高級時計の保管方法は、時計の品質や寿命に少なからず影響を及ぼします。適切な方法で保管された時計は長持ちしますが、間違った方法で保管された時計は、劣化が早まる可能性が高くなります。
この記事では、高級時計の適切な保管方法や場所、注意点をまとめました。大切な高級腕時計を少しでも長く良い状態で使い続けたいと思う方は、ぜひ参考にしてみてください。
高級時計は保管の場所や方法に配慮を
高級時計を保管する際は、「保管場所」や「保管の仕方」に注意する必要があります。時計はデリケートな精密機器であるため、保管する環境によって劣化を早めたり、故障を招いたりしてしまう場合があるためです。
特に機械式時計は繊細な造りとなっているため、保管の仕方を間違えてしまうと故障しやすくなります。しかし、機械式時計は正しく保管やメンテナンスをして丁寧に扱えば、数十年と長く使うことができるでしょう。
腕時計の寿命は一般的に、クオーツやソーラーの時計なら10年持つところ、機械式の時計は50年持つとされています。ただし、同じクォーツ式や機械式でもメーカーやモデルによって寿命は異なり、中にはメンテナンスさえ欠かさなければ、100年動き続ける腕時計もあります。
適切な保管を心がけることで、腕時計を子、孫にも受け継いでいきたいものです。
高級時計の保管に適した場所とは?
高級時計の保管に適しているのは、以下の三つの条件を満たした場所です。
・湿度と温度が安定している
・直射日光や磁気を浴びない
・振動や衝撃が加わる心配がない
上記の条件を満たしている場所がなぜ保管場所として適切なのか、以下で理由を解説します。高級腕時計を所持している、あるいはこれから高級腕時計を買おうと思っている方は、覚えておくと良いでしょう。
湿度と温度が安定している
第一に、温度差の激しい場所は時計の天敵です。温度差があまりに激しい場所だと、時計内部の金属が膨張・縮小して故障につながる可能性があります。膨張・縮小を避けるためには、温度差の少ない場所に保管するのが適切です。
高級な機械式時計(特にコンプリケーション)ではパーツが多いモデルもあるため、一般的な時計よりも慎重に温度を管理する必要があります。時計にとって適切な温度は5〜35度とされており、これより低い・高い気温にならないことが重要です。
また、湿度が高すぎると時計の文字盤が腐食することがある点にも、注意しましょう。ただし乾燥しすぎても潤滑油が乾いてしまう可能性があるため、乾燥剤を置いているクローゼットに保管するのも避ける必要があります。
直射日光や磁気を浴びない
直射日光や磁気の影響を受けやすい場所は、高級時計の保管場所に適していません。紫外線を浴びてしまうと、文字盤が日焼けしたり、革のストラップが変色したりしてしまう可能性があります。いずれも高級時計の見た目を損なう要因です。
また、磁気は見た目にこそ影響しませんが、時計の精度に影響を与える場合があります。電子レンジや冷蔵庫、スマートフォンなど磁気を発しやすい機器からは離して保管しましょう。
オメガのマスタークロノメーターやグランドセイコーの強化耐磁モデルなど、磁気の影響を軽減する耐磁性能の高い高級時計もありますが、磁気はなるべく避けるのがベストです。
一方で、シチズンのエコ・ドライブモデルなど、ソーラークォーツモデルは半年に一度ほど直射日光での充電が推奨されています。こちらは正常な駆動のために、適度に日を当てるようにすべきです。
振動や衝撃が加わる心配がない
振動や衝撃も時計の大敵です。機械式・クオーツなど駆動方式に関わらず、時計はデリケートな精密機器であり、衝撃に強くありません。特に高級時計に多い機械式時計は、衝撃が加わると故障してしまう可能性が高いことを覚えておきましょう。
近年は耐衝撃性が高い機械式時計も登場しており、振動・衝撃からの保護力は高まっているとはいえ、高級腕時計は落としたり揺れたりする可能性が低い場所に保管するようにしましょう。また、アクティブなシーンで着用する腕時計を探す場合、なるべく耐久性に優れたモデルを選ぶのがベストでしょう。
高級時計の保管に活用したいアイテム
高級時計は、置く場所の環境に注意を払った上で適切なアイテムを使って保管するのがおすすめです。そこで、時計の保管に活躍するアイテムを紹介します。それぞれの特徴を踏まえ、自分の時計を保管するのにちょうど良いアイテムを探してみましょう。
