機械式腕時計というと自動巻きが主流ですが、腕時計ファンの中にはあえて「手巻き」を選ぶ人もいます。手巻きの腕時計には、自動巻きとは異なる趣味性があり、メンテナンス性でのメリットがあるなど、多くの魅力があるためです。
当ページでは、手巻き腕時計の魅力やメリットについて詳しく解説します。おすすめのブランドやモデルも紹介しているので、ぜひご参照ください。
手巻き腕時計とは?
手巻き腕時計とは、手動でぜんまいを巻きあげることによって駆動する、機械式腕時計です。
機械式腕時計には、大きく分けて「手巻き」と「自動巻き」の2種類があります。自動巻きの腕時計は、回転垂(ローター)と呼ばれる部品が内蔵されており、着用時の振動によって自動的にぜんまいが巻き上げられます。一方、手巻き腕時計にそのような機能はありません。そのため、手巻き腕時計に動力を供給するには、毎回ぜんまいを巻き上げる必要があります。
このように、手巻き式時計は利便性では自動巻きやクォーツ式に劣ります。しかし、それらとは違った魅力があることから、あえて手巻きを選ぶ人も少なくありません。以下でその、魅力について解説していきます。
手巻き腕時計の歴史
機械式腕時計の歴史に「自動巻き」が登場したのは1920年代のことです。もちろん、それまでの腕時計は「手巻き」が主流でした。
手間のかからない自動巻きの登場によって、手巻きの腕時計が作られることは少なくなり、現在では機械式腕時計の多くが自動巻きのムーブメントを搭載しています。
とはいえ手巻きの腕時計は完全に衰退してしまったわけではありません。手巻きには自動巻きとは違った魅力があり、今でも多くの高級腕時計ブランドが、手巻き腕時計の新作を出しています。
手巻き腕時計のメリットは、上記のようなクラシカルな味わい深さだけではありません。詳しくは以下に解説します。
手巻き腕時計の魅力・メリット
手巻き腕時計には、以下の3つのメリットと魅力があります。
・自動巻きより薄型・軽量モデルが多い
・シースルーバックで内部がよく見える
・時計に命を吹き込む味わいがある
それぞれ詳しく見ていきましょう。
自動巻きより薄型・軽量モデルが多い
手巻き腕時計は自動巻きに比べて構造がシンプルで内部パーツが少ないため、薄型で軽量のモデルが多いことが特徴です。そのため、腕時計を長時間着けていても重量を感じにくいメリットがあります。
また薄型モデルはシャツのすき間に収まりやすく、スーツスタイルとの相性が良いのも魅力です。「袖口に引っかかるのが苦手」など、腕時計の厚みが気になる人は、手巻き腕時計を合わせてみてはいかがでしょうか。
シースルーバックで内部がよく見える
手巻き腕時計はシースルーバックとの相性が良いこともメリットです。自動巻きの場合はローターによって内部のパーツが隠れて見えにくいことがありますが、手巻き腕時計にはローターが存在しないため、隅々まで内部を鑑賞することができます。
モデルごとに内部ムーブメントの構造や装飾はさまざまで、それぞれに独特の味わいがあります。手巻き式でシースルーバックを採用しているモデルは、「見えるもの」という前提で作られているため、仕上がりや装飾にこだわりが詰まっているものも多いです。ケースの表面だけでなく、裏面のデザインを楽しめるのも手巻き腕時計の魅力となるでしょう。
時計に命を吹き込む味わいがある
リューズでぜんまいを巻き上げる動作は、腕時計に「命を吹き込むような味わいがある」と感じる人も少なくありません。大切な1本に手間をかけることで、愛着もますます湧くはずです。
巻き上げの操作をしなければ止まってしまう「手間のかかる腕時計」をあえて選び、その趣味性を堪能できるのは、手巻き腕時計ならではの楽しみ方といえるでしょう。その伝統の深さにロマンを感じる人も多くいらっしゃるはずです。
手巻き腕時計のデメリット
手巻き腕時計を購入する前に、そのデメリットついても十分に把握しておくべきでしょう。手巻き腕時計には、人によってデメリットに感じる以下の3つの要素があります。
・巻き上げ・時刻合わせの手間がかかる
・精度が安定しにくい
・デザインの選択肢が少ない
それぞれ以下に詳しく解説します。
