2023年のグランドセイコーのビッグニュースとして、ブランド史上初となる機械式クロノグラフモデル「SLGC001」が登場しました。
「テンタグラフ」と呼ばれる新たなムーブメントを搭載する本作は、グランドセイコーの先端時計技術と新デザインコードが存分に反映された、ブランドの革新と伝統の結晶と呼ぶべきモデルです。
当記事ではこの見どころ満載のフラグシップモデルについて、そのデザインや、ムーブメントに秘められた魅力を徹底解説いたします。
グランドセイコーの新たなる1手「テンタグラフ」
これまでのグランドセイコーのクロノグラフモデルといえば、スプリングドライブモデルが主流となっていました。しかし2023年、ついに機械式クロノグラフモデル「SLGC001」が登場しました。
この新たな一手に対し、グランドセイコーは機械式クロノグラフムーブメントを新たに開発。その特徴である『TEN beat(10振動)』、『Three days(3日間持続)』、『Automatic(自動巻)』、『ChronoGRAPH(クロノグラフ)』の名前をもじり、TENTAGRAPH(テンタグラフ)と名付けています。
ここではまず、「テンタグラフ」を搭載したSLGC001のデザイン的な特徴をご紹介いたします。
品よくまとめられたウォッチフェイス
新たな挑戦となった本作は、そのフェイスデザインも全く新しいものとなっています。ベースには次世代のデザインコードであるエボリューション9スタイルを採用。スポーティに再解釈されたダイアルでは、3つのサブダイアルとクロノグラフゆえの情報量の多さが品良くまとめられています。
また、全体的なデザインも、派手すぎず、地味すぎないギリギリのラインをついており、プライベート、ビジネス問わず合わせられるクロノグラフモデルとなっています。
新開発ムーブメントの性能を100%発揮できるこのデザイン性も、グランドセイコーの革新を体現する要素と言えるでしょう。
ブランドカラーに染まる岩手山ダイアル
ブランドカラーに近いブルーで彩られたダイアルには、「岩手山パターン」と呼ばれる精密な型打ちが刻まれました。
機械式ムーブメントが生み出される「グランドセイコースタジオ 雫石」近くの岩手山の山肌を再現した文字盤は、落ち着いた色合いの本作に象徴的な個性を与えています。
またダイアルでは、素早く確実な判読を可能にするためサブダイアルを一段下げた2重構造を採用。情報が中央に密集しないようレイアウトに気を払いながらも、カレンダーを4、5時の間に配置することで12ヶ所のインデックス配置が行われています。
また、サブダイアルの針は可能な限り文字盤に近づけることでさまざまな角度からの判読を可能にしており、インデックスとの距離もギリギリまで詰めることで視認性を向上。
この個性と視認性を両立した文字盤は、エボリューション9スタイルひいてはグランドセイコーの矜持が表れた、極めてアイコニックな要素のひとつと呼べるでしょう。
視認性の高いインデックス、針
針、インデックスには、従来のエボリューション9スタイルと同型のものを採用しています。多角カットを導入し、光の反射で視認性を確保しつつも、短針と12時位置のインデックスのみを太くすることで個性的な一面が作り出されました。
フランジには1秒を5等分したミニッツトラックが記されており、計測機器の側面を持つハイビートモデルであることが強調されています。
インデックスと針の要所にはルミブライト(夜光)が塗布されており、スポーツモデルらしい実用性へのアプローチも見られます。
高精度を守る軽やかかつタフな外装
本作のケースには、グランドセイコー独自のチタン素材であるブライトチタンが採用されています。軽やかで耐アレルギー性、耐傷性に優れるこの素材によって、本作はアクティブシーンにふさわしいタフネスと取り回しの良さを獲得しています。
ブレスレットも含めた全体的な表面仕上げはエボリューション9スタイルに準拠。ヘアラインを中心に、各所にポリッシュ仕上げを施すことで、メリハリのついた力強いビジュアルを備えています。
ケースに取り付けられたベゼルについては、タキメーターが刻まれたスポーツ仕様が特徴。現代的なセラミックスを採用しており、ガラスを守りつつベゼル自体も傷に強い理想的なものとなっています。
またこのケースでは、ムーブメントも含めた重心がケース中心より下になるよう設計されており、腕に吸い付くような着用感が備わっています。この着用感はエボリューション9スタイル独自の魅力であり、アクティブな場面でも安定して着用できます。
ノンテーパードタイプの幅広ブレスレット
ブレスレットについてもエボリューション9スタイルに準拠しており、比較的幅広かつ、バックルまで太さがそこまで変わらないノンテーパードタイプとなっています。
スポーツモデルにとって、腕をがっちりとホールドする幅広ブレスレットはまさに理想的。長時間の着用でも疲れにくい、非常に快適な着用感が実現されました。
