
世界に誇る国産腕時計ブランド、グランドセイコー。その機械式時計において、欠かせない技術のひとつが「メカニカルハイビート36000」です。高振動が生み出す安定した高精度と、それを実用レベルにまで引き上げる高度な技術は、現代のグランドセイコーのウォッチメイキングの下地となっています。
この記事では、グランドセイコーの「メカニカルハイビート36000」について、その技術を搭載した代表的な9Sメカニカルムーブメントや、注目のハイビートモデル5選をご紹介します。
グランドセイコー「メカニカルハイビート36000」とは? – 10振動がもたらす安定した高精度
機械式時計の正確性は、心臓部である「テンプ」の振動数によって大きく左右されます。例えば、一般的な機械式時計のテンプは、1秒間に4〜8振動を採用しており、その振動数が大きいほど、安定した1秒が生み出されます。

その点で言うと、グランドセイコーの「メカニカルハイビート36000」は1秒間に10振動(毎時36,000振動)という高振動を採用しており、正確かつ、安定した計時を大きな魅力としています。
当然、ハイビートにも、部品の摩耗の早さやパワーリザーブの短縮といったデメリットが挙げられますが、グランドセイコーは、先端技術を活用することで、これのカバーに成功しています。
グランドセイコーを支えるメカニカルハイビート36000ムーブメントたち
グランドセイコーの「ハイビート36000モデル」を駆動する、代表的なムーブメントを4つご紹介します。
キャリバー9S85:現代ハイビート36000のスタンダード

現代グランドセイコーの「メカニカルハイビート36000」の基幹キャリバーとして、多くのモデルに搭載されているのが「キャリバー9S85」です。毎時36,000振動という高振動を実現するため、部品製造に半導体製造技術を応用した「MEMS(メムス)」技術を採用。ひげぜんまい、がんぎ車、アンクルといった主要部品の精度を高め、軽量化することで、エネルギー効率や耐久性を向上させています。約55時間のパワーリザーブを持ち、平均日差+5秒~-3秒(静的精度)という高い精度基準をクリアしています。
キャリバー9S86:GMT機能を備えた高精度

「キャリバー9S85」をベースに、第二のタイムゾーンを表示するGMT機能を追加したのが「キャリバー9S86」です。通常の時分針、秒針に加え、24時間で一周するGMT針を備えています。特筆すべきは、時計を止めずに時針だけを1時間単位で前後に調整できる「カレンダー連動時差修正機能」。これにより、時刻の精度を損なうことなく、容易にローカルタイムに合わせることが可能です。パワーリザーブは約55時間を備えており、精度基準は9S85と同様です。
キャリバー9SA5:次世代を切り拓く革新ムーブメント

2020年に発表された「キャリバー9SA5」は、グランドセイコーの機械式時計製造の歴史における、ひとつのターニングポイントと言えるでしょう。高効率な独自開発の「デュアルインパルス脱進機」と、安定した精度と耐衝撃性を実現する「グランドセイコーフリースプラング」という二つの新機構を採用。さらに、「ツインバレル(二つの香箱)」を搭載することで、毎時36,000振動のハイビートでありながら、約80時間という驚異的なパワーリザーブを実現しています。加えて、主要な輪列を水平に配置する「水平輪列構造」により、従来(9S8系)よりも15%の薄型化も達成。精度、持続時間、そして外観の美しさ、装着感の向上を、高次元で実現した、何とも画期的なムーブメントです。
キャリバー9SA4:スリムに進化した手巻ハイビート36000

「キャリバー9SA4」は前述のキャリバー9SA5をベースに、自動巻機構を取り除いてスリム化を実現した手巻式「メカニカルハイビート36000」ムーブメントです。毎時36,000振動、デュアルインパルス脱進機、ツインバレルといった9SA5の主要な革新技術は継承しつつ、薄型化を追求。パワーリザーブインジケーターをムーブメントの裏側に配置するなど、エレガントなドレスウォッチへの搭載を想定した設計となっています。約80時間のロングパワーリザーブ、平均日差+5秒~-3秒(静的精度)の高い精度などがその魅力に数えられますが、巻き心地を追求した設計も特筆すべきポイントとなっています。。
注目のメカニカルハイビート36000搭載モデル5選
ここからは、以上の高精度な「メカニカルハイビート36000」ムーブメントを搭載した魅力的な現行モデルを5つ、それぞれの個性を踏まえながらご紹介します。
SBGH341

