AQ6100-56Lのリストショット

【ザ・シチズン Cal.0100】
シチズンが追い求めた究極の1秒

海外の有名高級ブランドが次々とM&Aを繰り返し、ノウハウを吸収し合い技術を高めている時計業界において、独自のM&Aにも似た戦略を取りある種の独立性を保ち続けているシチズン。
その技術力の高さを象徴するマニファクチュール(自社一貫製造)によって、シチズンは実用性に優れたハイスペックウォッチを多く生み出し続けている。

そんなシチズンの最高峰シリーズライン「ザ・シチズン」に搭載されているCal.0100は、クォーツムーブメントとしては世界でいちばんの精度、年差±1秒を実現した世界最高のクォーツムーブメントだ。
時計業界を揺るがした2019年の発表以後、未だにその精度を超えるクォーツムーブメントは現れていない。

当記事ではそんな「かけがえのない1秒」を生み出すムーブメント、Cal.0100をご紹介したい。

(2022年11月追記)
ザ・シチズン初の染色和紙文字盤モデルの年差±1秒モデル「AQ6110-10L」が、11月17日にリリースされるとシチズンから発表がありました!

このページで詳しくご紹介しているので、ぜひご覧ください。

また、ハラダ当店では「AQ6110-10L」のご予約を受け付けております。認定店でしか購入できない限定モデルですので、お早めに!

 

 

なぜシチズンはクォーツを極めたのか

ザ・シチズンの文字盤を拡大した画像

現代において、私たちが安易に扱える最も正確な時計とはなんだろうか。

それは、今あなたがこの記事を見るのに使っているであろうスマートフォンやタブレット、ガラケー、PCにも搭載されている電波時計である。
電波時計は世界中で標準時に用いられる原子時計を元に発信されたデータを受信し、時刻を自動調節する時計だ。原子時計は何千年何万年に1秒しか狂わない、人類が生み出した時計の中で最も正しい時計であり、それを元に時間を刻む電波時計も極めて正確である時計だと言えるだろう。加えて、ウェアラブルデバイスに代表されるIoT化も電波時計の更なる普及を手助けし、全世界で最も使われている時計と呼んでも過言ではない。

ザ・シチズンのシースルーバックを拡大した様子

では、日常に電波時計があふれる現代において、なぜシチズンはクォーツウォッチの精度にこだわったのだろうか。

そこには現代における腕時計の需要と在り方が関係してくると筆者は見る。
今や、世界は何時、何処にいてもインターネットにより外の世界と繋がれる時代になっている。そんなIoT化の加速が止まらない現代社会において、外とのつながりを持たない腕時計は、実用面だけでなく趣向品としての需要も見出されているはずだ。時代への逆行とも取れる時計の在り方の中で、シチズンは自社の時計づくりに相応しい価値観を見出し、Cal.0100で世界で”いちばん”の精度を目指したのだろう。

理論的には世界で一番正しい電波時計が多くひしめく時代に、クォーツ式ムーブメントとして極まったCal.0100は唯一無二の輝きを誇っているように見えてくる。

クォーツ式ムーブメントCal.0100の画像

さて、どんなものでも世界最高を生み出すというのは生半可な企業努力、技術では難しい。
実際、シチズンはCal.0100の発表以前に「ザ・シチズン」の別モデルにおいて年差±5秒という凄まじい精度を実現していたのだが、その製造のプロセスは年差±1秒のムーブメントのそれとはまるで違ったのである。年差±1秒を生み出すには年差5秒にただ改良を重ねるだけではなく、異なる手法を1から組み上げなければならなかったのだ。

では、1年間、秒数にすると3153万6000秒という膨大な数の運針の中で、たった1秒しかずれない時計を、シチズンはいかにして生み出したのだろうか。

 

 

より優れた水晶振動子の採用

水晶のイメージ画像

クォーツ式ムーブメントの心臓、水晶振動子。
限りなく純度の高い1秒を生み出すために、シチズンはその見直しから始めた。

 

水晶振動子の周波数は時計の精度に直結し、周波数が多いほど正確な1秒を安定して生み出せるのだが、振動子の温度や加わる重力によって僅かに影響されてしまう。これは一般的なクォーツ式時計ならさして問題にならない程度の影響だが、年差1秒を争うCal.0100には命取りになりかねない。
僅かな誤差さえも許さない時計づくりでないと年差±1秒など到底実現不可能だったからだ。

そこでシチズンは、温度、重力による周波数への影響の対策と、より優れた周波数を求めCal.0100にATカット型水晶振動子を新しく採用した。

水晶振動子を比較した画像

ATカット型水晶振動子は精密機械にも用いられる水晶振動子で、その周波数は一般的なクオーツ時計に使われる音叉型水晶振動子の256倍もの数値を誇る。また、温度や重力の変化に強いため、年差±1秒の実現にまさにうってつけとも言える水晶振動子なのだ。

