タイトルキューバの街並みの画像

偉人の愛した時計 第1回
ヘミングウェイとクエルボ・イ・ソブリノス

 

年齢を重ねることで、身に着けるアイテムには

「存在としての“重み”やアイテムの持つ“ストーリー”も大事にしたい」

と思っている方がいらっしゃるのではないでしょうか。

 

腕時計もまたしかり。
その選択には年相応の品質はもちろん、生まれた背景やそのブランドが辿った歴史まで吟味したいところ。

このコーナーでは、数あるブランドの中から歴史に名を残した偉人とともに歩んだ腕時計ブランドの歴史を紹介すると共に、その腕時計が偉人に与えたとされる影響などをご紹介します。

 

 

 

カリブのエッセンスを持つ腕時計
「クエルボ・イ・ソブリノス」

お酒と葉巻と共に並ぶクエルボ・イ・ソブリノスの画像

クエルボ・イ・ソブリノスは「カリブ海の真珠」の別名をもつキューバで発祥した時計ブランド。日本ではなかなか耳にしない名前ですが、1882年に首都ハバナで設立されたため、100年以上の歴史があります。

現在のモデルにも、設立当初から続くカリビアンのエッセンスである
「ゆっくりと流れる時が豊かなライフスタイルを生み出す」
という考え方が、しっかりと取り入れられています。

また自社の創作に加えて、1940年代の初めには文字盤内の時計のモデルをカスタマイズすることにより、パテック・フィリップなど他社とのコラボレーションを行ったりもしていました。

 

 

戦争に疲れたヘミングウェイが選んだキューバでの生き方

クエルボ・イ・ソブリノスが他社とのコラボを行うなどして急成長を迎えていた頃、アメリカから一人の作家がキューバに移住してきました。

小説家、アーネスト・ヘミングウェイです。

書斎のヘミングウェイの画像

行動派の作家として知られ、自ら戦場に赴いての実体験を反映させた作品が特徴的です。
また、狩猟や釣り、ボクシングといったアウトドアな趣味を持ち、その豪快なライフスタイルはアメリカ社会に多大な影響を与えました。
1938年、それまでの戦場での従軍経験などから心身ともに疲弊した彼は、ゆったりとした時が流れるキューバに移住。
趣味に打ち込みながら執筆を続け、亡くなるまでの22年間を過ごしました。

その際、彼は首都ハバナのクエルボ・イ・ソブリノス本店で腕時計を購入しており、今なお彼の名が残った顧客名簿が現存するそうです。

また、当時キューバに移住していた日本人漁師から釣りの技術を教えてもらったとされており、さらにはハバナで出会った漁師の老人との交流をヒントに、著作『老人と海』を執筆したと言われています。

 

晩年になって見出した趣味の相棒として、クエルボ・イ・ソブリノスの腕時計と共に海へと漕ぎ出している姿が何となく想像できますね。

明快なフォルムとディテール、強弱の効いたコントラストはラフな姿で歩いたハバナの昼下がりや、通いつめたハバナ旧市街のバーのカウンターはもちろんのこと、魚と格闘するために漕ぎ出したカリブ海の洋上でも絶対的に映えたことでしょう。

 

 

『老人と海』に見る、「豊かなライフスタイル」の答え

キューバの海のイメージ画像

クエルボ・イ・ソブリノスが大事にしている
「ゆっくりと流れる時が豊かなライフスタイルを生み出す」というコンセプトは、
晩年の彼の生き方や著作にその影響を与え、形成したと言っても良いでしょう。

 

ヘミングウェイの生涯最後の傑作『老人と海』の作中では、それまでのポリシーであった客観的描写を徹底する姿勢は薄れ、晩年のヘミングウェイが見出した新たなヒーロー像が表現されていると言われています。

主人公であるサンチャゴは孤独な老人であり、それまでの作品の主人公とは一線を画し、戦場で躍動することも、ドラマチックな恋に落ちることも一切ありません。
序盤ではただただ老いと共に様々なものを失っていき、漁師としての「終わり」を迎えつつある姿が描かれています。

ある日、84日振りの獲物を獲ろうとひとり漁に出た彼は、巨大なマカジキを掛け、たった1人で4日間にもわたる闘いを繰り広げます。ここからのサンチャゴは若かりし頃にアフリカで見たライオンを想起しながら自分を奮いたたせ、ただカジキを釣り上げることだけに執念を燃やします。
何とかカジキには勝利するものの、その後カジキを狙うサメの群れにはなす術もなく敗れ、結局カジキの骨しか持ち帰ることができませんでした。

しかし、港に戻った彼を待っていたのは自分を心配してくれていたかつての弟子と、己の心に去来する充足感でした。

 

ヘミングウェイは、敗者となったサンチャゴを主人公にすることで、勝者・敗者を超越した人間の本質を見出し、あるべき人間の姿を表現したのです。

「俺は漁師に生まれてきた。だから、そのことだけを考えれば良い。」

サンチャゴの言葉にこそ、勝敗を超えて己の生を全うする1人の人間の逞しさが凝縮されています。そしてサンチャゴの人生は、肉体の衰えたヘミングウェイの目指した新しい生き方でもあったのではないでしょうか。

 

個人的にはクエルボ・イ・ソブリノスのコンセプトでもある「豊かなライフスタイル」とは何かをヘミングウェイ自身が自らに問い、そして答えとして書き記しているのが『老人と海』なのではないかと感じさえします。

 

 

人生のターニングポイントを迎えるあなたに

カジキ釣りを楽しむヘミングウェイの画像

『老人と海』には失い続ける人生というものに対して、思考や他者からの評価を自らの行動でねじ伏せて抗う者への賛歌が描かれています。

一方で、現代社会に生きる私たちは皆年齢を重ね、昔できていたこともできなくなり、基本的には定年を迎えて一線を退いていきます。
サンチャゴは老人であるにも関わらず、きっとこの物語が終わった後も変わらず漁に出ますし、これまでもきっと漁に出続けることでしょう。

 

では、これまでの自分の人生を振り返ってみるとどうでしょうか?

ここまでの執念を燃やすほど渇望したものはあっただろうか。
サンチャゴのように何かに真摯に向き合ったことがあるだろうか。
もはや自分は沖にさえ出ていないのではないか…。

手綱を離さず、獲物を追い続けられるか。
己を鼓舞し続けられるか。

私たちもまた、84日間、いやもっとそれ以上に何の成果も挙げられない、失い続ける老人のひとりなのかもしれません。

 

そんな中ヘミングウェイが見つけた、
「豊かなライフスタイル=失い続ける人生に対して抗うこと。」という考え方。

 

定年後の余暇が「第二の人生」とも表現される中、私たちはサンチャゴのように、そしてヘミングウェイのように体は衰えたとしても「第一の人生」と変わることなく、強く歩みを進められているでしょうか。
自分の満足のいく「豊かなライフスタイル」を送ることができているでしょうか。

手首から常にそう問いかけてくれる、クエルボ・イ・ソブリノスの腕時計は、今現在第二の人生を歩み始めようとする方や、お仕事で責任のある地位にある方などにこそオススメしたい腕時計となっています。

 

ご興味を持たれた方は、ぜひ一度商品ページをご覧になってみてください。
もちろん、お電話やメールによるお問い合わせにもご対応しております。

 

執筆中のヘミングウェイと猫

          「人間は滅茶滅茶にやられるかもしれない。

                               でも、打ち負かされることはないのだ。」

                                                                  アーネスト・ヘミングウェイ(1899〜1961)

ここまでのお相手は、スタッフ石田でした。