
グランドセイコー初の機械式クロノグラフとして登場し、フラグシップの1本として存在感を放つ「テンタグラフ」。その2025年新作モデルとして「SLGC006」が300本のみの限定本数で登場いたしました。
本作はカッパーピンクのダイアルと、18Kローズゴールドで華を添えたケースとを組み合わせることで、岩手山に昇る朝日の色彩を巧みに表現しています。本記事では、その限定デザインと次世代ムーブメント「キャリバー9SC5」を中心に、SLGC006の魅力を詳しく解説します。
雄大な自然の色彩と革新のデザインコードを融合させたクロノグラフ

華やかで力強いルックスをまとったSLGC006は、初代テンタグラフと同様に、「エボリューション9スタイル」を基盤にデザインされています。これにより、グランドセイコーらしい普遍的な魅力を見せつつ、より優れた視認性、着用感を実現したスポーツウォッチに仕上がっています。
朝日を浴びる岩手山を表現
SLGC006のダイアルは、グランドセイコーのアイデンティティの一つである「岩手山パターン」を採用しています。これは、グランドセイコーの機械式腕時計が生まれる「グランドセイコースタジオ 雫石」から望む岩手山の景観を表現したもので、立体的な針やインデックスを際立たせつつ、個性を演出します。

また本作では、このダイアルに、より深く、豊かなテクスチャーを持つパターンが採り入れられました。これは、限定モデルSLGH027に採用されていたものと近しいもので、岩手山の尾根筋や荒々しい地表をいっそう力強く表現しています。

カッパーピンクのテクスチャーダイアル
SLGC006のカラーリングは、淡いカッパーピンクを採用しており、夜明けの光に照らされた、岩手山が見せる色合いを再現しています。また、ダイアルの豊かなパターンとの組み合わせは、朝の光の輝きと、ランダムな稜線によって生まれる陰影を表現しています。

レイアウトされた3つのインダイアルでは、積算計(9時位置の30分計、6時位置の12時間計)にブラウンが、スモールセコンド(3時位置)によりダークなカッパーピンクが配色され、暖色系統でまとめながらも微妙なグラデーションが演出されました。

加えて、針とインデックスにもローズゴールドメッキが施され、多角カットにより光の反射で高い視認性を確保しています。その他、情報量の多さを凝縮したクロノグラフフェイスや、針とインデックスの要所にはルミブライトを施すなど、テンタグラフの特徴は従来モデルからそのまま引き継がれています。
軽やかでタフなブライトチタンケースとローズゴールドの調和

ケース素材には、軽量で耐傷性・耐アレルギー性に優れるブライトチタンを採用。合わせて18Kローズゴールドがリュウズとプッシャー、ベゼルに用いられています。ブライトチタンはチタン特有のグレー調が抑えられた素材であり、ローズゴールドとの組み合わせが美しいコントラストを成しています。

一方で、ベゼルにはブラックセラミックインサートが取り付けられ、タキメータースケールも相まって、腕時計の表情がスポーティに引き締められました。また、ヘアラインを基本にポリッシュを組み合わせたケース仕上げによって、傷が目立ちにくいだけでなく、ザラツ研磨による美しい稜線が際立ちます。

ケースサイズは、直径43.2mm、厚さ15.4mm、縦(ラグからラグ)51.5mmと、大ぶりなサイズ感です。一方で、エボリューション9コレクションのデザインにより重心が低くなるよう設計されているため、手首によく馴染み、優れた装着感を備えています。
なお、裏蓋はサファイアケースバックのねじ込み式(シースルーバック)となっています。
スポーティなブライトチタン製ブレスレット

ブレスレットもケースと同じくブライトチタンが使用されており、主にヘアライン仕上げにポリッシュ仕上げが組み合わされています。こちらはエボリューション9スタイルに則った幅広かつノンテーパードな設計であり、良好な着用感に貢献します。

バックルはワンプッシュ三つ折れ方式で、その中央には18Kローズゴールド製の「GS」メダリオンがあしらわれています。細部までエレガントさの演出にこだわった、特別なテンタグラフモデルと言えるでしょう。
10振動、3日間持続、高精度を誇る「テンタグラフ」ムーブメント
SLGC006には、初代機械式クロノグラフであるSLGC001から共通して採用されている、「キャリバー9SC5 TENTAGRAPH」が搭載されています。その優れた性能について詳しく紹介いたします。
初の機械式クロノグラフ「テンタグラフ」

