クロノグラフに搭載される機能の一つであるタキメーター。名前は聞いたことがあっても、どういった機構なのかがよく分からない……という方も多いのではないでしょうか。スポーツモデルを中心に採用される、タキメーターやクロノグラフの機能についての理解を深めれば、腕時計選びがより一層楽しくなるでしょう。
そこで本記事では、タキメーターが持つ機能や使用方法・魅力に加え、おすすめのクロノグラフモデルなどを紹介します。腕時計選びに悩んでいる方は、ぜひ参考にしてみてください。
腕時計のタキメーターとは
腕時計に搭載されているタキメーターとは、どのような機構なのでしょうか。ここではタキメーターが具体的にどのようなものなのかについて、詳しく説明していきます。
平均速度を測るクロノグラフのメーター
腕時計のタキメーターとは、クロノグラフ(ストップウォッチ付きの時計)に備わっているスケール(目盛り)です。ベゼルや文字盤に刻まれていることが多く、クロノグラフ機能とともに使用すれば、平均速度の計測ができます。
タキメーター付きのクロノグラフは、例えば以下のような使い方が可能です。
・車で1km走行するのにかかる時間を計って平均時速を割り出す
・一定時間の仕事量から1時間にどれくらい作業できるかを計算して、全体に必要な作業時間を算出する
しかしながら、電子機器がありふれる現代においては、その機能性ではなく、デザイン性に心惹かれる人が多いでしょう。
メカニカルな見た目が魅力
タキメーターは本来、カーレースなどで重宝されてきた機能のため、現代の日常生活で使用する機会は少ないでしょう。それでもタキメーター付きクロノグラフが一定の人気を誇るのは、通常の腕時計とは異なる、精密機械のような雰囲気を持った独特のデザイン性があるからです。
機能的な面が強調されていることは、デザインのアクセントとなり腕時計のツール的な側面を際立たせます。見た目やスタイル、そして機能性においてバランス良く両立できているため、多くのファンに支持されていると考えられるのです。
クロノグラフのメーター機能は他にも
クロノグラフには他にも、光と音から距離を導き出す「テレメーター」や脈拍数を計測できる「パルスメーター」など、さまざまなメーター機能が搭載されています。
クロノグラフモデルの腕時計を購入したいと考えている方なら、いずれのメーター機能も知っておきたいところです。クロノグラフに搭載される、タキメーター以外のメーター機能を見ていきましょう。
距離を計測できる「テレメーター」
光と音が持つ速さの違いを利用して、距離を計測するスケールを「テレメーター」と呼びます。頭に付いている「テレ」とは「遠距離」の意味です。多くのクロノグラフでは、テレメーターとタキメーターがセットになっており、現代においてテレメーターのみを備えているモデルは少ないでしょう。
テレメーターは元々、軍隊で使用されていた機能です。大砲を撃った際の発砲炎と砲撃音から、攻撃目標までの距離を算出するのに使用していました。テレメーター搭載のクロノグラフでは、光が見えたときにプッシュボタンを押して計測をスタートし、音が聞こえたら停止するというシンプルな方法で距離を測ります。
光と音の移動速度はそれぞれほとんど一定であるため、テレメーターはこの方法で対象までの距離を割り出すことができるのです。ほとんどの場合、テレメーターにはメーターが表示されており、停止時にクロノグラフ針が指す数字が、発光源と現在地の距離を示します。
脈拍数を計測できる「パルスメーター」
文字盤やベゼルの目盛りを基に、1分間当たりの脈拍数を計測できるスケールを「パルスメーター」と呼びます。パルス(pulse)は英語で「脈」の意味です。
