レトログラードとは?おすすめの搭載モデルや仕組み・メンテナンスについて解説 - 高級時計 正規販売店 ハラダHQオンラインショップ

レトログラードとは?おすすめの搭載モデルや仕組み・メンテナンスについて解説

フランクミュラーレトログラードの全体図

レトログラードは機械式時計の醍醐味、7大複雑機構の一つ。針が扇状に運動して、通常の秒針が描く円運動とは異なる時の流れを楽しめる機構です。

本記事ではレトログラードの魅力や仕組み、おすすめの搭載モデルを紹介します。

レトログラードに興味のある方や、コンプリケーションウォッチ(複雑時計)のコレクションをレトログラードから始めてみたい方は参考にしてみてください。

レトログラードとは?

レトログラードとは通常の針のような「円運動」ではなく、扇状の目盛を「反復運動」する針によって時刻やカレンダーなどを表示する機構のことです。

例えば始点を月曜日とし、日曜日を終点とすると、車の速度メーターのように日曜日まで針が移動し、瞬時に日曜から月曜に戻る動きをします。この終点から始点に戻る際にタイムラグが発生すると、正確な時が刻むことができません。そのため、終点に達したレトログラードの針は一瞬で始点に戻ります。

この瞬時に戻る現象はフライバックと呼ばれ、そのダイナミックなアクションもレトログラードの魅力となります。

レトログラード搭載の時計は、針の位置だけで「何月か」「何曜日か」など直感的に分かるのが特徴です。また、回転する時計の針は、あたかも永遠に時が続くような錯覚を与えますが、実際のところ、人にとって時間は有限であり、過ぎ去った時間は戻りません。レトログラードはそのような哲学的な意味もユーザーに感じさせる機構です。

なお、レトログラードの「レトロ」は回顧や復古調を意味する「レトロスペクティブ(retrospective)」の略ではありません。

「レトログラード(retrograde)」は「元に戻る」「逆行する」を意味するフランス語から来ています。何百分の1秒で瞬時に月曜から日曜などに戻るフライバックの動きの特徴からその名が付きました。

17世紀後半〜18世紀後半の懐中時計に多く採用されていたため、、レトロスペクティヴの趣もあります。しかし、レトログラードは19世紀に入っていったん下火になり、再び流行したのは1990年代のことでした。

フランクミュラーの愛弟子であるスイスの時計製作者ピエール・クンツがレトログラードを3つ搭載したモデルを製作したことを契機に再び注目され、今なお搭載するブランドが数を増やしているのです。

レトログラードの仕組み・機能

一般的な時刻表示は、軸を中心として針が右まわりに回転します。対してレトログラードは針が一定の位置まで進むと所定の位置まで戻り、再び進み始めるユニークな動きをするのが特徴です。

複雑機構を組み上げるために必要となる部品は多く、仕組みも複雑なのが一般的ですが、レトログラードの仕組みは比較的シンプルなものとなっています。

フランクミュラーレトログラードの機能
中には、2つのレトログラードで秒数を表示するコレクションも存在しています。この「フランクミュラー ビーレトログラード・セコンド」の場合、上下のレトログラードが30秒毎にフライバックとスタートを繰り返します。

レトログラード機構はカタツムリ型のカム(ムーブメントの運動をつかさどる部品)と棒状のバネ(レバー)で構成されるのが一般的です。特徴であるフライバック機能はこのカタツムリ型のカムとバネによるもので、針が進むことで溜まるエネルギーが一気に解放されることでフライバックします。

指針が動くたびに棒状のバネが少しずつ押されて曲がり、バネにエネルギーが蓄積。そして針が終点まで来ると、カタツムリ型のカムが働いてバネが開放され、指針が一瞬で起点に戻るというメカニズムです。

なお、一説によると、起点に戻る指針の速さは500分の1秒と言われています。まさに目にも留まらぬ速さです。

レトログラードを採用しているブランドは?