ブランド史上初となった機械式クロノグラフムーブメント「キャリバー9SC5」は、あの白樺モデル「SLGH005」にも搭載されていた「キャリバー9SA5」がベースとなっています。
キャリバー9SA5といえば、80時間のパワーリザーブと、10振動のハイビート、そして薄型サイズを兼ね備えた次世代ムーブメントです。
キャリバー9SA5は、上記の3点をはじめ、多くの先端技術を採用しており、グランドセイコーの中でも一部モデルにのみ載せられる特別なムーブメントとなっています。
テンタグラフと呼ばれる「キャリバー9SC5」では、この次世代キャリバーが持つ卓越した性能に、グランドセイコーおよびセイコーが培ってきたクロノグラフの技術が融合。操作性、信頼性が極めて高い革新的なムーブメントとなっています。以下でひとつずつその特長を確認していきましょう。
10振動による正確かつ安定した計測が可能
クロノグラフ機能は主時計と同じ振動数になり、振動数によって変わる特性がそのままストップウォッチ機能に引き継がれます。そのため10振動のクロノグラフモデルである本機では、日差+5秒~-3秒の高精度と、ハイビートモデルゆえの安定した運針で計測を行えます。
計測機器としての側面が強調されたクロノグラフモデルにおいて、この性能はまさに理想的。細かくビートを刻むように進む秒針からは、何度もクロノグラフの操作をしたくなるような魅力が感じられるでしょう。
針飛びが起こりにくい「垂直クラッチ方式」
主時計と同じ動力源を持つクロノグラフ機構は、スタート時に動いている歯車と止まっているクロノグラフ用の歯車が噛み合うことで、計測が開始されます。この時、クロノグラフ針がぶれてしまい、正常に計測をスタートできないことがあります。
これは「針飛び」と呼ばれる現象で、それぞれの歯車が水平に配置される水平クラッチ方式のクロノグラフモデルでしばしば見られるものとなっています。

その点、キャリバー9SC5には「垂直クラッチ方式」が採用されています。この機構は、動いている主時計の歯車と、クロノグラフ用の歯車が垂直に接触する仕組みになっており、針飛びを可能な限り抑えられるようになっています。
一方で、垂直クラッチ方式は水平クラッチ方式に比べて腕時計が厚くなるデメリットがありますが、本機は薄型ムーブメントであるキャリバー9SA5がベースになっているため、腕時計自体の厚みも平均的に抑えられています。
高品質の証「ピラーホイール(コラムホイール)方式」を採用

本作のクロノグラフ(ストップウォッチ)機能は、高品質なクロノグラフモデルにのみ採用されるピラーホイール式を採用しています。そのメリットは、プッシュボタンを押す力が機能に影響しにくいこと。軽い操作感で確実なスタート・ストップを行えます。
また、この機構は内部部品に加わるトルクが分散されるため、故障しにくいこともメリットとなります。
ただし、このピラーホイールの製造には高度な技術が必要となるため、高品質なクロノグラフモデルにしか搭載できない点がデメリットとなっています。
世界最長となる72時間のパワーリザーブ

キャリバー9SA5と同様にゼンマイを収める香箱を2つ備えた本機は、安定したトルクの供給と歯車への負担の軽減に成功しています。その結果、ハイビートムーブメントのネックをものともしない、ロングパワーリザーブと高いメンテナンス性を獲得。10振動のメカニカルクロノグラフムーブメントとしては世界最長となる、約72時間ものパワーリザーブを実現しています。
確実に3つの針をリセットする「三叉ハンマー」

計測中にストップした各種クロノグラフ針は、4時位置のボタン操作で一瞬で帰零します。このリセットを確実なものとしているのが「三叉ハンマー」と呼ばれる機構です。これも、セイコー時代からクロノグラフモデルを多く手がけてきた、ブランドの技術力があってこそのものと言えるでしょう。
10気圧防水と高強度素材による日常でのタフネス
SLGC006は、ねじロック式りゅうずを備え、日常生活用強化防水(10気圧/100m防水)を確保しています。10気圧防水以上であれば、日常生活での水濡れの心配は基本的にありません。
またブライトチタンの採用により、耐久性に優れ、総重量は162gに抑えられています。
クロノグラフ、タキメーター、日付表示
本モデルは、時、分、秒、日付に加え、センタークロノグラフ秒針、30分計、12時間計のストップウォッチ機能、そして時速を計測するタキメーターを備えています。
腕時計のサイズ、厚みは?

