
グランドセイコーの数あるモデルの中でも高い人気を誇り、海外のファンからも“スノーフレーク”の愛称で親しまれている「SBGA211」、通称「雪白」。正規販売店スタッフである私こと藤本が、数多くの時計に触れる機会がありながら、なぜこの雪白を3年間も「相棒」として使い続けているのか。今回はその理由を、レビューを交えながら正直にお話ししたいと思います。ぜひご一読くださいませ。
なぜ私は3年間「雪白」を使い続けたのか
このSBGA211は、グランドセイコーの伝統的なデザインを受け継ぐヘリテージコレクションの1本。豊かな自然に抱かれた長野県の「信州 時の匠工房」にて、熟練の職人たちの手によって生み出されているスプリングドライブモデルです。

私は腕時計正規販売店ハラダにて、たくさんの腕時計を目にしてきました。また、販売・撮影スタッフとして、様々な腕時計に腕を通す機会も多く、それなりに知見があると自負しております。そんな私が、惹きつけられてやまないSBGA211「雪白」の魅力について、少しだけお付き合いください。
1. 文字盤の魅力:オンオフを問わない「純白」の存在感
雪白の最大の魅力は、やはりこの吸い込まれるような文字盤でしょう。工房から見える穂高連峰の雪景色を、風が作り出す美しい紋様(風紋)とともに再現した「雪白パターン」。ささやかな凹凸が施されたことで、単なる白ではない、繊細で奥行きのある表情を宿しています。

腕時計において白い文字盤は、ビジネスのスーツスタイルから休日のカジュアルな装いまで、どんなシーンにも馴染んでくれる万能カラーです。そしてこの雪白もまた、落ち着いたコーディネートに合わせると、手元からさりげない品格を漂わせてくれます。

しかも、この白文字盤にはその他の腕時計のものと一味違う魅力があります。それは、この文字盤がただ塗装された白ではなく、特殊な銀めっき加工によって、独特な質感と“白色”を表現しているからです。繊細な凹凸を埋めてしまわないよう、白塗料を使わずに純白を描き出したという並々ならぬこだわりが、手元を見る喜びを高めてくれるのです。

着用して3年になりますが、光の当たり方でキラキラと表情を変える文字盤の美しさは、今でもまったく見飽きることがありません。むしろ、毎日見る角度や光の加減を無意識に調整しながら、その美しさを楽しんでいるほどです。
また、純白のダイヤルの上を静かに滑るブルースチールの秒針も、文字盤とのコントラストを生み出しており、つい見とれてしまう仕上がりです。

実はこの青色も、単に塗装されたものではないことをご存知でしょうか。
これは鋼を一本一本丁寧に熱し、表面に生まれる酸化被膜によって色付けされたもの。“焼き”を入れる際の絶妙な温度管理によって生まれるこの青色は「テンパーブルー」とも呼ばれます。
均一で深みのある美しい色合いに仕上げるには、熟練した職人の非常に高度な技術と経験が不可欠。この小さな秒針一本にも、ブランドの妥協なきクラフトマンシップが凝縮されているのを感じます。
ちなみに、腕時計ユーザーの皆様におかれましても、自分が購入した腕時計をうっとりと眺める時間があるかと思われます。個人的に、SBGA211のおすすめスポットは車の中です。直射日光がちょうどよく遮られた環境では、本作の白文字盤や鏡面仕上げのケースが、よりシャープかつ豊かな表情を見せてくれます。
日中の車の中は、他のアイテムを撮影するのにもちょうど良い明るさなので、物撮りする際は試してみてはいかがでしょうか。
2. ブライトチタンのすごさ:軽さと、愛着が刻んだ傷のリアル
次に語りたいのが、素材であるブライトチタンについてです。ケースとブレスレットに使われているこの素材は、一般的なステンレススチールに比べて7割ほどの重さしかなく、時計全体の重量はわずか100gしかありません。

この軽さがもたらすのは、「着けていることを忘れるくらい」快適な装着感。一日中身に着けていても、ストレスを感じさせません。さらに、ブライトチタンは傷や腐食に強く、金属アレルギーが起きにくいという、普段使いに嬉しい特性も持っています。
実際、夏場に腕時計を着用していると、汗をかいた時に手首周りが荒れることもあるのですが、ブライトチタンの腕時計ではその症状が緩和された気がします。

この軽快な着け心地と、後ほどお話しするスプリングドライブの圧倒的な精度。このふたつが組み合わさることで、朝、時計を選ぶときに、ごく自然にこの雪白へ手が伸びます。結果的に、オンオフ問わずほとんど毎日着用してしまうほど、私のライフスタイルに欠かせないメインウォッチとなりました。

ただ、正直にお伝えすると、使用頻度が高い分、ブライトチタンといえどもそれなりに傷は入ります。しかし、それは決してマイナスなことばかりではありません。高硬度を誇る素材に刻まれた細かな傷は、この時計と共に過ごした3年間の証であり、私にとっては愛着の歴史そのものです。

