タイトルスピードマスター ムーンウォッチの文字盤を俯瞰した画像

【マスタークロノメーターの開拓者】
オメガの耐磁性はどこまで極まるのか

時計ブランドがさまざまな工夫を凝らし精度の高い腕時計の開発を目指す中、切っても切り離せないのが内部機構に影響を及ぼす磁力の問題です。

近年、爆発的に普及したスマートフォンやパソコンなどの電子機器からも磁力が発されていることが考慮され、メーカーは腕時計になるべく強い耐磁性能を持たせるようになりました。

 

そして、数あるウォッチブランドの中でも一際優れた耐磁性能を持つ時計を生み出しているのが、世界的ブランド「オメガ」です。当記事ではオメガの超高耐磁ウォッチがいかに優れており、どのようにして生まれたかをご紹介いたします。

 

 

時計の天敵「磁力」

磁力の影響をイメージした画像

腕時計は基本的に、強磁性体と呼ばれる磁石に影響されやすい材料を内部構造に使っており、磁力を近づけると機能に影響を及ぼす可能性があります。場合によっては歯車同士の噛み合わせ不良やモーターの不具合などが起こり、精度が狂ってしまうことも。

加えて、さらに恐ろしいのが”磁気帯び”です。

子供の頃に磁石遊びをされた方は経験があると思いますが、長時間磁力に晒された強磁性体は一時的に磁力を発するようになります。これが「磁気帯び」です。繊細な構造と緻密な設計によって生まれる腕時計は磁力による些細な外力であっても致命的で、特に歯車やゼンマイといった時計の心臓部が磁気帯びしてしまうと、脱磁も含めた修理が必要になってきます。

つまり、腕時計にとって磁力は天敵とも言える存在であり、正確さを追求する時計ほど磁力に対するケアが不可欠なのです。

 

 

日常生活に潜む磁力

では、日常生活において、腕時計はどの程度の耐磁性が求められるのでしょうか。

私たちの身の回りには、バッグの留め具やマグネットブレスレットはもちろんのこと、家電や電子機器など磁力を発するものが多く存在しています。その強さは基本的にA/mの単位で表され、スマートフォン(スピーカー部)は1万5千A/m程度、バックの留め具等の強力な磁石なら10万A/mほどの磁力を持っています。中でも電子レンジは非常に高い磁力が内部で発生しており、扉部の磁石だけでも数万A/mの磁力が発されています。

一般的な耐磁ウォッチであれば4万〜8万A/mほどの耐磁性を持っていますが、それでも腕時計をつける際にはなるべく磁力を遠ざけるようにするのが無難だと言えるでしょう。

また、私たちが受け得る磁力で一番大きいのはMRIです。その磁力は数値にして1万ガウス。これはA/mに変換すると80万A/mになり、耐磁ウォッチであっても著しい影響を受けてしまいます。MRIの際に腕時計を外すよう言われるのはこれが原因です。

 

 

卓越した耐磁性とマスタークロノメーター

シーマスターの耐磁性をイメージした画像

さて、冒頭でも触れたオメガの耐磁ウォッチの耐磁性は一体どれくらい優れているのでしょうか。

その耐磁性はなんと1万5千ガウス以上。A/m換算でおよそ120万A/m以上と、他の耐磁ウォッチが霞むほどの耐磁性を誇っています。もちろんMRIにも全く影響されないため、強力な磁力に晒されるMRI技師、放射性技師たちにも広く愛用されています。

この世界最高峰とも言える耐磁性能の裏には、オメガの革新的な挑戦がありました。

一般的に耐磁ウォッチはムーブメント自体を磁力の影響を受けにくい素材(軟磁性体)で覆い隠し、磁気を受け流すことで耐磁性能を獲得しています。しかし、腕時計の更なる耐磁性の獲得を目指していたオメガはムーブメントが包み隠されてしまうこの手法を嫌い、磁力の影響を全く受けない非磁性素材の使用に挑戦しました。

もちろん、ムーブメント自体に耐磁性を持たせられる非磁性素材の使用は理論上最も耐磁性を得られるため、他のブランドもこぞってこの構造に挑戦していました。しかし、シリコーンなどの非磁性素材は摩耗が激しく温度変化にも弱いため、実用化が非常に難しかったのです。

