オメガが誇る唯一無二の技術「コーアクシャル」とは?
高級時計としての品格、デザイン、技術力でこれまでにも多くの時計ファンを魅了してきたオメガ。
そんなオメガのムーブメントには独自機構である「コーアクシャル」が搭載されていることをご存知でしょうか?
本記事では、オメガの卓越した技術力を象徴するコーアクシャルエスケープメントについて、詳しく解説していきます。
合わせてマスタークロノメーター認定についても解説し、マスタークロノメーター認定を受けたコーアクシャルムーブメント搭載コレクションについてもご紹介しますので、ぜひ最後までご一読ください。
オメガのみが採用する独自機構『コーアクシャル』とは
コーアクシャルは「同軸」を意味する名前であり、その正式名称は『コーアクシャル・エスケープメント』と呼びます。腕時計のムーブメントの精度を司る脱進機構(エスケープメント)の一種であり、この機構を採用したムーブメントをコーアクシャルムーブメントと呼びます。
スイスレバー式とコーアクシャル
現在、ムーブメントに使われる脱進機構はスイスレバー式のものが最も一般的とされています。ヒゲゼンマイとてんぷ、アンクル、ガンギ車で構成されるスイスレバー脱進機は、規則正しく収縮するヒゲゼンマイの動きをアンクルとガンギ車によって歯車に伝達し、一定の速度で回転するようにブレーキをかけて調速する仕組みが採られています。
このスイスレバー式は長年の間多くのブランドで改良が行われ、現代のものは高い精度を備えるようになりました。
しかし、ブレーキの際にアンクルに取り付けられた2つの爪石がガンギ車と小刻みに接触する根本的な仕組みは変わっていないため、性能の維持には定期的なメンテナンス(注油)が不可欠となっています。
コーアクシャルはそんなスイスレバー式のメンテナンス問題を改善する脱進機として、独立時計師ジョージ・ダニエルズによって開発されました。
特殊な形状のアンクルと複数層のガンギ車を採用するコーアクシャルは、3つの爪石と複数のガンギ車によって部品の摩耗を緩和。スイスレバー式に比べてメンテナンス頻度を劇的に抑えることに成功しました。さらに、ゼンマイのトルクの伝達ロスも少なくなったため、より安定した精度の供給も可能にしたのです。
オメガ・コーアクシャルの歴史
コーアクシャルは1974年に開発され、1980年に特許が取得された技術です。
発表当時から画期的な機能として注目を浴びていましたが、「搭載するムーブメントにスペースを要する」「製造コストが高い」などのデメリットゆえ、ほとんどのブランドが採用を見送ることになりました。
そこでこのコーアクシャル機構に目をつけたのが、当時、オメガが属するグループ(現スウォッチグループ)のトップであったニコラス・G・ハイエックです。
ニコラスは1993年、ジョージ・ダニエルズから技術を買い取りコーアクシャルの開発をスタート。オメガのキャリバー1120をベースに試作を進め、1999年、ついにコーアクシャルムーブメント搭載の「デ・ヴィル」を製品化を実現しました。
現在ではその機構にさらなる改良が加えられており、2層から3層へと変更されたガンギ車や、シリコン製パーツの採用などによって、耐久性・耐磁性も突き詰められています。
オメガの卓越性の象徴「マスタークロノメーター」とは
オメガは、コーアクシャルムーブメントの発展型として、2014年にマスターコーアクシャルムーブメントをリリース。その翌年である2015年にマスタークロノメータームーブメントを発表し、コレクションの実用性を大きく底上げしました。
ここでは、現在のほとんどのオメガコレクションに搭載されているマスタークロノメーターについて解説いたします。
マスタークロノメーター認定
COSC(スイス公式クロノメーター検定協会)の認定をパスする精度に、驚異的な耐磁性を兼ね備えていたマスターコーアクシャルムーブメント。その信頼性の高さをより確固たるものにするため、2015年に制定されたのがマスタークロノメーター認定です。
マスタークロノメーター認定ではムーブメントの性能検査にMETAS(スイス連邦計量・認定局)が参加しており、COSCの試験をパスしたムーブメントに対し、さらに8つの試験が行われるようになりました。
これらの試験は、ムーブメントをケースに入れた状態で評価を行う極めて実践的なもの。耐磁性や姿勢差、防水性、精度といった項目で検査が行われ、これをクリアしたものだけがマスタークロノメーター認定を得ることができるのです。
そのため、厳しい試験をパスしたマスタークロノメーターモデルは、我々の手元に届いた時点でその卓越した性能が約束されていると言っても過言では無いでしょう。
耐磁性
パーツ自体が磁気を持ってしまう「磁気帯び」の存在など、精密機械である腕時計にとって磁力はまさに天敵と呼べる存在です。