SLGC006のケースサイズは、横43.2mm、厚さ15.4mmです。垂直クラッチ方式のクロノグラフウォッチとしては平均的な厚みですが、43.2mmという数字も相まって、大ぶりに感じるかもしれません。
しかしながら、ケース側面からラグ(ベルト接続部)にかけて手首に沿うよう絶妙にカーブしており、驚くほどの一体感をもたらします。見た目の重厚さとは裏腹に、日常のデスクワークから週末のアクティブなシーンまで、ストレスなく腕元を彩ってくれるでしょう。

どんな人にお勧め?
SLGC006は、カッパーピンクのダイアルにローズゴールドの要素を組み合わせた暖色系のデザインが非常に個性的で、日本の自然美と最先端の時計技術を結集した特別なクロノグラフを求める方に最適なモデルです。

技術面では、高精度(日差+5秒~-3秒)かつ世界最長クラスの72時間パワーリザーブを持つハイビートムーブメント「9SC5」を搭載しているため、機械式時計の革新的な性能や、計測機器としての機能性を追求する時計愛好家も、ロマンを感じられるはずです。
類似モデル紹介
テンタグラフムーブメントを搭載したグランドセイコーは、SLGC006の他にも、いくつかのモデルがラインナップされています。
エボリューション9コレクション「SLGC001」

2023年に発表された初代テンタグラフウオッチで、ブランドカラーに近いネイビーブルーの岩手山パターンダイアルが特徴です。SLGC006は、本作のカラーバリエーションにあたります。
エボリューション9コレクション「SLGC007」

同じくSLGC001をベースとした1本。アイスブルーダイアルを採用し、厳冬の岩手山をイメージしています。また、ブラックのインダイアルが配されたことで、王道的なパンダ調のフェイスを持ちます。
スポーツコレクション「SLGC009(ライオンテンタグラフ)」

同じくキャリバー9SC5を搭載するスポーツコレクションの1本。獅子をモチーフとした、力強くソリッドなケースデザインに加え、たなびくたてがみを思わせるブラウンカラーを特徴としています。
グランドセイコーのアフターサービス
グランドセイコーは、購入後5年間の無料保証を提供しており、ムーブメントやケース、メタルブレスレットなどに対し、説明書通りの使用中に生じた不具合を無料でサポートしてもらえます。

さらに、内装修理やオーバーホール、ライトポリッシュを含む「コンプリートサービス」も用意されており、専門の修理技能士による純正部品での修理対応が受けられます。
なお、グランドセイコーサロンであるハラダでは、この公式メンテナンスサービスを優待価格で利用できる「メンテナンスサポートカード」を提供しております。

まとめ
グランドセイコー SLGC006「サンライズ テンタグラフ」は、カッパーピンクのダイアルに力強い岩手山パターンを刻み込み、夜明けの雄大な景色を表現した意欲作です。ムーブメントは革新的な「キャリバー9SC5」を搭載し、技術的にもグランドセイコーの最先端を体現。直径43.2mm、厚さ15.4mmの力強いサイズ感と、世界限定300本という希少性もあり、見逃せない1本と言えるでしょう。
グランドセイコー 9Sメカニカル
SLGC006の値段・スペック
ムーブメント
| 発売年月 | 2025年10月 |
|---|---|
| キャリバーNo | 9SC5 |
| 駆動方式 | メカニカル 自動巻(手巻つき) |
| 駆動時間 | 最大巻上時約72時間(約3日間)持続 |
| 精度 | 静的精度:平均日差+5秒〜-3秒 |
外観
| 外装 | ブライトチタンケース (一部セラミックスと18Kピンクゴールド) |
|---|---|
| 裏ぶた | ブライトチタンとサファイアガラス |
| ガラス材質 | ボックス型サファイア |
| コーティング | 内面無反射コーティング |
| ケースサイズ | 横 43.2mm 縦 51.5mm 厚さ 15.4mm |
| 腕周り長さ(最長) | 200mm |
| バンド幅 | 23mm |
| ルミブライト | あり(針・インデックス) |
| 中留 | ワンプッシュ三つ折れ方式 |
機能
| 防水 | 日常生活用強化防水(10気圧) |
|---|---|
| 耐磁 | あり |
| 重量 | 162.0g |
| その他 | ・シースルースクリューバック ・裏ぶた「LIMITED EDITION」表記 ・裏ぶたシリアルナンバー入り ・中留 一部18Kピンクゴールド ・ねじロック式りゅうず ・カレンダー(日付)機能つき ・石数 60石 ・タキメーターつき ・耐メタルアレルギー ・ストップウオッチ機能(30分計・12時間計) |
この記事の監修

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資格:日本時計輸入協会認定 CWC ウォッチコーディネーター
担当ブランド:Grand Seiko、NORQAIN
腕時計販売店ハラダのオンライン担当。
腕時計の撮影、オンライン上でのマーケティング全般を担当。
最新のトレンドからクラシックなモデルまで、幅広い腕時計の情報を提供し、特に日本の腕時計ブランドであるグランドセイコーの魅力を発信することに注力。グランドセイコーの精密な技術と美しいデザインについて詳しく紹介し、時計の選び方や魅力を伝える事に生きがいを感じている。