SBGH341は、ヘリテージコレクションに属するモデル。1967年に発売されたグランドセイコー初の自動巻メカニカルモデル、「62GS」のデザインを現代的に解釈したタイムピースです。このモデルのダイアルでは、桜の花を雪が覆い隠す「桜隠し」と呼ばれる珍しい現象が、繊細な型打ち模様と柔らかなピンク色で表現されました。
ムーブメントには、毎秒10振動のハイビートムーブメント「キャリバー9S85」が搭載されており、精度のばらつきを抑え、より安定した高精度を実現しています。ケース径は38mmとコンパクトな仕上がりで、加えて通常のチタンよりも傷つきにくく、白く美しいブライトチタンが採用されています。
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SBGH347

SBGH347は、同じくヘリテージコレクションに属する1本です。グランドセイコースタジオ 雫石から望む岩手山で厳冬期に見られる、「氷瀑」からその着想を得ています。この情景は、滝から流れる水が氷点下でゆっくりと時間をかけて凍りついていく自然現象であり、本作のアイスブルーのダイアルでは、そのダイナミックさと繊細さが両立されました。
ムーブメントには、毎秒10振動のハイビートムーブメント「キャリバー9S85」が搭載され、安定した精度を実現しています。ケース径は37㎜で、ケースには世界最高レベルの耐食性を備えたステンレススチール素材「エバーブリリアントスチール」が採用されています。
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SBGH351

SBGH351は、24節気を表現する人気シリーズの1種。二十四節気の「立夏」をダイアルで表現したモデルです。春が過ぎ去り、太陽の日差しが爽やかな初夏の頃の、爽やかな風「薫風」から着想を得ており、鮮やかなグリーンダイアルがその最大の特徴と言えます。
ケースデザインは、1967年に発売されたグランドセイコー史上初の自動巻機械式モデル「62GS」を現代的にアレンジしたものを採用。ムーブメントには、「グランドセイコースタジオ 雫石」で組み立てられた10振動のメカニカル・キャリバー9S85が搭載されています。ケースサイズは横40.0mm、縦47.0mm、厚さ12.9mmで、ケースとブレスレットには優れた耐食性を誇るエバーブリリアントスチールが使用されています。
SBGJ249

SBGJ249は、エレガンスコレクションに属するモデルで、日本の四季がみせる豊かな表情をダイアルに表現したGMTウオッチです。そのテーマは、二十四節気の「小暑」。梅雨明け後の本格的に夏が始まる頃に吹く、「白南風(しらはえ)」によって起こる絶え間ないさざ波のイメージがダイアルデザインに落とし込まれています。
そして、この「さざ波」のようなダイアルパターンと、10振動のハイビートムーブメントが生み出す力強い秒針の動きが調和しています。ムーブメントはメカニカル 自動巻(手巻つき)の9S86を搭載しており、24時針によるデュアルタイム表示機能とカレンダー連動時差修正機能が備わっています。ケースサイズは横 39.5mm 縦 46.9mm 厚さ 14.1mmで、ステンレススチール製ケースを採用しています。
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SLGH017

SLGH017は、エボリューション9 コレクションに属する1本で、夜闇に浮かび上がる白樺林にインスパイアされたブラックダイアルを特徴としています。このモデルは、同じく白樺林をモチーフとしたSLGH005と、同じデザインコード、ムーブメントを備えつつも、このブラックカラーと、ブライトチタンケースを採用することで、また違った精悍な印象を獲得しています。
搭載しているメカニカルキャリバー9SA5は、ツインバレルによって従来の約2倍の高トルクを確保しながらも、デュアルインパルス脱進機との連動によって80時間の連続駆動を実現した、ハイビートムーブメントです。重心を落とした設計と、ブライトチタンの組み合わせは、良好な着用感が期待できるでしょう。
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まとめ
当記事では、グランドセイコーの「メカニカルハイビート36000」について、主力ムーブメントや、おすすめの現行モデルを紹介いたしました。今やグランドセイコーの機械式腕時計におけるスタンダードとなりつつあるハイビート仕様。クロノグラフ機構を採用した「キャリバー9SC5」も登場しており、今後の更なる発展が気になるところです。
この記事の監修

- 資格:日本時計輸入協会認定 CWC ウォッチコーディネーター
担当ブランド:Grand Seiko、NORQAIN
腕時計販売店ハラダのオンライン担当。
腕時計の撮影、オンライン上でのマーケティング全般を担当。
最新のトレンドからクラシックなモデルまで、幅広い腕時計の情報を提供し、特に日本の腕時計ブランドであるグランドセイコーの魅力を発信することに注力。グランドセイコーの精密な技術と美しいデザインについて詳しく紹介し、時計の選び方や魅力を伝える事に生きがいを感じている。