レトログラードを採用しているブランドはいくつかありますが、パイオニア的な存在としてはスイス・ジュネーブの名門「ヴァシュロン・コンスタンタン」が挙げられます。ヴァシュロン・コンスタンタンはレトログラードを1920年ごろから手がけてきました。

レトログラードの魔術師と呼ばれるピエール・クンツが自ら起ち上げたブランド「ピエール・クンツ」も有名です。クンツはファーストコレクションのハイライトとして脚光を浴びた代表作の「パピヨン」を始め、さまざまなレトログラード式の時計を世に送り出し続けています。

レトログラード式の表示を一躍有名にしたブランドは、「ジェラルド・ジェンタ」です。エポックメーキングとなったのは1996年に発表したレトロ・ファンタジーシリーズでした。

レトロ・ファンタジーシリーズは、ミッキーマウスなどのディスニーキャラクターの指が分表示するレトログラード機構と、小窓の数字が瞬時に切り替わって時間表示するジャンピングアワーを搭載するユーモアあふれる作品で話題を呼びました。

レトログラードを採用してきたブランドとしては、ダイヤモンドを芸術の域まで高めた「ハリー・ウィストン」の名前も挙げられます。

ダイヤモンドとダブルレトログラード機構のマリアージュを実現した「HWオーシャン」シリーズなど、ハリー・ウィストンの高級感あふれるラグジュアリーなレトログラードウォッチは今も多くの人々を魅了しています。

ロンジンのレトログラードモデル

他にも現存する世界最古の時計ブランド「ブランパン」や18世紀にアブラアン‐ルイ・ブレゲがパリで創業した「ブレゲ」。スイスで180年以上時計製造に携わる世界的に有名な老舗「ロンジン」や高級時計メーカーとして知られる「パテックフィリップ」。フランスの高級宝飾ブランド「カルティエ」などが、レトログラード搭載モデルを製造するブランドとして有名です。

フライバックの瞬間に部品に大きな負荷がかかるレトログラードの腕時計を安定して製造できるということは高品質の素材と精緻な設計、そしてそれを実現する技術をもって時計製造にあたっているブランドの熱意と信頼の証といえます。

また、セイコーのプレザージュなど、クラシカルテイストを特徴とする国産コレクションでも、日付曜日表示でレトログラードを見ることができます。

レトログラード搭載モデル

上記のブランド以外にも、レトログラード式表示を採用している有名ブランドはあります。ここからは1882年創業のアメリカ最古の時計ブランド「Cuervo y Sobrinos(クエルボ・イ・ソブリノス)」と、スイス高級機械式時計メーカー「FRANCK MULLER (フランクミュラー)」の代表的な名機を紹介していきましょう。

Cuervo y Sobrinos クエルボ・イ・ソブリノス ヒストリアドール レトログラード 3194.1B

「スイスのハートにキューバのスピリット」。そのフレーズで表現されるとおり、ヒストリアドールはハバナ生まれのクエルボ・イ・ソブリノスが、豊かな色彩でラテンの情熱にあふれた故郷ハバナの個性を表現したモデルです。

レトログラード式となっている日付・曜日とパワーリザーブインジケーターの部分が、ソブリノスの時計作りへの綿密なアプローチを表しています。個性的でありながら、紳士の気品を備えた男性の自己表現に適した時計といえます。

プレザージュ セイコー腕時計110周年記念限定モデル クラフツマンシップシリーズ

セイコープレザージュは、腕時計の伝統を重んじ、タイムレスなコレクションで日本の美意識を発信するブランドです。

中でも、クラシカルデザインを重視するクラフツマンシップシリーズではレトログラードが多く採用されており、日付、曜日表示でその動きを見ることができます。特に本作では日付、曜日でこの機能が見られます。

また、プレザージュと言えば、日本の伝統工芸を使用した文字盤が有名。本シリーズでは文字盤のバリエーションが、琺瑯から漆まで豊富に登場済みです。日本の伝統と時計の伝統、両方の歴史を楽しめるコレクションとして、選択肢に加えていただけると幸いです。

いずれも1500本限定で、国内の販売数も限られたモデルとなっておりますので、お早めのご注文をお待ちしております。

FRANCK MULLER(フランクミュラー)のレトログラードコレクション

フランク・ミュラーは、時計の歴史を200年進めたとされる伝説的時計師「アブラアン ルイ・ブレゲ」の再来とも呼ばれる天才時計師です。そのブランドからはもちろんレトログラード搭載モデルが多く登場しており、いずれも逸品と呼べる完成度を誇ります。

株式会社ハラダは日本で6店舗しかない(2023年10月現在)フランクミュラーブティックに認定されております。フランクミュラーの購入はぜひハラダにご相談くださいませ。

ロングアイランドビーレトログラード セコンド 1100DSR

ロングアイランドはトノウカーベックスと並ぶフランクミュラーの人気コレクションです。

フランクミュラーレトログラードのダイアル

長方形のレクタンギュラ―型をベースとしたケースは、20世紀初頭に一世を風靡した古典を重んじるノヴェチェントスタイル。上品なクラシックさが際立つ美しいフォルムには、世界中の時計愛好家が刺激を受けました。

