2024年春のグランドセイコーの新作として、桜をモチーフとした2種の機械式モデル「SBGH341」、「SBGH343」が登場しました。いずれのモデルもそのダイアルで桜の儚さ、そして芽吹きを表現しており、淡いグリーンとピンクの色彩は新しい春の訪れを予感させます。
当記事では、この2024年新作モデル「SBGH341」と「SBGH343」について詳しくレビューいたします。また、グランドセイコーでは比較的珍しい、グリーン、ピンクダイアルモデルについても合わせてご紹介いたしますので、ぜひモデル選びの参考にしてみてください。
桜を落とし込んだ62GSデザインモデル
2種の新作モデルでは、桜が象徴する儚さ、芽吹きの両方がダイアルで表現されています。さらに、それを包み込むケースに関しては、グランドセイコー往年の名機をインスパイアしており、実用性、美観が両立されました。
ひとつずつ細部を確認していきましょう。
ピンクで桜の儚さ、グリーンでその芽吹きを表現
新作の2モデルは桜にまつわる春の情景をモチーフとしており、淡い色彩のダイアルでそれが表現されました。
SBGH341では「桜隠し」をイメージ。桜の時期に雪が降り、花びらを覆い隠す情景が淡いパステルピンクで表現されています。この桜と雪が織りなす桜隠しは、グランドセイコーの機械式腕時計の製造地、「グランドセイコースタジオ 雫石」が位置する東北地方で春の始まりに見られる美しい風景です。
そのダイアルは非常に薄いピンクに彩られており、雪から透けて見えるような桜を思わせます。
一方、SBGH343では、24節気のひとつ、春の「清明」の頃に芽吹く桜の若葉がモチーフとなっています。この頃の桜は、花びらと若葉が共存する「桜若葉」の時期であり、ライトグリーンのダイアルでその瑞々しさが表現されました。
いずれのダイアルもただその色に染めるのではなく、ランダムかつ有機的な型打ち模様を施すことで、美しい季節の移り変わりを切り取っています。その奥深い表情は、見るたびに新しい発見があるでしょう。
アクセントも無いシンプルなフェイス
ダイアルを引き立てるためか、本作の文字盤にはアクセントカラーとなるものがありません。ブルースチールの秒針も使われておらず、ダイアルカラーだけに注目できるようになっています。魅力的なパステルカラーダイアルの2モデルですが、シンプルイズベストの精神が息づいているのも感じられるでしょう。
なお、針・インデックスは従来のグランドセイコーと同様に多角カットのものを採用しており、夜光無しでも高い視認性を誇ります。これら表示部の仕上げにもしっかりと手間とコストがかけられており、機能美が光っています。
ケースフォルムは62GSがベース
各モデルのケースフォルムは、グランドセイコーの名機のひとつ、「62GS」がベースとなっています。62GSは、グランドセイコー初となる自動巻機械式モデルとして、1967年に登場したモデル。グランドセイコーのブランド哲学である「実用性の進化」を体現するマイルストーンです。
本作では、その特徴を継承しつつ、現代的にアレンジしたケースフォルムが採用されました。あえてベゼルを廃し、ボックス型のサファイアガラスを使用した構造は、桜モチーフの文字盤を広々と鑑賞できます。
さらに、「ザラツ研磨」によって実現したシャープな多面体からなるケースは、同じくマイルストーンである44GSと異なり、エッジの効いた一面も備えています。
軽やかかつ耐傷性に優れるブライトチタン製
各ケースにはブライトチタンが使用されており、特有の輝きとともに、軽やかさ、タフネスが備わりました。実用に向けた腕時計にとってチタンは理想的な素材のひとつであり、本作にもその特徴がしっかりともたらされています。
もちろん、ブレスレットもブライトチタン製です。本来チタンは加工が難しい素材ですが、この2モデルでは、ブレスレットに至るまで歪みのない表面仕上げが施されているのがわかります。
SBGH341、343のサイズ感、厚み、重さは?