オメガは、この磁気問題への解決策として、高い耐磁性能に特化したマスターコーアクシャルムーブメント搭載モデル「オメガ シーマスター アクアテラ 15,000ガウス」を開発しました。
本作では、従来の耐磁時計で採用されていた軟鉄製ケースでムーブメントを覆う方法ではなく、磁力に影響されやすい部品に非磁性の素材を使う方法が採用されていました。
その結果、オメガはムーブメント自体の耐磁性を極限まで高めることに成功。実験値として、30000ガウスを超える磁力にも耐えられる腕時計を作り上げたのです。
もちろん、マスタークロノメーターに認定されたモデルにもこの基準は適用されており、いずれのモデルにも15000ガウスの磁力に耐えられるタフネスが備わっています。
メンテナンス性の高さ
コーアクシャルムーブメントの真髄であるメンテナンス性の高さは、もちろんマスタークロノメーター認定モデルにも共通する魅力となっています。
さらなる改良が加えられた現在のコーアクシャル機構は理論上注油の必要が無いとさえ言われており、そのオーバーホール推奨年数は8〜10年と、非常に長めに設定されています。一般的な腕時計は3〜5年に1度に設定されていることを踏まえると、その耐久性は圧倒的と言えるでしょう。
長年の使用を見越して設計される高級腕時計にとって、マスタークロノメーターモデルは、メンテナンス性という面で理想的なムーブメントとなっているのです。
おすすめコーアクシャルムーブメント
搭載モデル
最後に、コーアクシャルムーブメントを搭載しているオメガの主力ラインナップについてご紹介いたします。なお、現在ではオメガのほぼ全ての現行コレクションにマスタークロノメーター認定が適用されており、その信頼性の高さが証明されています。
スピードマスター
スピードマスターは、モータースポーツに向けて開発されたプロフェッショナルモデルです。クロノグラフやタキメーターを搭載した機能性の高いモデルであり、その信頼性の高さからNASAが正式に標準装備品に認定した機械式時計として有名です。
バリエーションも豊富に登場しており、実際に月面探査に同行した”ムーンウォッチ”と呼ばれる「プロフェッショナル」をはじめ、本来のコンセプトに立ち返った「レーシング」など、豊富なニーズにも応えるモデルとなっています。
非常にアイコニックなモデルであるため、腕時計にロマンを重視される方にもおすすめのシリーズと言えるでしょう。
シーマスター
オメガのダイバーズラインであるシーマスターもまた、スピードマスターと同様にブランドを象徴するモデルとして知られています。
本格的な潜水にも耐えうるプロツールモデルが多く登場していますが、アクアテラのようにスタイリッシュ&エレガンスが魅力のモデルもラインナップされており、こちらも幅広い需要に応えるモデルとなっています。
映画「007」のジェームズ・ボンドにも着用された「ダイバー300M」に、ダイバーズの側面を突き詰めた「プラネットオーシャン」など、バリエーションはさまざま。
オーバースペックというロマンでは他の追随を許さない、まず選択肢に加えたいモデルとなるでしょう。
コンステレーション
”星座”と名付けられた、オメガのコレクションの中でも一際歴史の長いシリーズです。 オメガ初の自動巻時計でありながら時計の精度を競う天文台コンクールで優秀な成績を収め、そのコンステレーションという名前とともにオメガの技術力の高さを世界中に知らしめました。
クラシカルな印象が強いシリーズですが、象徴的な4つ爪を継承したスタイリッシュモデルも多く登場済み。歴史の深いグローブマスターやアニュアルカレンダー(年次カレンダー)搭載モデルなど選ぶ楽しみもあるシリーズとなっています。
デ・ヴィル
デヴィルは、シンプルで洗練されたデザインが特徴的な、オメガのドレスウォッチシリーズです。
外装のデザインもスピードマスターやシーマスターはゴツめで強い印象を持ちますが、デヴィルは都会的で繊細なイメージと、まったく違った魅力を持ったシリーズと言えます。
女性らしさを強調する「トレゾア」シリーズや、エントリーモデルにもおすすめな「プレステージ」がメインとなっていますが、コンプリケーションモデルなども登場しています。
なお、デヴィル プレステージは2022年に第三世代へとアップグレードされました。
これにより、マスタークロノメーターモデルが多く登場し、その実用性が大きく底上げされました。
まとめ
時計を選ぶうえで重要視するのは、優れたデザインや素材、多機能性なども重要ですが、時計の心臓部となるムーブメントの性能も重視すべき要素です。
高い精度と信頼性を備え、メンテナンス性にも優れるコーアクシャルは、間違いなく腕時計選びの判断基準の大部分を占めるでしょう。
当記事を参考に、オメガコレクションの購入をご検討いただけると幸いです。