購入したときの箱
腕時計を購入したときの箱が残っている場合、まずはそこに保管しておくとよいでしょう。箱にはパッケージとしての役割もありますが、高級腕時計の箱は作りがしっかりしているため、保管場所としても適しています。
保管と同時に巻き上げもしておきたい、何本も一緒に保管したいといった希望がなければ、購入時の箱に保管しておけば問題ありません。
一部のモデルでは、後述するワインディングマシーンがボックスとなっていることもあります。
ワインディングマシーン
ワインディングマシーンは、機械式腕時計(自動巻き式)でゼンマイが巻かれた状態を維持したまま時計を保管できるアイテムです。
機械式時計は、巻き上げたゼンマイがほどけていくときの力を利用して時計が動きます。「手巻き式」と「自動巻き式」があり、このうち、自動巻き式時計は時計を着けて腕を動かしていれば自動でゼンマイが巻かれる仕組みとなっています。
ワインディングマシーンに自動巻き式時計をセットすれば、着けていないときも自動でゼンマイが巻き上がります。パワーリザーブの時間を過ぎてしまっても、手で巻き上げずに済むのがワインディングマシーンを使うメリットです。
複数の自動巻き式時計を使い分けているようなケースでも、使っていない時計をワインディングマシーンにセットしておけば、次に着用するとき時刻を合わせる必要がありません。
また、ワインディングマシーンは腕時計の高い精度を維持することにも役立ち、内部の潤滑油を均等にするメリットもあります。ただし、ワインディングマシーンは回転方向や速度を腕時計に合わせる必要があるため、メンテナンスと仕様の確認は確実に行うべきです。
コレクションケース
コレクションケースは、高級腕時計をコレクションとして保管するための専用ケースです。高級レザー製やアルミニウム製と素材は幅広く、ケースの内側に仕切りがあって複数の時計を収納できるタイプなど、さまざまな種類の製品が販売されています。
コレクションケースを活用するメリットは、高級感を演出できることです。単に保管するだけでなく、インテリアのようにディスプレイもできます。また、アルミニウムのように電磁波を通さない素材で作られたケースを選べば、時計の寿命を延ばすことも可能です。
携帯用ケース
外出先で腕時計を着用せずに持ち運ぶときは、時計専用の携帯用ケースを使用するのがおすすめです。コレクションケースほどではありませんが、携帯用ケースは一定の耐久性を備えており、移動時に加わる小さな衝撃や振動から腕時計を保護できます。
多様なタイプ・サイズの製品が販売されているため、自分の腕時計に合った携帯用ケースを選ぶ必要があります。文字盤の大きい腕時計を携行するときは、幅と深さのある携帯用ケースを選びましょう。
毎日使用する機械式腕時計や、クオーツ時計を1本置いておくだけなら、ワインディングマシーンやコレクションケースではなくスタンドケースもよいでしょう。スタンドケースは簡易的ですが、サイズがコンパクトなため設置がしやすく、利便性が良い保管アイテムです。
スタイリッシュな縦型や趣のある木製素材、2本用ケースなど、スタンドケースのバリエーションはさまざまです。あらゆるタイプ・サイズの製品があるため、自分の腕時計や所持本数・設置スペースに合ったものを探しましょう。
特に、腕時計とスタンドケースのサイズが合っているかどうかは、購入前に確認しておくことをおすすめします。
高級時計を保管するときの注意点
高級時計を保管するときは、保管場所や活用するアイテムの他にも注意したいポイントがあります。以下で詳しく解説します。
ワインディングマシーンでの部品消耗に注意
ワインディングマシーンは、自動巻き式時計を保管する際に自動でゼンマイが巻き上げられるというメリットがありますが、使用する上で押さえておきたいデメリットもあります。
一つは時計が回転し続けることによる部品消耗です。ワインディングマシーンに腕時計をセットすると、身に着けていない状態で自動的にゼンマイを巻き上げるため、通常とは違う部分に負荷がかかって消耗・劣化が進む可能性があります。
保管の前に最低限の手入れを
高級時計を保管するときには、場所や保管するアイテムを工夫するのはもちろんですが、収納前に簡単な時計の手入れを行うのも大切です。いくら場所やアイテムを工夫しても、時計を汚れたまま保管すると、素材の劣化や、肌トラブルを招くこともあるためです。
