国産腕時計ブランドの雄として、その勢力を伸ばし続けてきたセイコー。そのコレクションの数々は高い品質とデザイン性によって、世界中で知られています。
そして、その最高峰として知られ、洗練が重ねられてきたのが、キングセイコーとグランドセイコーのふたつです。
本記事では、キングセイコーとグランドセイコーの歴史やデザイン・機能性を深掘りし、その違いについて解説いたします。
キングセイコーとグランドセイコーの歴史
現在のセイコーとキングセイコーとグランドセイコーは、それぞれ独自の歴史と進化を遂げてきました。その歴史を時系列にそってご紹介しましょう。
キングセイコーとグランドセイコーの誕生
1892年、セイコーの産みの親である服部金太郎が、「精工舎」として長野県の諏訪で時計製造を開始します。そして1924年に「SEIKO」ブランドを立ち上げました。
1937年には生産増強のため、腕時計製造部門を「第二精工舎」として東京の亀戸に独立させます。しかし第二次世界大戦で、工場は壊滅的な被害を受けました。
戦後に亀戸の工場の復興が始まり、また長野県諏訪の工場も残されていたため、セイコーは亀戸と諏訪の2つの拠点で時計製造を継続しました。
1955年の高度経済成長期には、諏訪と亀戸の工場がそれぞれ異なる時計の開発と製造を行い、互いに競争しながら進化していったのです。
1960年には諏訪精工舎から高品質の「グランドセイコー」が誕生。その一年後に、亀戸の第二精工舎から「キングセイコー」が誕生しました。
現在のキングセイコーとグランドセイコー
グランドセイコーは「世界に挑戦する腕時計」というコンセプトのもと、高品質の腕時計を次々と生み出し続け、キングセイコーも負けじと多くの時計を発表していきます。
結果として、それぞれから数多くの傑作モデルが登場しましたが、キングセイコーは1975年頃に生産を終了。たびたび復刻モデルをラインナップしてはいましたが、レギュラー化には至りませんでした。
それから数十年の時が経った2017年、グランドセイコーはセイコーから独立して高級志向のブランドへと発展。続く2022年に、ファンの声もあってか、セイコーのコレクションとしてキングセイコーが復活を果たしました。
結果、現在は1960年代のように、キングセイコーとグランドセイコーの両方を手に取れるようになっています。
キングセイコーとグランドセイコーの腕時計それぞれの魅力とは?
現在、キングセイコー、グランドセイコーでそれぞれ魅力的なコレクションが数多くラインナップされています。それぞれの魅力について、ここではまとめました。
グランドセイコー
グランドセイコーは、世界に挑戦する腕時計としてセイコーから独立しており、高級志向の腕時計が数多く揃います。ドレスラインからスポーツラインまで非常にラインナップも充実しており、近年ではテンタグラフと呼ばれる初の機械式クロノグラフも登場するなど、確固たる技術力を証明しています
デザイン面では、1967年に登場した44GSを基にしたタイムレスで実用性の高いスタイルが特徴となります。また、グランドセイコーといえば第3のムーブメントである9Rスプリングドライブも有名でしょう。機械式の精度とクォーツの安定性を兼ね備えており、秒針のなめらかな動きが特徴です。
革新的な技術と洗練されたデザインが生み出す独創性こそ、グランドセイコーの魅力と言えるでしょう。価格帯は、クォーツモデルなら2、30万〜、機械式やスプリングドライブであれば、大体6、70万〜となっています。
キングセイコー
現行のキングセイコーは、評価の高い2代目モデル「KSK」を復刻した質実剛健なデザイン性が特徴です。また、コンセプトの「Newest Classic」通り、モダンに再解釈されたクラシカルデザインを有しています。細部まで再現された象徴的な意匠は、古くからのファンからも高い評価を得ています。
多彩なカラーリング、バリエーション展開が行われているのもキングセイコーの特徴。レザーストラップも多く用意されているため、スタイリングを楽しめる点も魅力となるでしょう。
セイコーの上位ラインではありますが、価格帯は20〜40万円ほど。グランドセイコーに比べるとそこまで高価ではありませんが、その分精度や機能性では少々劣ります。
2024年には1969年登場モデルからインスピレーションを得た新たなデザインコレクションも登場しており、今後の展開が気になるコレクションと言えるでしょう。なお、現在キングセイコーのラインナップは機械式モデルのみとなっています。
キングセイコーとグランドセイコーの違いは?