初の機械式クロノグラフ「テンタグラフ」
ブランド史上初となった機械式クロノグラフムーブメント「キャリバー9SC5」は、あの白樺モデル「SLGH005」にも搭載されていた「キャリバー9SA5」がベースとなっています。
キャリバー9SA5といえば、80時間のパワーリザーブと、10振動のハイビート、そして薄型サイズを兼ね備えた次世代ムーブメントです。
キャリバー9SA5は、上記の3点をはじめ、多くの先端技術を採用しており、グランドセイコーの中でも一部モデルにのみ載せられる特別なムーブメントとなっています。
テンタグラフと呼ばれる「キャリバー9SC5」では、この次世代キャリバーが持つ卓越した性能に、グランドセイコーおよびセイコーが培ってきたクロノグラフの技術が融合。操作性、信頼性が極めて高い革新的なムーブメントとなっています。以下でひとつずつその特長を確認していきましょう。
10振動による正確かつ安定した計測が可能
クロノグラフ機能は主時計と同じ振動数になり、振動数によって変わる特性がそのままストップウォッチ機能に引き継がれます。そのため10振動のクロノグラフモデルである本機では、日差+5秒~-3秒の高精度と、ハイビートモデルゆえの安定した運針で計測を行えます。
計測機器としての側面が強調されたクロノグラフモデルにおいて、この性能はまさに理想的。細かくビートを刻むように進む秒針からは、何度もクロノグラフの操作をしたくなるような魅力が感じられるでしょう。
針飛びが起こりにくい「垂直クラッチ方式」
主時計と同じ動力源を持つクロノグラフ機構は、スタート時に動いている歯車と止まっているクロノグラフ用の歯車が噛み合うことで、計測が開始されます。この時、クロノグラフ針がぶれてしまい、正常に計測をスタートできないことがあります。
これは「針飛び」と呼ばれる現象で、それぞれの歯車が水平に配置される水平クラッチ方式のクロノグラフモデルでしばしば見られるものとなっています。
その点、キャリバー9SC5には「垂直クラッチ方式」が採用されています。この機構は、動いている主時計の歯車と、クロノグラフ用の歯車が垂直に接触する仕組みになっており、針飛びを可能な限り抑えられるようになっています。
一方で、垂直クラッチ方式は水平クラッチ方式に比べて腕時計が厚くなるデメリットがありますが、本機は薄型ムーブメントであるキャリバー9SA5がベースになっているため、腕時計自体の厚みも平均的に抑えられています。
高品質の証「ピラーホイール(コラムホイール)方式」を採用
本作のクロノグラフ(ストップウォッチ)機能は、高品質なクロノグラフモデルにのみ採用されるピラーホイール式を採用しています。そのメリットは、プッシュボタンを押す力が機能に影響しにくいこと。軽い操作感で確実なスタート・ストップを行えます。
また、この機構は内部部品に加わるトルクが分散されるため、故障しにくいこともメリットとなります。
ただし、このピラーホイールの製造には高度な技術が必要となるため、高品質なクロノグラフモデルにしか搭載できない点がデメリットとなっています。
世界最長となる72時間のパワーリザーブ
キャリバー9SA5と同様にゼンマイを収める香箱を2つ備えた本機は、安定したトルクの供給と歯車への負担の軽減に成功しています。その結果、ハイビートムーブメントのネックをものともしない、ロングパワーリザーブと高いメンテナンス性を獲得。10振動のメカニカルクロノグラフムーブメントとしては世界最長となる、約72時間ものパワーリザーブを実現しています。
確実に3つの針をリセットする「三叉ハンマー」
計測中にストップした各種クロノグラフ針は、4時位置のボタン操作で一瞬で帰零します。このリセットを確実なものとしているのが「三叉ハンマー」と呼ばれる機構です。これも、セイコー時代からクロノグラフモデルを多く手がけてきた、ブランドの技術力があってこそのものと言えるでしょう。
SLGC001の機能・防水性・耐久性
SLGC001にはねじ込み式リュウズが備わっており、日常生活用強化防水(10気圧)が備わっています。そのため、日常生活で使用する分には水濡れの心配はそこまで必要ありません。ただし、マリンスポーツや川でのアクティビティでは外した方が無難です。
さらに、耐磁性に加えて、ブライトチタンによる耐久性、耐アレルギー性も備えているため、普段使いにも適したクロノグラフモデルと言えるでしょう。
機能面では、30分計と12時間計のクロノグラフ機能に加え、時速を計測できるタキメーターを搭載。カレンダー機能も備えています。
SLGC001のサイズ感、重さ
SLGC001は横43.2mm、縦51.5mmと、スポーツモデルらしいケースサイズを備えています。大きすぎないギリギリのサイズ感であるため、ジャケットスタイルにもスタイリッシュに当てはめることができます。
