高級腕時計ブランドとして堂々たる地位を確立し、コレクションの完成度と知名度の高さでも知られるオメガ。そんなオメガの魅力は技術面、ブランド面で非常に様々です。当記事ではそんなオメガの逸話や歴史、コレクションの特徴といった魅力を、深掘りしてご紹介いたします。オメガが現在の人気まで上り詰めた、その理由の一端を感じ取っていただけると幸いです。
オメガとは?
スイス高級腕時計ブランドとして長い歴史を誇り、”究極”を意味するその名に恥じないコレクションを多く輩出してきたオメガ。
現地であるスイスはもちろんのこと、日本国内でも高い人気を誇り、豊富なラインナップ展開によって老若男女問わず愛用されているブランドです。腕時計をあまり知らない人でも、オメガという名前だけは知っている方も多いのでは無いでしょうか。
老舗スイスブランド、オメガの歴史
オメガは1848年、時計職人である「ルイ・ブラン」によって創業されました。時計製造が盛んに行われていたラ・ショー・ド・フォンに工房を構えたのが始まりであり、この頃は「オメガ」という名前ではありませんでした。
わずか23歳で工房を立ち上げたルイは、79年まで時計の製造を続け、その優れた時計製造技術をスイス国内に知らしめることになります。その死後は、彼の実子であるポールとセザールに工房が引き継がれ、80年にはラ・ショー・ド・フォンから、現在でも本社が置かれているビエンヌに工房が移転しました。
この移転からオメガの歴史は大きく動きました。85年には、初の量産型キャリバーである「ラブラドール」が誕生、続く92年には世界初のミニッツリピーター搭載の腕時計、そして94年、ついに「Cal.19」と呼ばれるムーブメントが発表されました。
このムーブメントは、高精度に加え、部品の交換が容易、さらに操作性も高いという、当時としてはあまりに画期的なムーブメントでした。
これはまさに偉業と呼ぶべき開発であり、ブラン兄弟によってCal.19は「究極」を意味する「Ω(オメガ)」と名付けられました。現在のムーブメントに「オメガ」という名前が付けられているのは、このCal.19から始まったのです。そして、この成功は瞬く間に世界中に広まることとなり、企業の名前も「オメガウォッチ」に改名されたのでした。
その後もオメガは革新的な時計製造を続け、1900年には時計ブランドとして初めて万博での受賞を達成するなど、高い技術力を証明してきました。 現在でも、多くのスポーツにおけるタイムキーパーを務め、海洋探査における偉業に寄り添うなど、その時計製造技術を研ぎ澄まし続けています。
オメガの魅力とは?
オメガというブランドの魅力は非常に多岐に渡ります。腕時計としての完成度の高さだけでなく、ブランドが誇る逸話や技術面、環境への配慮などの視点からも理解しておくと、腕時計を所持する満足度が高まると言うものです。ここでは、さまざまな視点から5つのポイントに分けて、オメガの魅力を解説いたします。
コーアクシャルとマスタークロノメーター
オメガのムーブメントには、独自の脱進機である「コーアクシャル・エスケープメント」が搭載されています。独立時計師であるジョージ・ダニエルズによって開発されたこの機構は、一般的なスイスレバー脱進機に比べ、大幅にメンテナンス性が高められたものでした。
このメリットは特殊な形状のアンクルと複数層のガンギ車の採用によるもので、摩耗を大きく軽減することで部品交換や注油の頻度を大幅に減少させることに成功しています。さらに、ゼンマイのトルク伝達ロスも少なく、精度の安定化にも繋がっています。
1993年には、オメガがこの技術を取得し、キャリバー1120を基に開発を進め、99年に「デ・ヴィル」で初めてコーアクシャルムーブメントを搭載しました。現在ではこの独自機構にさらなる改良が加えられており、2層から3層へと変更されたガンギ車や、シリコン製パーツの採用などによって、耐久性・耐磁性も突き詰められています。
マスタークロノメーター認定
現在のオメガの腕時計は、ほとんどのモデルがマスタークロノメーターに認定されています。マスタークロノメーター認定では、ムーブメントの性能検査にMETAS(スイス連邦計量・認定局)が参加しており、スイスクロノメーターの試験をパスしたムーブメントに対し、さらに8つの試験が行われます。
これらの試験は、ムーブメントをケースに入れた状態で評価を行う極めて実践的なもの。耐磁性や姿勢差、防水性、精度といった項目で検査が行われ、これをクリアしたものだけがマスタークロノメーター認定を得ることができます。
高い精度に、圧倒的な耐磁性、そしてコーアクシャルによる優れたメンテナンス性を備えるマスタークロノメーター認証の腕時計は、オメガのタイムピースの魅力を大きく高める存在と言えるでしょう。
オリンピック公式タイムキーパー
オメガは1932年のロサンゼルスオリンピックより、公式タイムキーパーを務めています。そして、一瞬が勝敗を分けるスポーツに向けて、計器技術を研ぎ澄ましてきました。例えば、92年のアルベールビル冬季オリンピックでは新たな計測システムを導入し、スピードスケート競技において1000分の1秒単位までの計測を可能としました。