ここまでの情報をまとめると、キングセイコーとグランドセイコーの違いは以下が挙げられます。それぞれの特徴やニーズを押さえられると、自分に合ったモデル選びがしやすいはずでしょう。
・グランドセイコーは1960年に長野の諏訪精工舎で誕生、キングセイコーは1961年に亀戸の第二精工舎で誕生。
・グランドセイコーは誕生から現在まで展開を続け、2017年にはセイコーから独立を果たした。キングセイコーについては一度生産を休止。2022年にレギュラーラインとして復活。
・グランドセイコーはスポーティからドレス、クラシックと、多彩に展開。ムーブメントも機械式、クォーツ、スプリングドライブが揃う。キングセイコーは大別すると「KSK」デザインと「1969」デザインという、モダンクラシックな2種が展開中。ムーブメントは機械式のみ。
・価格帯は、キングセイコーが20〜40万円、グランドセイコーはクォーツモデルなら2、30万〜、機械式やスプリングドライブであれば、大体6、70万〜程度。20〜40万円の機械式モデルは、グランドセイコーでは手に入らない。
キングセイコーとグランドセイコーの代表的な腕時計をご紹介!
キングセイコーとグランドセイコーは長い歴史の中で、それぞれの特色を見出し洗練させてきました。最後に、それぞれを代表する腕時計についてご紹介します。
キングセイコー『SDKS001』
『SDKS001』は、これぞキングセイコーといったクラシックデザインの腕時計です。全体がシルバーカラーで統一されており、シンプルさゆえの質実剛健な雰囲気を秘めています。
ダイアルには美しく光を反射するなめらかな生地が採用され、その上にはシンプルな針とインデックスが配置されています。それぞれドルフィンタイプとバータイプとなっており、多面カットによる立体感を味わえるデザインです。
ケースには鏡面仕上げとヘアライン仕上げが施され、シャープなデザイン性を実現しています。加えてケースバックには、キングセイコーの「盾」をモチーフとしたブランドマークを大きく配置。歴史あるアイコニックな魅力を堪能できます。
さらにストラップは、1960年代のキングセイコーモデルをリスペクトした多列ブレスレットを採用。鏡面仕上げとヘアライン加工が施されており、ダイナミックな存在感と快適な付け心地を実現しています。
機能性については、メカニカルキャリバー「6R31」を採用しており、日差+25秒~-15秒の精度を誇ります。最大巻上時には約70時間キープするパワーリザーブを有しているため、丸二日放置しても駆動し続けるスペックです。
日常生活用強化防水(10気圧)や耐磁性能も有しているため、仕事やプライベート問わず、あらゆる場面で活躍してくれるでしょう。
キングセイコーらしい魅力をリーズナブルに味わえる逸品です。
グランドセイコー『SBGA373』
『SBGA373』は、グランドセイコーの歴史あるデザイン性と独自の機構「スプリングドライブ」を有した腕時計です。
グランドセイコーのデザイン理念である「セイコースタイル」。本理念の元となった「44GS」を現代的にアレンジした「44GS現代デザイン」を外観に取り入れています。
特筆すべきは、洗練されたケースへのこだわりです。ざらつ研磨による歪みのない面に鏡面仕上げを施すことで、非常になめらかな表面を実現。美しい光の反射を魅せてくれます。
加えてケースサイドにゆるやかなカーブを持たせることで、高い装着感と柔和なデザイン性を再現しています。
ダイアルには、グランドセイコー独自の厚銀放射仕上げが施されており、高級感に溢れる印象です。インデックスや針もしっかりと磨き上げられており、洗練された雰囲気を味わえるでしょう。研磨師の技を結集させた造形を、ぜひ体感してみてください。
機能面では、グランドセイコー独自のムーブメント機構「スプリングドライブ」が有名です。機械的なゼンマイを動力源としつつ、運動エネルギーを電気エネルギーに変換することで、クォーツ振動へと導きます。
機械式とクォーツ式のハイブリッド機構により、平均月差±15秒(日差±1秒相当)の高精度を実現。また約72時間(約3日間)の長時間パワーリザーブを誇り、その残量を左下の表示で確認可能です。
さらにカレンダー機能や日常生活用強化防水(10気圧)、耐磁性能も有した機能性に溢れる仕様となっています。
デザインと機能性のどちらも優れた腕時計として、生涯に渡り愛用できる逸品です。
セイコーの歴史あるブランドを通して、品質の高い腕時計を愛用しよう!
キングセイコーとグランドセイコーは、どちらもセイコーの名を有していながら、根本的に歴史や特徴が異なるブランドです。日本の時計技術の進歩とともに、お互いがデザインと機能性を洗練させてきました。
今回ご紹介した腕時計は、それぞれのブランドが生み出した代表的なモデルです。
あらゆる場面で活用できる優れたデザイン性と便利な機能性に溢れており、いつまでも愛用できる腕時計として重宝するでしょう。
ぜひ腕時計を実際に着用して、キングセイコーとグランドセイコーの歴史を噛み締めてみてください。