このサイズ感と多彩な機能を搭載しながらも、ブライトチタンの採用によって重さは154gにまで抑えられています。アクティブなビジネスマンにもおすすめできるモデルと言えるでしょう。
SLGC001を動画で確認する
グランドセイコー 9Sメカニカル
SLGC001の値段・スペック
ムーブメント
発売年月 | 2023年6月 |
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キャリバーNo | 9SC5 |
駆動方式 | メカニカル 自動巻(手巻つき) |
駆動時間 | 最大巻上時約72時間(約3日間)持続 |
精度 | 静的精度:平均日差+5秒〜-3秒 |
外観
外装 | ブライトチタンケース 一部セラミックス |
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ガラス材質 | ボックス型サファイア |
コーティング | 内面無反射コーティング |
ケースサイズ | 横 43.2mm 縦 51.5mm 厚さ 15.3mm |
腕周り長さ(最長) | 187mm |
バンド幅 | 23mm |
ルミブライト | あり(針・インデックス) |
中留 | ワンプッシュ三つ折れ方式 |
機能
防水 | 日常生活用強化防水(10気圧) |
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耐磁 | あり |
重量 | 154.0g |
その他 | ・シースルーバック ・ねじロック式りゅうず ・カレンダー(日付)機能つき ・石数 60石 ・タキメーターつき ・耐メタルアレルギー ・シースルースクリューバック ・ストップウオッチ機能(30分計・12時間計) |
グランドセイコーのアフターサービス
国内最高峰の品質を誇るグランドセイコーは、お買い上げいただいた後のケアもまた業界最高水準です。ここでは、グランドセイコーだけのさまざまなアフターサービスについてご紹介します。グランドセイコーサロンである当店でご購入いただけた場合の特典もございますので、ぜひ合わせてご検討くださいませ。
グランドセイコーの無料保証期間と内容
SBG001には、ご購入後5年間の無料保証が付いており、万が一の際にも安心して修理依頼ができます。保証対象は、時計本体(ムーブメント、ケース)およびメタルブレスレットで、説明書通りの使用中に生じた不具合を無料で修理・調整してもらえます。
ただし、保証期間内であっても、天災地変による故障または損傷、公式オーバーホールサービスには対応していませんので注意が必要です。もちろん、その際には有料ではありますが、修理は問題なく依頼できます。
グランドセイコーのコンプリートサービス
グランドセイコーには「コンプリートサービス」と呼ばれる、内装修理・オーバーホールとライトポリッシュを行うサービスがあります。このサービスもまた、グランドセイコーが多大な支持を得ている理由のひとつと言えます。
コンプリートサービスでは、専門の修理技能士が純正部品で的確な修理対応を行います。さらに、販売から修理に至る情報を一元管理しているため、迅速かつ適切な対応を可能としているのです。
SLGC001のような追加機構を持つモデルであれば、なおのこと、定期的な利用を心がけたいというものでしょう。
なお、サロンである当店でグランドセイコーをご購入いただいた場合、通常の保証書とは別にメンテナンスサポートカードをお渡ししております。
こちらを公式メンテナンスのご依頼の際にご提示いただければ、匠の技術によるメンテナンスサービスを通常よりお手頃な価格でご利用いただけるようになります。
グランドセイコー購入者限定の「GS9 Club」
グランドセイコーを購入した後の楽しみのひとつが、ファンクラブである「GS9 Club」の存在です。こちらはマスターショップ以上のグランドセイコー正規販売店でしか入会できないため、特別感のある会員サービスと言えます。
「GS9 Club」の入会特典には、以下のようなものがあります。
- 特別なイベントへのご招待
- 特別なキャンペーンへのご招待
- マイページ(ウォッチ登録)機能
「グランドセイコースタジオ 雫石」や「信州 時の匠工房」を見学するファクトリーツアーに参加できるのは、大きな特典のひとつです。
時計愛好家たちにとって、名匠たちが腕時計を手がける姿はこれ以上無い醍醐味となるでしょう。
まとめ
当記事では、グランドセイコー史上初となる機械式クロノグラフモデル「SLGC001」とそのムーブメントについて、詳しく解説いたしました。
9Sメカニカルの可能性を大きく広げた本作の登場によって、今後もさらなる機械式時計の機能拡張が見込めるというものです。ぜひテンタグラフを一度手に取り、グランドセイコーの革新性と次なるモデルへの期待を感じていただければ幸いです。