スタートを押すのと一緒に脈拍の計測を始め、基準回数まで数えてストップさせたときにクロノグラフ針の指しているパルスメーターの数値が、1分間の脈拍数となります。計測する基準回数は、15脈拍用や30脈拍用などモデルによってさまざまです。モデルの説明書に記載されている数値に従いましょう。
パルスメーターは元々、医師が患者の脈拍を算出するために使う機能でした。古くは特注品のクロノグラフに搭載されていたと考えられますが、現在でもナースウォッチなどに広く採用されています。
クロノグラフモデル各部の機能
タキメーターを搭載したクロノグラフには、通常の腕時計と異なるさまざまなパーツや機能が備わっています。購入を検討する場合は、クロノグラフにどのようなパーツや機能があるかについても押さえておきましょう。各パーツの特徴や機能を紹介します。
プッシュボタン
クロノグラフによる測定の開始・終了やカレンダーの調整などに用いられるボタンを、プッシュボタンと呼びます。プッシュボタンは多くのモデルで2つが搭載されますが、ボタンひとつでクロノグラフの操作を行うモデルも存在しています。
一般的には計測の開始・終了に使用されるスタート・ストップボタンが上に、押すと積算計を0位置に戻せるリセットボタンが下に付いています。
計測を行う際は、基本的に次の順番でボタン操作を行います。
1.スタート・ストップ(1回目で計測開始)
2.スタート・ストップ(2回目を押すと計測停止)
3.リセット(結果をリセットする)
プッシュボタンはケースサイドに付いているため、ぶつけてしまったりすると正常な動作を妨げてしまうことがあります。また、計測中にリセットボタンを押すなど、想定されていない操作は、内部機構の破損につながる可能性があるので注意が必要です。
クロノグラフ秒針
クロノグラフ針は、その名の通り計測専用の秒針です。クロノグラフモデルでは、通常の時計では秒針がある場所に、時間経過を測るためのクロノグラフ秒針が付いている場合がほとんどです。
通常の秒針と異なり、使用しない間は止まったままになっているのがクロノグラフ秒針の特徴です。クロノグラフ秒針はスタート・ストップボタンを押すと動き出し、もう一度押すと停止、さらにもう1回押すと再び動き出します。クロノグラフ機能を動作させない場合は、クロノグラフ秒針を動かすことはありません。
なお通常の秒針の役割を果たす針は、代わりにスモールセコンド(文字盤の中心以外に付いている、小窓の中の秒針)として文字盤内に配置されている場合がほとんどです。
分積算計
分積算計は経過時間の測定に使用する機能で、インダイアル(文字盤内に設置された小さな文字盤)として配置されます。モデルによって、30分・45分・60分などの分積算計が搭載されています。
計測を開始するとクロノグラフ秒針が動き、これが60秒で1周すると、分積算計が1メモリ進む構造となっています。多くのクロノグラフモデルに採用されている30分積算計は、クロノグラフ秒針が1周すると分積算計は1メモリだけ動き、30分積算計が1周すると30分経ったということが分かります。。
時積算計(3カウンタータイプのみ)
クロノグラフモデルには、文字盤にスモールセコンド・分積算計の2種類のインダイアルしかない「2カウンター」の他、もうひとつインダイアルを持った「3カウンター」があります。3カウンターモデルで搭載されているダイアルは、分積算計・スモールセコンドに加え、時積算計を搭載している場合が多いです。
時積算計は、1時間を単位として経過時間を計測できる機能です。12時間積算計の場合、30分積算計が1周すると針が1/2メモリだけ動きます。
クロノグラフでは「30分積算計」と「12時間積算計」が搭載されているモデルが多い印象です。ただし、一部には「60分」と「24時間」がセットになっているモデルも存在しています。
2カウンター・3カウンタータイプどちらが良い?