2モデルのサイズ感、重さ、厚みは共通しています。直径は38mmで若干コンパクトな印象。厚みも13mmを下回っており、日本人の手首には良く馴染むでしょう。
重さも、ブライトチタンの採用によって97gという軽やかさを実現しています。ダイアルカラーがTPOに反さないのであれば、ビジネスも含めたオールシーンで活躍する時計となってくれそうです。
要所を押さえた機能面
ダイアルが特徴的な本作ですが、その機能性は比較的スタンダードな印象です。しかし、要所はしっかりと押さえられているため、普段使い用として十分な機能性が備わっています。
ハイビートメカニカルムーブメント「Cal.9S85」を搭載
ムーブメントには、毎秒10振動のハイビートメカニカルムーブメントを搭載しています。パワーリザーブは約55時間と、GSの他モデルに比べて控えめですが、平均日差±5秒〜-3秒という安定した高精度を誇ります。
裏ぶたはシースルースクリューバックが採用されており、背面の丹念な仕上げと、ハイビートが生み出す心地よい鼓動を楽しめます。
日常使いには十分な防水性
いずれのモデルもねじロック式リュウズを採用し、10気圧防水を備えています。日常生活における水濡れ程度であれば問題なく使用できるでしょう。また、スペック上はスキンダイビング程度であれば着用することができます。
しかしながら、スポーツモデルではないため、アクティブシーンでは手首から外すことをお勧めいたします。
グランドセイコーのピンク、グリーンダイアルモデル
ピンク、グリーンダイアルは、グランドセイコーでは比較的珍しいカラーリングですが、他にもいくつかのモデルが24節気コレクションやスポーツコレクションから登場しています。ここでは、ピンクダイアルモデル「SBGA443」と、グリーンダイアルモデル「SBGH271」、「SBGE295」をご紹介します。
「花筏(はないかだ)」をモチーフとしたスプリングドライブモデル
二十四節気の一つ「春分」が過ぎて、風に舞い散った桜の花びらが川の水面を覆う「花筏(はないかだ)」をモチーフとしたモデルです。
ランダムに塗料を塗ったような有機的パターンが刻まれており、こちらはSBGH341に比べ、より表情豊かな印象。スプリングドライブを搭載しており、極めて正確な運針がダイアルの上を滑るように進みます。
初夏に吹く心地よい風をイメージ「SBGH271」
24節気のひとつ「立夏」。太陽の日差しが爽やかな初夏に、豊かな緑あふれる大地に吹く風を「薫風(くんぷう)」と呼びます。本作はそれをモチーフとしたグリーンダイアルを採用することで、爽やかな表情が演出されています。
また、ゴールドの針、インデックスも夏の日差しをイメージさせる意匠で、文字盤全体に豊かな自然が垣間見ることができます。なお、ムーブメントはSBGH341、343と同じキャリバー9S85を搭載しています。
穂高連峰のダイナミックな山肌を表現「SBGE295」
スプリングドライブが生まれる「信州 時の匠工房」近くには、穂高連峰のダイナミックな山岳地帯が広がります。
本作では、グリーンの有機的なダイアルで穂高の短い夏の情景を表現。さらに、緑白のツートンカラーのGMTベゼルを備えたスポーツモデルに仕上がっています。24節気コレクションではありませんが、豊かな自然を表現したモデルとして押さえておきたい一本です。
グランドセイコーのアフターサービス
グランドセイコーは、ユーザーに腕時計を永く愛用してもらうため、充実したアフターサービスを提供しています。
保証に関しては、購入日より5年間の保証期間が付属します。
保証期間内で、取扱説明書に従った正常な使用状態で生じた不具合については、無料で修理や調整がサポートしてもらえるので安心です。
また、細かな傷を無くすライトポリッシュや、大きな傷・凹みにも対応できる外装リペアポリッシュも用意されているため、長い年月の間、腕時計を愛用することができるでしょう。
グランドセイコー 9Sメカニカル
SBGH341・SBGH343の値段・スペック
外装
キャリバーNo. | 9S85 |
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駆動方式 | メカニカル 自動巻(手巻つき) |
駆動時間 | 最大巻上時約55時間持続 |
石数 | 37石 |
精度 | 平均日差+5秒~-3秒(静的精度) 日差+8~-1秒(携帯精度) |
防水 | 日常生活用強化防水(10気圧防水) |
重さ | 98g |
厚み | 12.9mm |
ケースサイズ | 38mm |
ケース素材 | ブライトチタン |
裏ぶた | シースルースクリューバック |
ガラス素材 | ボックス型サファイア |
コーティング | 内面無反射コーティング |
中留 | ワンプッシュ三つ折れ方式 |
腕周り長さ(最長) | 197mm |