中でも2000年に発表されたロングアイランドビーレトログラードセコンドは、フランクミュラーの独創的な時間表現が特徴のユニークなモデル。ケース素材にビーレトログラードモデルで初めてステンレススチールを採用したことでも話題となりました。

ビーレトログラードセコンドでは通常、1分間で円周する秒針を、レトログラード表示によって2本の針で30秒ずつに分割。第1の針は0〜30秒を、第2の針が30〜60秒までを表し、それぞれの針がフライバック表示されるムーブメントを搭載しています。

アール・デコモダーンにフランクミュラー独自の表現が込められた美しいデザインの名作です。

トノウカーベックスレトログラードアワーデイアンドナイト 7880HRJN

天才時計師と讃えられるフランクミュラーが、自らのブランドのフラッグシップモデルに選んだのが「トノウカーベックス」です。

トノウとは「樽」を意味する言葉。トノウカーベックスのケースは、球体から切り出したような三次元曲線のフォルムが特徴です。独特のデザインをしたケースは、フランクミュラーのアイコンとなっています。

カーベックスケースに合わせて創案されたビザン数字インデックスとの組み合わせは、フランクミュラーのスタイルとして確立されました。

レトログラードアワー デイアンドナイトは、太陽と月による昼夜表示がレトログラード表示になっています。夕方の18時と朝方の6時に、昼の時間帯と夜の時間帯が入れ替わるため、昼間のオンタイムと夜のオフタイムを切り替えやすいのが特徴です。

ロングアイランド ダブルレトログラードアワー 1250DHR

ロングアイランドは1920〜1930年代にかけて一世を風靡した古典的なノヴェチェントスタイルに、フランクミュラーが現代的なアールデコの解釈を加えて生み出したモデルです

レクタンギュラーケースの流線型のカーブはフィット感が良好で、誰が付けても似合うのが特徴。カラーバリエーションが豊富なのもロングアイランドの魅力の一つで、精緻なアールデコ・スタイルが至るところに凝縮されています。

ダブルレトログラードアワーはフランクミュラーの「時の3部作」の一つ。レトログラードにより、昼と夜で異なる時刻表示を可能にしました。6時〜18時は上半分の扇状になった範囲を針が動き、18時〜翌6時までは下半分の扇状になった範囲を針が動く、視認性と遊び心の双方をもったモデルです。

レトログラードは壊れやすいって本当?

「レトログラードは壊れやすい」。そのような噂を耳にしたことがあるかもしれません。しかし、壊れてしまう原因の多くはユーザーの不適切な扱い方にあったようです。

実はレトログラード式の多くは、構造的に針の逆回しができません。それを知らずに針を逆回しするユーザーが多く、故障が多発していたのです。そのため「レトログラードは壊れやすい」とのイメージが付いてしまいました。

19世紀にいったん下火になり、ピエール・クンツの登場まで、あまり製造されなくなっていたのも、その評判のためと一部では言われています。

現代ではモジュールを独自開発し、針の逆回しを可能にしたレトログラードモデルも展開されています。また素材や技術の進化で問題が起きないケースも増えてきました。そのため、現在ではそのリスクが緩和されたと言えます。

ただし、今なお多くのレトログラード搭載モデルは、従来のように針の逆回しはできません。高価なレトログラード搭載の時計を大切に扱いたいなら、説明書に従った取り扱いを心がけるべきでしょう。

ハラダでは、ご購入された時計をなるべく長くご愛用いただくため、料のアフターサポートとして、腕時計の点検、調整サービスを提供しております。ご購入前の不安点やよくある故障原因などを事前に確認したい方は、お気軽にお問い合わせください。

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まとめ

今回はレトログラード式時計の魅力や仕組み、代表的なブランドについてまとめました。レトログラードの針が扇状に動き、一瞬でフライバックする動きは視覚的に楽しみがあるだけでなく、デザインも凝ったものが多いため、コレクション性の高い時計と言えます。

また、レトログラードの魅力は複雑機構を伴う機能美にあるともいえます。ただし、複雑機構が採用されている他のモデルにも共通するように、レトログラード機構搭載の時計は決して安価ではありません。信頼できるショップでの購入がおすすめとなります。

レトログラード搭載の時計を始めとする高級腕時計のご購入はHARADAにお任せください。HARADAは1929年の創業以来、お客様との信頼関係を腕時計の販売を通じて積み上げてきました。「高級腕時計の正規販売店だからこそ、腕時計とお客さまの出会いを特別なものにしたい」その一心でスタッフ一同尽くしています。お客さまのお問い合わせ、ご注文をお待ちしています。

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