クロノグラフを購入する際の基準ですが、2カウンター、3カウンター、どちらが良いというのは特にありません。
例えば、計器やメカニックのようなデザインが好きで、ディテールが緻密な時計を好む方にも3カウンターがおすすめと言えます。
一方で文字盤がシンプルな方が好みの場合は2カウンターが向いているかもしれません。タキメーター搭載モデルの場合、インダイアルが二つでも機械のような洗練されたデザイン性を十分に感じられるでしょう。
また、2カウンターのモデルには、時積算計の代わりに日付表示など他の機能を搭載しやすいというメリットもあります。
そもそも、クロノグラフ機能がなくてはならない場面は日常生活にほとんどないため、完全に好みで選ぶことをお勧めいたします。
タキメーターを備えたおすすめクロノグラフ
タキメーターやクロノグラフの構造を知って、タキメーター付きクロノグラフに大きな魅力を感じた方も多いのではないでしょうか。ここでは高い品質を誇る高級ブランドからおすすめのモデルを紹介します。
オメガ スピードマスター ムーンウォッチ プロフェッショナル 310.30.42.50.01.002
「究極」の意味を持つオメガは、1848年に創業したスイスの高級時計メーカーです。オメガの時計は、過去28回のオリンピック大会でタイムキーパーに選ばれるなど、その精度の高さでも知られています。また、映画「007」の中でジェームズ・ボンドが愛用している腕時計ブランドとしても有名です。
スピードマスター ムーンウォッチ プロフェッショナルは、ムーンウォッチの愛称の通り、過去に行われた6回の月面着陸プロジェクトの全てで使われた、オメガを代表するクロノグラフです。
310.30.42.50.01.002のムーブメントは、オメガ独自のコーアクシャルエスケープメントを搭載した手巻き式「キャリバー オメガ 3861」になっています。素材はステンレススティールで、フロントとケースバックにサファイアクリスタルガラスを使用した、上品かつ洗練されたデザインが魅力です。
・駆動方式:機械式(手巻き式)
・ケース径:42mm
・ムーブメント:キャリバー オメガ 3861
310.30.42.50.01.002 OMEGA オメガ スピードマスター
【オメガ スピードマスターの定番 新旧比較も】 初代ムーンウォッチの正当進化モデルをご紹介
グランドセイコー SBGC242
世界に挑戦する国産高級腕時計をコンセプトにセイコーから独立したブランド、グランドセイコー。SBGC242は、8Kイエローゴールドとセラミックスが放つコントラストが特徴的なクロノグラフGMT(世界標準時)モデルです。
SBGC242ではグランドセイコー独自のムーブメント「スプリングドライブ(9R86)」を採用しています。ぜんまいを動力源にしながら、クオーツ式のように水晶振動子の振動で時計の精度を高めるハイブリッドムーブメントです。
さらに、GMT機能も搭載しており、スポーティかつ実用的なモデルに仕上がっています。また、18Kイエローゴールドの採用によって、高級感がありながら、スポーティーさも併せ持つフェイスに仕上がっています。カジュアルはもちろんのこと、リゾートシーンなどでも活躍してくれるでしょう。
・駆動方式:機械式(自動巻き、手巻き付き)
・ケースサイズ:横43.8mm×縦51.2mm×厚さ16.1mm
・ムーブメント:スプリングドライブ 9R86
グランドセイコー SBGC242については、以下の記事でも紹介しています。
【グランドセイコー SBGC242】18Kイエローゴールドが華やかさを添えるSDクロノグラフGMTモデル
カシオ オシアナス マンタ OCW-S7000A-2AJF
世界有数のタフネスウォッチG-SHOCKを生み出した時計メーカー、カシオ。「オシアナス マンタ OCW-S7000A-2AJF」は、カシオのプレミアムラインであるオシアナスから2023年に登場したモデルです。限定は1,500本で、身に着けているだけでも特別な気分になれるでしょう。
深海のような深い青をたたえたカラーリングは、見る角度によって、まるで海のように少しずつ色を変えていきます。特徴的な文字盤は視認性も高く、デザインと実用性を兼ね備えているのが魅力です。