巻き上げ・時刻合わせの手間がかかる
手巻き腕時計の魅力でもある巻き上げ操作はデメリットにもなります。
使い始めるときに巻き上げの動作が必要で、止まっていれば通常約40回前後巻いて、時刻を調整する手間がかかります。このような毎回の操作を不便に感じる人もいるでしょう。
これはクォーツ式やソーラー式にはない、機械式ならではのデメリットです。なお同じ機械式でも自動巻きなら毎日着用することで巻き上げや時刻合わせの手間を省けますが、しばらく着用しなければ手巻き腕時計と同様の操作が必要です。
手巻き腕時計は最大まで巻いても平均50~60時間ほどで停止してしまいます。もっと長時間持続するモデルもありますが、いずれにしても巻き上げなければ停止してしまう点はデメリットになり得るポイントです。
精度が安定しにくい
手巻き腕時計の欠点は、精度が安定しにくい点です。機械式の腕時計は基本的に、ぜんまいの巻き上げ量が減ると精度が低下し、時刻がずれやすくなる性質にあります。
つまり機械式の腕時計の精度を高く保つには、ぜんまいの巻き上げが最大に近い状態をできるだけ維持する必要があるのです。その点で言うと、手巻き腕時計は自動巻きと違って、着用していてもぜんまいにエネルギーが供給されないため、精度が安定しにくい傾向にあるのです。
機械式の中でも手巻きの腕時計は、精度を保つためにも手間がかかるものだと覚えておきましょう。
デザインの選択肢が少ない
デザインの選択肢が少ない点も、手巻き腕時計のデメリットです。手巻き腕時計は主流ではないため、一般的な自動巻き腕時計と比べると、選べるモデルやブランドの幅は狭くなります。
また手巻き腕時計のラインナップは基本的に、機能を抑えたシンプルなデザインが中心です。クロノグラフなど多機能な手巻き腕時計を探すとなると、選択肢はかなり限られます。
ブランドごとに、さまざまな特色のある手巻きモデルが存在しますが、自動巻きのラインナップの豊富さと比べると、どうしても選択肢が少なくなることは把握しておきましょう。
手巻き腕時計を長く使うためのポイント・注意点
手巻き腕時計を長く使うためには、適切なメンテナンスと注意点の理解が大切です。ここでは、手巻き腕時計を長く楽しむためのポイントや注意点について解説します。
定期的に巻き上げ・メンテナンスをする
手巻き腕時計を長く使うためには、定期的に巻き上げ操作をすることが大切です。
巻き上げ操作をせず、時計が止まった状態で長期間放置してしまうと、潤滑油が凝固するなど内部の劣化・不具合が起きやすくなります。できるだけ毎日着用し、適度にぜんまいを巻き上げることで、内部の劣化を防ぐようにしましょう。
さらに、一般的な腕時計のメンテナンスも欠かせません。使用によって付着した汚れはナイロンブラシなどで取り除き、柔らかい布で優しく拭き取りましょう。また防水性能が低いモデルは水濡れを避けることも大切です。
手巻き時計はこれらのポイントを守りながら丁寧に扱うことで、長く愛用することができます。
しばらく使わないときは保管方法に注意する
手巻き腕時計を長く使うためには、使わないときの保管方法にも注意が必要です。手巻きなど機械式の腕時計は、特に以下の場所を避けて保管しましょう。
・強い振動が起きる場所
・衝撃が加わる可能性がある場所
・高温の場所
・湿気が多い場所
・磁気の近く
・ほこりっぽい場所
精密機器である手巻きなどの機械式の腕時計にとって、振動や衝撃は故障の原因となってしまう可能性が高いです。安全な場所に保管しましょう。
また高温・多湿は機械式腕時計の大敵です。水回りの近くなど湿気の多い場所を避け、できるだけ常温の場所に保管するのがおすすめです。
さらに機械式腕時計は、電子機器など磁気の近くに置いてしまうと、金属パーツが磁気を持ってしまう「磁気帯び」の状態になって故障することもあります。
しばらく使用しない腕時計はケースなどに入れて、ほこりをかぶらないようにして保管することが大切です。保管する前には汚れを取り除き、日陰で2~3日ほどバンドなどを乾燥させてからケースに入れることもポイントです。
適切な場所に、適切な方法で保管することで、大切な手巻き腕時計を長く愛用していきましょう。
