやパイロットのみならず、GSG9(ドイツ連邦警察局特殊部隊)など各業界のエキスパートからの信頼が厚く、極限の状況下でも類まれなる精密さを誇ります。
ジンの数あるモデルの中でも「インストゥルメントクロノグラフ」は、ジンの創業初期から続く103シリーズの一つで、高い視認性と正確性を兼ね備えた実用性抜群のクロノグラフです。60年代にドイツ空軍に正式採用された、モデル155を継承しています。
ステンレススチール製のケース、ねじ込み式のリューズと裏蓋など103シリーズのミニマムの構造を持ちつつ、サファイヤガラスの風防とねじ込み式のプッシュボタンが搭載されており、エレガントなクロノグラフに仕上がっています。
なお、2018年以降に生産されたモデルには、時計内部を湿気から守るジン独自のテクノロジー「 Arドライテクノロジー」が実装されているため、長期的に使用することが可能です。
「インストゥルメントクロノグラフ」の概要を知りたい方は、以下のページをご確認ください。
機能性が高いパイロットウォッチを選択肢に
本記事では、パイロットウォッチの概要や搭載されている代表的な機能などをご紹介しました。
せっかくパイロットウォッチを購入するなら、有名ブランドがリリースした機能性とデザイン性の優れたモデルがおすすめです。本記事で紹介した「ロンジン スピリットフライバック」「Garmin マーク アビエーター」「ジン インストゥルメントクロノグラフ」はいずれも自信をもっておすすめできるモデルです。
今回紹介したパイロットウォッチに限らず、腕時計をお探しの方は、ぜひ高級時計正規販売店HARADAをご利用ください。
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この記事の監修
- 時計は単なる時間を知るためのツールではなく、個性やスタイルを表現する大切なアイテムであるという信念のもと、ハラダではお客様一人ひとりのライフスタイルに合った時計を提案し、長く愛用できる商品選びをサポートしています。
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