タフソーラー(ソーラー充電システム)と電波時計の融合により、さまざまな地域で正確な時間をキープでき、高い精度を実現しています。また、フル充電状態なら、ソーラー発電なしで約19カ月間(パワーセーブ作動時)動き続けてくれるため、日常使いの時計に相応しいと言えます。
・駆動方式:タフソーラー(ソーラー充電システム)
・ケースサイズ:縦47.5×mm横42.8×mm厚さ 9.5mm
以下の記事で、カシオ オシアナス マンタ OCW-S7000A-2AJFを詳しく解説しています。
オシアナスの新星『OCW-S7000A-2AJF』青の魅力と最新技術が融合した限定モデル
タキメーターで平均速度を測るには
現代では、タキメーターが必要になるシーンはほとんど無いかと思われます。とはいえ、タキメーター付きクロノグラフを持てば、実際に機能性を体感してみたいと一度は考えるものではないでしょうか。最後に、実際にタキメーターを使って平均速度を計測する方法や注意点を紹介します。
計測の方法とスケールの見方
タキメーターを使えば、計測対象(人や車など)が移動した時間を計測して、平均時速を導き出せます。タキメーターで平均速度を計測する手順は以下の通りです。
・クロノグラフのスタート・ストップボタンを押し、ストップウォッチを起動させて計測を開始する
・1km移動した時点でもう一度ボタンを押し、ストップウォッチを停止させる
・ストップした時点でクロノグラフ針が指しているタキメーターのスケールを見て平均時速を把握する
例えば1kmを走るのに45秒かかったとすると、タキメーターのスケールは80を指しており、平均速度は時速約80kmと分かります。
タキメーターのスケールで把握する平均時速は、距離が1km以外の場合でも計測が可能です。2km走行した場合には2倍に、500mの場合は1/2に換算します。
計測時の注意点
タキメーターで平均速度を計測する際には、以下の点に注意してください。
・ぴったり1km移動した時点で計測をストップしなかったりメンテナンスが不十分で動作が不安定だったりすると、正確な計測ができなくなる恐れがある
・モデルによって、精度や操作方法が異なる
・タキメーターは正しい順番で操作しないと故障する恐れがある
計測の際はタキメーター付きクロノグラフが、油ぎれやパーツの劣化などで不具合が起こっていないことを確認した上で、取扱説明書に従いましょう。モデルによっても操作方法や注意点が違います。
クロノグラフで時間を計測するときは、スタート・ストップ、リセットの順で操作しましょう。この操作を損なうと、機械部分に損傷が起こる可能性があります。前述の通り多くのクロノグラフでは、2時位置にスタート・ストップボタン、4時位置にリセットボタンを設置しています。
メカニカルな時計が好みならタキメーター搭載モデルを
タキメーターはクロノグラフに搭載されており、1kmの走行時間から平均時速を算出できる機構です。現在タキメーターが必要とされるシーンは少なくなっているものの、そのメカニカルでスタイリッシュな外観に魅力を感じる方も多いでしょう。
高級ブランドを含め、各メーカーからはタキメーターを搭載した魅力的なおすすめクロノグラフモデルが発売されています。腕時計の購入を検討されている方は、タキメーター付きクロノグラフを候補の一つにしてみてはいかがでしょうか。
今回紹介したモデルに限らず、タキメーター搭載の腕時計の購入を考えている方は、ぜひ創業90年の高級時計正規販売店HARADAのご利用をご検討ください。初めて高級腕時計を購入する際や、一風変わった時計を探している際にも、お気軽にお問い合わせくださいませ。
この記事の監修
- 時計は単なる時間を知るためのツールではなく、個性やスタイルを表現する大切なアイテムであるという信念のもと、ハラダではお客様一人ひとりのライフスタイルに合った時計を提案し、長く愛用できる商品選びをサポートしています。
当ブログでは、最新の製品レビュー、メンテナンスのコツ、時計に関するトリビアなど、腕時計に関する多岐にわたる情報を提供しています。
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