ムーブメントcal.8900の画像

そこで、オメガは部品の摩耗を抑えられるコーアクシャル脱進機を採用するなど、素材の耐久性の問題をカバー。ひげゼンマイやテンプをシリコーン製に、その他の部品にも耐磁性に優れた素材を使うことで超耐磁性を持ったムーブメントを実現しました。

カードの画像

また、この超耐磁性を証明するために、オメガはスイス連邦軽量・認定局(METAS)と規格「マスタークロノメーター」を共同で制定。厳格な基準を定めることで、超耐磁性と精度を始めとする時計の品質へのお墨付きをもらえるようになりました。

オメガのマスタークロノメーターを冠したモデルは、腕時計として非常に高い品質と優れた耐磁性が証明された、洗練されたタイムピースなのです。

 

マスタークロノメーターの耐磁性に関する逸話

余談ですが、オメガのマスタークロノメータームーブメントの耐磁性能は1万5千ガウスを遥かに超えていると言われています。

実は、1万5千ガウスという数値はMETASの検証できる限界の耐磁性能であるため、それ以上の耐磁性能の証明が不可能なのです。そのため、オメガのムーブメントの表記上の耐磁性能は「1万5千ガウス以上」となっているのです。

実際、耐磁性能に優れる「シーマスターアクアテラ」は3万ガウスを超えるMRIでの実験でも精度を保ち、16万ガウスという桁違いの磁力を受けても駆動に影響を受けなかったそうです。
(ちなみに、16万ガウスの磁力はカエルなどの小さい生物が宙に浮いてしまうほど強力で、生み出すのに電子レンジ5千台相当の消費電力が必要だとか。)

シーマスターアクアテラを横向きに置いた様子

もはや実用レベルを凌駕した、ロマンにも似た圧倒的な耐磁性能がオメガのムーブメントには搭載されているのです。

 

 

オメガのマスタークロノメーター3選

ここではマスタークロノメーターの認定を受けた、卓越した耐磁性と信頼を持つオメガのタイムピースをご紹介します。

スピードマスター ムーンウォッチ プロフェッショナル

スピードマスター ムーンウォッチ暗いところと明るいところの比較画像

人類初の月面踏査に同行したことで”ムーンウォッチ”の愛称で親しまれるアイコニックな一本です。

宇宙での使用を想定して作られたプロフェッショナルウォッチは実用性に優れ、マスタークロノメーターの認定を受けただけあって非常に高い耐磁性と精度も獲得しています。ヘザライトガラスや伝統的な手巻き式を採用しており、初代ムーンウォッチの遺伝子を色濃く受け継ぐムーンウォッチの正当進化モデルです。

 

シーマスター アクアテラ ワールドタイマー

シーマスター アクアテラ ワールドタイマーを横向きに置いた様子

ダイバースウォッチとして格別の美しさを醸すシーマスターから、立体的な地球を象った「アクアテラ ワールドタイマーコレクション」をピックアップ。

ダイバーモデルなだけあってスイス連邦軽量・認定局の認める防水性能を備えながらも、マスタークロノメーター認定のキャリバー8938搭載でどんな過酷な環境でも輝きを失いません。また、ワールドタイムウォッチとしての性能も折り紙付で、世界を股にかけるロマンを感じられる鋭意的なモデルです。

 

コンステレーション マスタークロノメーター

コンステレーション マスタークロノメーターのケース全貌の画像

ラグジュアリースポーツを感じる不朽のデザインが魅力的なコンステレーションから、セドナゴールドとブルーが奏で合う一本をご紹介。特徴的な4本の”爪”と側面のハーフムーンデザインが特有のスポーティ&エレガンスを演出しています。また、このフォルムのコンステレーションはバリエーションが多くラインナップされており、好みやシーンに合わせたデザインが選べるのも魅力です。

 

 

まとめ「挑戦が生み出した最強の耐磁性能」

オメガの文字盤を俯瞰した様子

当記事ではオメガの卓越した耐磁性についてご紹介しました。

オメガのマスタークロノメーターのロマンあふれる耐磁性は他にない唯一の強みであり、日常生活においてもその凄さを実感できるタイミングに多く遭遇するはずです。

電子機器に溢れた現代社会において、磁石の脅威からあなたのウォッチライフを守ってくれるのはオメガのマスタークロノメーターを置いて他にいないでしょう。