
職人の手作業を駆使し、日本のものづくり精神が息づく腕時計を打ち出してきた「ミナセ」。そのフラグシップにあたる「セブンウィンドウズ」は、日本の伝統技法である漆や蒔絵を取り入れたシリーズ「ジャパンアートコレクション」から、いくつかのモデルをリリースしています。本記事では、そのひとつである“吉野桜”モデル「VM15-LBKMA3-SSD」をレビューいたします。
ミナセとは?秋田から世界へ発信する日本の腕時計ブランド

ミナセは、2005年に精密部品メーカー「協和精工」によって設立された日本の腕時計ブランドです。秋田県皆瀬に本拠を構える本ブランドは、時計のケース製造メーカーとしても知られ、その優れた技術によって生み出された“段付きドリル”は、腕時計製造になくてはならない物となっています。
ミナセは、このドリルをブランドロゴに冠し、「100年後も語り継がれる時計」をコンセプトに、部品製造から組み立てまで、一貫して社内で行なっています。
立体美と日本の伝統美が融合「セブンウィンドウズ 漆」
セブンウィンドウズの最大の特徴は、その名の通り7つのサファイアガラス越しに時計の内部構造を覗き見ることができる、他に類を見ないケースデザインにあります。そして、本コレクションでは、そこに漆や蒔絵で彩られたダイアルを合わせることで、立体美と伝統美の融合を果たしています。その魅力について確認していきましょう。
盤上に咲き誇る「吉野桜」の蒔絵ダイアル

VM15-LBKMA3-SSDの真骨頂は、何といってもその文字盤にあります。日本の春を象徴する「吉野桜」をテーマに、漆芸作家 箱瀬淳一 氏の手によって漆と蒔絵で桜の花が緻密に描かれています。
5種類以上の金銀粉や素材を使い分け、音楽隊の行進をイメージして均等に配置された桜は、華やかでありながらも気品に満ちた表情を見せます。職人の手作業から生まれるため、一つとして同じものはなく、まさに「一点物」の芸術品と言えるでしょう。

ダイアルは磨き上げられたインデックスとブランドロゴで囲まれ、その上にシンプルな時分針と秒針が載せられています。蓄光塗料が塗布されており、暗所でも視認に問題はありません。
歪みなき輝きを放つケース。職人技の結晶。

セブンウィンドウズのステンレススティール製ケースは、長方形型のケースの表裏と、サイドの4面に計7つの窓を持つ特別な仕様となっています。これにより、腕時計の内部をあらゆる角度から観賞可能。さらに、インナーケースをアウターケースで覆う「ケースインケース構造」が生み出す立体感を、より隅々まで楽しめるようになっています。

さらに特筆すべきは、世界でも限られたブランドしか採用していない下地処理技術「ザラツ研磨」の採用です。職人の手さぎょうによって生み出されるシャープな稜線は、やわらかな弧を描くとともに、美しい鏡面で飾られています。また、本作の複雑な形状のケースに、凛とした輝きと高級感を添えています。
レザーストラップで上質感が高まる

ストラップには、高級感あふれるクロコダイルレザーを採用。文字盤の芸術性とケースの輝きを引き立て、腕元全体をエレガントに演出します。ミナセといえば、MORE構造を用いた美しいメタルブレスレットが知られていますが、当然レザーストラップから交換することも可能となっています。

留め具には、フォールディングバックルが採用されています。ミナセの段付きドリルのロゴがあしらわれた、オリジナルの仕様です。
信頼性と実用性を両立した機能性
本作では、その芸術的なデザインに目が行きがちですが、要所を押さえた腕時計としての性能も備わっています。信頼性の高い自動巻きムーブメントを搭載するなど日常生活における実用性も十分に考慮されています。
搭載するムーブメント「KT8001」

ミナセの多くのモデルに搭載される自動巻きムーブメントです。安定した精度と実用的なパワーリザーブを備え、日々の時を正確に刻みます。また、シースルーバックから、その駆動や、装飾が施されたローターの回転を見ることができます。
耐久性に過信は注意
VM15-LBKMA3-SSDは5気圧防水を備えています。汗や小雨といった日常の水濡れに対応するスペックですが、もちろん強い水流には向かず、レザーストラップの劣化を早めるため、水濡れするリスクのある場面では手首から外したほうが無難です。
VM15-LBKMA3-SSDのサイズ、厚みは?

VM15-LBKMA3-SSDのケース径は横38mm×縦46.5mm、厚みは14mmです。長方形型のフォルムと立体的な構造により、数字以上の存在感を放ちます。長方形型のケースとして大きすぎることはないため、日本人の腕に馴染みやすいサイズ感と言えるでしょう。
どんな人におすすめ?
・日本のものづくり、伝統工芸を愛する方
・他人とは一線を画す、個性的で芸術性の高い腕時計を求めている方
・製品の背景にあるストーリーや哲学を重視する方
類似モデル紹介

セブンウィンドウズシリーズには、蒔絵モデルの他に、サンレイダイアルを持つモデルも登場しています。カラーバリエーションも豊富で、使用シーンに合わせた選択が可能です。また、金属の板に凹凸を刻んで模様を表現する「電鋳(でんちゅう)」技法を用いた、「雪平(ゆきひら)ダイヤル」モデルも登場済み。蒔絵の華やかさとは対照的に、雪原のような静謐で繊細な美しさが魅力です。
100年後も安心。ミナセならではのアフターサービス
ミナセは「100年後も語り継がれる時計」というブランドの理念を持ち、長年にわたる修理、メンテナンスといったアフターサービスの体制を確立しています。保証期間は2年間で、期間内に発生した自然な不具合や故障を無料でサポートしてもらえます。
まとめ
ミナセのセブンウィンドウズ「吉野桜」VM15-LBKMA3-SSDは、単に時を告げる道具ではありません。それは、秋田の職人たちの情熱と技術、そして漆芸作家が生み出す伝統美が凝縮された、腕に着ける芸術品です。その圧倒的な個性と背景にある物語は、所有する喜びに満ち溢れ、日々の生活に彩りを与えてくれる唯一無二のタイムピースと言えるでしょう。
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