手巻き腕時計の購入におすすめのブランド・モデル
初めての手巻き腕時計を選ぶブランドとしておすすめなのが「オメガ」「グランドセイコー」「オリエントスター」の3社です。ここでは具体的なおすすめのモデルを4つご紹介します。
各モデルの特徴について、ブランドの特徴と併せて詳しく見ていきましょう。
オメガ スピードマスター プロフェッショナル 310.30.42.50.01.002
オメガは有名な手巻き腕時計「スピードマスター」シリーズで知られていて、手巻き腕時計を語るうえで欠かせないブランドです。特にスピードマスター プロフェッショナルは1969年にアポロ11号の宇宙飛行士たちが初めて月面に降り立った際に身に着けていたことで知られ、「ムーンウォッチ」の愛称でも親しまれています。
「310.30.42.50.01.002」は、左右非対称のケースや、有名な「ドットオーバー90」を採用したタキメーターなど、月面で着用された初代ムーンウォッチのデザインを色濃く継承したモデルです。以下のページでも詳しく解説しているので、ぜひご参照ください。
【オメガ スピードマスターの定番 新旧比較も】初代ムーンウォッチの正当進化モデルをご紹介
オメガ スピードマスター’57 332.10.41.51.10.001
スピードマスターの初代デザインをオマージュした「’57」コレクションも、手巻き式を採用しています。2カウンターとデイトを備えるクラシックなクロノグラフデザインですが、ブルーダイアルによってモダンカジュアルテイストも演出されています。
裏ぶたからは、テンプから放射状に広がる装飾を楽しめます。初代オマージュデザインモデルですが、かつてのモデルとは違った楽しみのある一本と言えるでしょう。
グランドセイコー 9Sメカニカル SBGW297
国内で高品質な手巻き腕時計をリリースしているブランドといえば、グランドセイコーがおすすめです。グランドセイコーの「SBGW297」は「44GS現代デザイン」と呼ばれるデザインを採用した手巻き腕時計です。グランドセイコーのデザインのルーツとなった歴史的モデル「44GS」をベースに、現代的なアレンジを加えたデザインを採用しています。
放射模様が施されたホワイトのダイヤルに、鮮やかなブルーの秒針がアクセントとなっていて、飽きの来ないシンプルなデザインが特徴です。また、シリーズ最小である直径36.5mmというサイズ感に惹かれる人も多いでしょう。
オリエントスター M45 F8 スケルトン ハンドワインディング RK-AZ0002S
初めての手巻き腕時計なら、高級腕時計の中でも手が届きやすい価格帯の「オリエントスター」もおすすめです。オリエントスターは、1950年代から続く国産ブランドであり、ハイクオリティな手巻き腕時計も多く提供しています。
オリエントスターの「RK-AZ0002S」は、「すばる」をデザインテーマに掲げるM45シリーズに属する1本。ムーブメントが見えるダイヤルが特徴の「スケルトン」シリーズに属するモデルでもあり、腕時計の表側から内部の美しい機械部品を鑑賞することができます。
高級な手巻き腕時計のご購入は正規販売店で
手巻き腕時計は、ぜんまいを手で巻くことに魅力のある腕時計です。薄型で軽量のモデルが多く、ビジネスシーンでの活用にも適しています。ただし、ぜんまいを巻き上げる手間が人によってはデメリットに感じる場合があるため、初めてのご購入の際は、自分の使用スタイルに合っているか確認することも大切です。
今回ご紹介したブランド・モデルに限らず、手巻きの腕時計の購入をお考えの際は、高級腕時計の正規販売店HARADAをご利用ください。手巻き腕時計の選び方など、腕時計にまつわるご質問だけでも、お気軽にご利用いただけます。
この記事の監修
- 時計は単なる時間を知るためのツールではなく、個性やスタイルを表現する大切なアイテムであるという信念のもと、ハラダではお客様一人ひとりのライフスタイルに合った時計を提案し、長く愛用できる商品選びをサポートしています。
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