シチズンのナンバーを並べた画像

さらに、シチズンはその水晶振動子を寝かせて変化の少ないものだけを厳選するという徹底ぶりも見せている。

 

 

マニファクチュールが生み出す美しい1秒

さて、いくら水晶振動子が安定して正確な1秒を生み出し続けたとしても、それを確実に針に伝えなくては何の意味もなさない。

シチズンの各パーツを並べた画像

シチズンは精度の伝達をより正確にするために、世界有数のマニファクチュール(自社一貫製造)であることを活かし、部品一つ一つを極限にまで洗練。徹底的に誤差を無くすために一から各種部品を作り込んだ。
その製造にはマイクロレベルで加工できるLIGA工法(微細構造物形成技術)と呼ばれる先端技術が用いられ、歯車の噛み合わせの”あそび”を最小限に抑えるなど、各種部品を今までにない精度まで引き上げることに成功。

シチズンの針先を拡大した画像

そうやって作られた部品が伝達する1秒は非常に正確で、先端が曲がった特徴的な真鍮秒針は毎秒ごとに確実に切分の真上で静止して見せる。

そこには寸分の狂いも見られず、この秒針からはマニファクチュールゆえの技術力の高さと、限りなく純粋な1秒の表現を感じ取ることができるのだ。

 

 

かけがえのない1秒を守る機構

先ほど触れた振動子の温度による影響をはじめ、日常生活において時計を”ズレさせる”要因は数多く存在している。
そのため、Cal.0100には精度を守るためのシステムを搭載することで、日常生活においても限りなく正確な1秒を刻めるよう工夫が施されている。
それが温度補正機能パーフェックスだ。

シースルーバックの温度補正機能の画像

温度補正機能は振動子の温度を毎分ごとに計測、補正し、温度による水晶振動子への影響を可能な限り抑える機能である。1日にして1,440回もの回数行われる温度補正のおかげで水晶振動子は常に最高のコンディションで正確な1秒を生み出し続けることができる。

パーフェックスの仕組み画像

パーフェックスは物理的に引き起こされる時計のズレを抑制できるシチズン独自の技術。
衝撃の検知とともに瞬間的にローターをロックする「衝撃検知機能」、一定時間ごとに針の位置を計測し、ズレがあれば補正する「針自動補正機能」、直流磁界4,800A/mまで耐えられる「JIS1種耐磁性能」が合わさったこの機構は、時計に対する外部からの刺激をほとんどシャットアウトする。

 

 

光だけで年差±1秒を生み出し、守る

エコ・ドライブに光が当たる様子

光発電時計のパイオニア、シチズンの生み出したCal.0100には、独自の光発電システム「エコ・ドライブ」がもちろん搭載されている。

驚くべきは、ATカット型水晶振動子、真鍮の重たい針を動かすパワフルなモーター、精度を守る温度測定機能やパーフェックスの全てを、光発電による少ない電力のみで動かしている事実である。
それでいてフル充電時には8ヶ月間もの連続稼働を実現しており、シチズンのコアテクノロジーがいかに優れているかがわかる。

これはシチズンが40年の年月をかけて培った省電力技術の賜物であり、世界最高精度のクォーツムーブメントはトップクラスの”エコ”なムーブメントでもあると言えるだろう。

 

 

匠の技による組み立て

顕微鏡が並ぶ作業場風景の画像

革新的なムーブメントであるCal.0100は新素材や特殊構造を採用しているため、”マイスター”と呼ばれる熟練の専門組立師でないと組み上げることができない。 一つ一つにシチズンの誇るクラフトマンシップが宿る逸品、それこそが「Cal.0100」であり、「ザ・シチズン」なのだ。

 

 

2022年新作!藍染和紙文字盤採用の年差±1秒モデル
「AQ6110-10L」

ザ・シチズンのロゴ画像AQ6110-10L

2022年11月17日に年差±1秒の限定モデル「AQ6110-10L」がリリースされます。

内部ムーブメントはこれまでの年差±1秒モデルと同じく、エコドライブを搭載した「Cal.0100」ですが、そのダイヤルはザ・シチズン初の染色和紙文字盤。

これまでは和紙を上から抑える透明の板に染色を行うことで表現を行ってきたザ・シチズン。
今回登場するモデルは和紙そのものを阿波藍で染め上げた、ザ・シチズン初の試みが落とし込まれています。

AQ6110-10Lの文字盤を拡大した写真

ストラップには最高級のワニ革バンドが採用され、クラシカルな雰囲気はこの時計のエレガンスをより強調。

入荷数がかなり限られていますので、ぜひお早めにご予約ください!

 

 

まとめ「年差±1秒という高み」

AQ6110-10Lの文字盤

昨今の世界情勢も加わり更なる進化を続けるIoT化社会において、腕時計の需要、在り方も日々移り変わりを見せている。
これから先、”つながっていない”腕時計は一体どのような進化を見せるのだろうか。

先が見えない未来の需要を見据えるシチズンの時計づくりからは目が離せない。