また、2010年のバンクーバーオリンピックでは電子的なスタートシステムを導入し、より公平なスタートも実現しています。
このように、オリンピックでオメガのロゴが刻まれた機器に注目してみると、我々がよく知る腕時計とはまた違った計時技術の進歩が垣間見えるはずです。2012年のロンドンオリンピックではクアンタムタイマーを導入し、ついに1マイクロ秒(百万分の一秒)までの高解像度での測定を可能としました。さらに、フォトフィニッシュカメラやフォトセル技術も導入しており、確実な計測が追求されています。
このオリンピックとの関与は、単なるタイムキーピングにとどまらず、スポーツ技術の進化を進める役割も担っています。世界的な催事であるオリンピックを支える計時技術が、腕時計にも反映されていると考えると、オメガという腕時計を手にする喜びが増すというものでしょう。
NASAの公式装備品への採用
オメガあるいは、そのアイコンコレクションであるスピードマスターについて語るのであれば、NASAとの関係性は切っても切り離せません。
オメガとNASAとの関係の始まりは、1960年代にさかのぼります。NASAは64年に宇宙飛行士用の時計を選定する際、多くのブランドの腕時計を選択肢に挙げました。
その中で、オメガのスピードマスターのみが唯一その基準を満たしており、65年に有人宇宙飛行ミッションでの使用が認められた初めての時計として認定されたという経緯があるのです。これ以来、スピードマスターは「スピードマスタープロフェッショナル」へと名前を変え、「ムーンウォッチ」という名前でも呼ばれるようになりました。
そして、実際に69年のアポロ11号の月面着陸で着用されたスピードマスターは、ニール・アームストロングとバズ・オルドリンが使用したことで世界的な知名度を獲得するに至ります。さらに、アポロ13号のミッション中にトラブルが起こった際には、スピードマスターの正確な計測によって宇宙飛行士たちの命が守られたという逸話も残っています。なんともロマンを感じられるエピソードと言えますね。
海洋への保護と挑戦
オメガは海洋保護に積極的に取り組んでおり、いくつかのプロジェクトや非営利団体とパートナーシップを結んでいます。それを象徴するのが、「シーマスター プラネット オーシャン」コレクションです。ヘリウム脱気栓や極めて高い防水性など、プロダイバーの要求に応える機能性は、海洋探査と保全に寄り添っています。
また、オメガは「ファイブ・ディープス探査」においても重要な役割を果たしました。ファイブ・ディープス探査は、世界の五大洋の最深部への有人潜水を達成することを目的とした歴史的なプロジェクトです。主導する冒険家ヴィクター・ヴェスコヴォは、DSVリミティングファクターという潜水艦を使って、マリアナ海溝のチャレンジャー・ディープの最深部である10,925メートル(約35,843フィート)への到達を成し遂げました。
この探査において、オメガは特別に設計された「シーマスター プラネット オーシャン ウルトラ ディープ プロフェッショナル」を提供。3本の時計が潜水に同行し、ロボティックアームやデータ収集ユニットに取り付けられました。そして、これらの時計は、深海での極限状態にもかかわらず、全て正常に動作し続けて見せたのです。この逸話は、オメガダイバーズの偉業であると同時に、その優れたタフネス、機能性を象徴するものとなっています。
魅力を高めるキャラクター
オメガのウォッチメイキングには、有名かつ魅力的なキャラクターがたびたび登場します。特に人気を集めているのが、映画「007」のジェームズ・ボンドとスヌーピーでしょう。これらのキャラクターはシーマスターやスピードマスターにゆかりがあり、コラボレーションモデルも多く登場しています。
ジェームズ・ボンド
オメガと伝説的スパイ「ジェームズ・ボンド」との関係は、1995年の映画『ゴールデンアイ』から始まりました。衣装デザイナーのリンディ・ヘミングが、ボンドの時計としてオメガの「シーマスター300Mプロフェッショナル」を選んだことがその始まりと言われています。ヘミングは、オメガのスポーティで機能的なデザインが、海軍出身の紳士であるボンドにふさわしいと考えたそうです。
このゴールデンアイ以降、全ての007の映画にオメガの時計は登場しています。そして、プロスナンは、『トゥモロー・ネバー・ダイ』、『ワールド・イズ・ノット・イナフ』、『ダイ・アナザー・デイ』でもシーマスターを着用し、その後を引き継いだダニエル・クレイグも『カジノ・ロワイヤル』、『クアンタム・オブ・ソラス』、『スカイフォール』、『スペクター』、『ノー・タイム・トゥ・ダイ』でオメガの時計を愛用しました。
近年では、コラボモデルも多く登場しており、ダニエル・クレイグが最後にボンドを演じたノー・タイム・トゥ・ダイでは、特別にデザインされた専用モデルも登場しています。シーマスターは映画「007」のファンにとって、単なるダイバーズウォッチウォッチを超えた魅力を持つコレクションとなっているのです。