腕時計を外したときは、たとえ1日しか着けていなくても、軽く汚れを落としてからしまうようにしましょう。掃除をする際は、クロスで拭いた後に陰干しするのがおすすめです。これだけでも汚れによる菌の繁殖、時計の劣化を抑えられます。
できれば保管の前だけでなく、日頃から簡単な手入れを行うのがベストです。
水を使った手入れは避ける
時計を保管する前にきれいに汚れを落としたいと思っても、基本的に時計の手入れに水は使えません。防水性能が低い時計の場合、時計内部に水が侵入して故障の原因になる可能性があります。
日常生活用強化防水時計であれば比較的安心ですが、それでも蛇口の水が直接かかったり、お湯が出たりする可能性もあるため、水洗いは避けた方がよいでしょう。直接水をかけるのはもちろん、水分を含んだ布を使用するのもおすすめしません。
防水性の有無に関わらず、腕時計の手入れは基本的に全て乾拭きで行うことをおすすめします。よく乾いた清潔で柔らかい布で静かに汚れを拭いてください。
高級時計を長く愛用するための工夫
高級時計を長く愛用するためには、使う頻度への配慮や定期的なメンテナンスも重要になってきます。保管場所や方法を正しく把握するのはもちろん、時計を長く愛用するための扱い方・考え方も押さえておきましょう。
できるだけ日常的に着ける
高級時計に多い機械式時計は、基本的に毎日使うことを想定して作られています。長く着けずに置いておくと潤滑油が固まって摩擦が起こり、故障する原因となります。
そのため機械式時計は、できるだけ日常的に着けるのがベストです。時計を着用し続けることが、長く使うための重要なメンテナンスとなります。
使わずに保管する場合でも、月に1回はゼンマイを巻き上げて着用するのがおすすめです。自動巻きの時計でも、一定の時間放置するとゼンマイがほどけきってしまい、時計が止まります。毎日着けるのが難しい場合も月に1回は巻き上げましょう。
メーカー推奨の頻度でオーバーホールに出す
高級時計を長く愛用するためには、定期的にオーバーホールを依頼することも大切です。オーバーホールとはムーブメントを取り出してバラバラに分解し、個々の部品を洗浄して潤滑油を注入したり、パーツを交換したりすることを指します。
オーバーホールに出さずに使い続けると、潤滑油が劣化して部品が摩耗しやすくなり、時計が動かなくなってしまう可能性があります。特に機械式の高級腕時計では、オーバーホールは必須と考えてよいでしょう。
オーバーホールの頻度については、高級腕時計ブランドでは公式ページに記載があります。一例としてオメガでは、5〜8年ごとのオーバーホールを推奨しています。自分が持っている時計のメーカーの情報をチェックして、必要なタイミングでオーバーホールに出しましょう。
参考:OMEGA. 「オメガ・ウォッチ:サービス&修理価格」
保管方法に気を付けて時計を長く愛用
高級腕時計を長く愛用するためには、正しい保管場所と日々のお手入れが不可欠です。例えば、保管に適した場所は「湿度と温度が安定している」「直射日光や磁気を浴びない」などの条件を満たす必要があります。
また腕時計を購入したときの箱やワインディングマシーン、コレクションケースなど、保管に役立つアイテムも必要に応じて活用しましょう。保管する前に簡単な手入れが必要ですが、水を使った手入れは避け、乾拭きを心がけてください。
正しい保管方法をマスターすることで、大切な高級時計の寿命を延ばせます。ぜひ本記事の内容を参考にしながら、高級時計の適切な保管を実践してみてください。
ハラダでは、長く愛用できる高級腕時計の販売の他、ご購入いただいたお客さまには点検、調整サービスも提供しております。またメーカーごとの最適なオーバーホールの頻度など、役立つ情報も発信しておりますので、どうぞお気軽にご相談ください。
この記事の監修
- 時計は単なる時間を知るためのツールではなく、個性やスタイルを表現する大切なアイテムであるという信念のもと、ハラダではお客様一人ひとりのライフスタイルに合った時計を提案し、長く愛用できる商品選びをサポートしています。
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