なお、SBGA211のケースは、ねじ込み式リュウズと中央にサファイアガラスがはめ込まれたスクリューバックによって、10気圧防水を備えています。日常生活ではほとんど水の侵入の恐れがなく、私も水を使って日々の手入れを行うこともあります。
3. スプリングドライブの真髄:ほとんど「狂わない」という安心感
雪白の心臓部には、グランドセイコーが世界に誇る独自機構「9Rスプリングドライブ(キャリバー9R65)」が搭載されています。これは、機械式時計と同じようにゼンマイの力で動きながら、クオーツ式時計に匹敵する高精度を実現した、まさに“良いとこ取り”とも呼べる第3のムーブメントです。

そのカタログ上の精度は平均月差±15秒(日差にすると±1秒相当)とされていますが、私の個体は3年間使っていても、月に15秒もずれないことがほとんど。パワーリザーブは約72時間を実現しており、この驚異的な精度も相まって、ビジネスウォッチとしても絶大な安心感を与えてくれます。
そして、スプリングドライブを語る上で欠かせないのが、秒針の動きです。機械式腕時計のように「チッチッチッ・・・」と時を刻むのではなく、まるでダイヤルの上を滑るように「スーッ」と進むスイープ運針。この運針が雪面を表現した文字盤の上を静かに流れていく様子は、本当に趣があり見ていて飽きがきません。スプリングドライブは実用性だけでなく、視覚的にも魅力的なムーブメントと言えるのです。
4. 3年目のリフレッシュへ:最高の技術で、再び腕に輝きを
さて、そんなSBGA211「雪白」ですが、購入から3年が経ち、時計の性能を長く保つためのメンテナンスを考える時期になりました。毎日を共にしてきたことで増えた細かな傷も、この機会にリフレッシュさせてあげたいと考えています。


私がこれから依頼しようと考えているのが、グランドセイコーが提供する「コンプリートサービス」です。これは、ムーブメントを分解・洗浄・注油・組立する通常のオーバーホールに加え、ケースやブレスレットの傷を取り除くライトポリッシュまで含まれた、包括的なメンテナンスサービスです。
時計本来の性能と、グランドセイコーの丹念な仕上げで生まれた輝きを、出荷当時に近い状態まで戻すことができるのです。

これらの作業は、修理を専門とする工房「グランドセイコーサービススタジオ」で、一流の修理技能士の手によって行われます。製造だけでなく、メンテナンスにおいても一切の妥協を許さない姿勢は、オーナーとして非常に心強い点です。
また、仮にコンプリートサービスのライトポリッシュでは対応しきれないような深い傷に対しても、しっかりとサービスが用意されています。それが「外装リペアポリッシュサービス」です。繊細な溶接技術と「ザラツ研磨」をはじめとする高度な技術によって、傷があった場所がわからないほど修復できるようです。

私の腕で刻まれてきた日常の傷が、匠の技術によってどこまで美しくよみがえるのか。正直なところ、今からとても楽しみです。また、実際にメンテナンスからSBGA211が返ってきた際には、新しく記事としてご紹介したいと思います。
購入後も続く、グランドセイコーの絶大な安心感
そもそも、長年グランドセイコーを扱ってきて実感するのは、品質の高さゆえに、故障や不具合が極めて少ないということです。これは、部品製造から素材開発まで自社で一貫して行う、「マニュファクチュール」ならではの魅力ではないでしょうか。

その品質への自信は、「5年間」という長期の無償保証にも表れています。腕時計のひとつひとつ万が一の際にも万全のサポート体制が整っていることは、高価な時計を末永く愛用していく上で、何よりの安心材料と言えるでしょう。
また、グランドセイコーは部品保有期間を10年と定めていますが、それ以上の年月に対応できる体制を整えているため、10年を超えても対応してもらえる可能性が高いです。
しかも、この雪白に搭載されているキャリバー9R65は、非常にスタンダードなスプリングドライブムーブメントであるため、コレクションが全て廃盤にでもならない限りは、非常に長い期間、修理を受け付けてくれると思います。
SBGA211は、子から孫に受け継いでいけるような、本当の「一生モノ」となってくれるかもしれませんね。
まとめ:なぜ「雪白」を愛用し続けるのか
今回ご紹介したSBGA211は、ヘリテージコレクションに属し、セイコー時代から人気の高いロングセラーモデルとなっています。

3年間、ほとんど毎日この時計を使い続けていますが、この記事を書いているときも、その完成度の高さを実感しています。ブランドの技術力を実感するデザイン、ブライトチタンが可能にするストレスフリーな装着感、そしてスプリングドライブがもたらす絶対的な信頼性。すべてが完璧なバランスで成り立っているからこそ、“雪白”は海外で“スノーフレーク”の愛称がつけられるほど、多くの人に使われ続けているのでしょう。
そして、その卓越した品質が万全のアフターサービスで支えられることで、私たちは心から安心して、グランドセイコーを人生のパートナーとして選ぶことができます。
私にとって、このSBGA211はこれからも相棒であり続けてくれるはずです。
この記事の監修

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資格:日本時計輸入協会認定 CWC ウォッチコーディネーター
担当ブランド:Grand Seiko、NORQAIN
腕時計販売店ハラダのオンライン担当。
腕時計の撮影、オンライン上でのマーケティング全般を担当。
最新のトレンドからクラシックなモデルまで、幅広い腕時計の情報を提供し、特に日本の腕時計ブランドであるグランドセイコーの魅力を発信することに注力。グランドセイコーの精密な技術と美しいデザインについて詳しく紹介し、時計の選び方や魅力を伝える事に生きがいを感じている。