スヌーピー
世界的に有名な漫画のキャラクターであるスヌーピーは、スピードマスターを象徴するキャラクターのひとつとなっています。 このパートナーシップは、「シルバースヌーピー賞」と呼ばれる賞が大きく関わっています。これは、NASAが宇宙飛行の成功と安全に特別な貢献をした個人や企業に授与する賞です。
アポロ13号のミッション中には、酸素タンクの爆発によって電力が失われるトラブルが発生し、乗組員は完璧なタイミングでエンジンを点火する必要がありました。そこで役立ったのが、クロノグラフウォッチであるスピードマスターです。その正確な計測機能によってエンジンの点火は成功し、その結果、乗組員が無事に地球に帰還することに貢献しました。そして、1970年、このスピードマスターの功績からオメガはシルバースヌーピー賞を受賞するに至ったのです。
以来、スヌーピーはスピードマスターの特別なコレクションでたびたび登場し、その功績を称えています。ただ可愛らしいだけでなく、オメガのコレクションの信頼性の高さを象徴するキャラクターと言えるでしょう。
魅力にあふれた4つのオメガコレクション
オメガというブランドだけでなく、もちろんコレクション自体にも多くの魅力が詰まっています。性能だけでなく、その誕生の経緯や歴史、逸話について知っておくと、所持している満足度を高めることができるでしょう。ここでは、スピードマスター、シーマスター、コンステレーション、デ・ヴィルの4モデルについて解説します。
スピードマスター
オメガのスピードマスターは、1957年に初めて登場したクロノグラフウォッチシリーズです。タキメーターを備えるなど、当初はモータースポーツ向けに設計されましたが、前述の通り、宇宙探査でも重要な役割を果たした腕時計としても知られています。
そのラインナップは多岐に渡り、ムーンウォッチとも呼ばれるスピードマスタープロフェッショナルに、古き良きスタイルを継承する2カウンターモデル、素材にセラミックを用いたダーク サイド オブ ザ ムーンなど魅力的なコレクションが多く揃います。
スポーティ色の強いものから、ムーンウォッチのようなシンプルなデザイン性のものまで登場しているため、幅広いシーンで採用できるクロノグラフウォッチと言えるでしょう。
シーマスター
シーマスターは、1948年にオメガの創業100周年を記念して誕生した腕時計です。当初は現在のようなダイバーズウォッチではありませんでしたが、これをベースとして57年にシーマスター300が登場し、オメガダイバーズの歴史を辿ることとなりました。
現在では、ダイバー300Mを中心に、エレガントなアクアテラ、防水性を高めたプラネットオーシャンなどが展開されており、ビジネスパーソンからプロダイバーまで、シーン、需要に合わせた選択ができるようになっています。
ちなみに、57年にはシーマスターをベースにレイルマスターとスピードマスターも登場しています。つまり、シーマスターは現在のオメガのプロフェッショナルモデルの始祖と言えるのです。
コンステレーション
コンステレーションの初代モデルは、1952年に登場しました。登場当時は、クロノメーターとして知名度を高めたコレクションでした。その名前は、現在でもコレクションのアイコンとなっている天文台と8つ星に由来しています。
これは、オメガがかつて獲得したふたつのクロノメーター記録(イギリスのキュー・テディントン天文台およびスイスのジュネーブ天文台)と、6つの受賞記録を示すものです。なお、この象徴は現在でもダイアル下にある星からも見て取れます。
メンズ、レディースモデル問わず登場しているドレッシーなラインであり、ケースバックからベゼルまでつながる4本の爪が特徴。近年はスポーティなテイストも見せるモデルが多く展開されています。
デ・ヴィル
デ・ヴィルは、もともとシーマスターコレクションの一部として1960年代に登場しました。エレガントかつクラシカルなデザイン性を特徴としており、独立したコレクションとなったあとは、多くのコレクション展開によって、男女問わず愛されるモデルとなりました。
現代のデ・ヴィルは、クラシックな要素を保持しながらも、最新の技術とデザインを取り入れています。例えば、レディースモデルであるデ・ヴィル トレゾアは、女性のためにデザインされたスリムなケースとモダンなデザインで人気を博しています。また、ドレッシーなデ・ヴィル プレステージは、伝統的なスタイルを特徴としており、その誠実な価格帯からエントリーモデルにもふさわしいものとなっています。
まとめ
当記事では、オメガの魅力について解説いたしました。腕時計を購入する際には、ブランドの歴史や逸話、コレクションの魅力について理解しておくと、購入後の高い満足度にもつながりやすいです。その点で言うと、オメガは満足に足る、非常に魅力的なスイスブランドと言えるでしょう。
この記事がオメガを購入する際の一助となれば幸いです。