腕時計には、カレンダーやムーンフェイズが搭載されているモデルや、ダイビング用にガス排出用バルブが装備されているモデルがあります。そういったものは、単に時刻を把握するだけの用途に限りません。時刻以外を把握できる多機能型の腕時計の中でも特に、日常的な動作である「時間を測る」ことのできる機能が搭載された腕時計は、クロノグラフと呼ばれます。
利用シーンや用途に応じて最適なものを選ぶためには、クロノグラフの概要を押さえておくことが重要です。
そこで本記事では、クロノグラフの概要や人気の理由、ビジネスシーンとカジュアルなシーンのそれぞれで活躍するクロノグラフモデルをご紹介します。記事後半では、メリット・デメリットや注意点、仕組みや種類などクロノグラフの詳細を解説するのでぜひ参考にしてください。
クロノグラフとは？
クロノグラフとはギリシャ語で「時間」を意味する「Chronos」と「記す」を意味する「Graphos」を組み合わせた言葉で、ストップウォッチ機能が搭載された腕時計を指します。現在では、機械式、クォーツ式問わず、ほぼ全ての駆動式からクロノグラフモデルが登場しています。
モデルによって多少の差はあるものの、ケース側面2時方向のスタート・ストップボタンを押して計測を開始し、4時方向のリセットボタンを押してリセットするのが一般的です。経過時間を表示する積算計は主に、30分計や60分計の分積算計と、12時間や24時間の時積算計です。
クロノグラフはなぜ人気？
クロノグラフの大きな魅力はその計測機能にあります。
その歴史は非常に長く、かつては実際のモーターレースの計測などで活用されてきました。
また、電気を使わない、物理的な機構だけでストップウォッチ機能を動かしている繊細な技術力に加えて、時刻を知る、時間経過を測定するという2つの機能が共存している点は、今なお多くの人々を魅了し続けています。
他にも、クロノグラフが人気を集める理由には、以下の3つが挙げられます。
・デザインが洗練されているから
・高級感があるから
・操作できるユニークさがあるから
クロノグラフはその多機能性をまとめるためにデザインが洗練されており、シンプルながらおしゃれな雰囲気を醸し出しています。また、プロツールであった過去にならい、細部までこだわったモデルも多く、時計愛好家の心を鷲掴みにします。
さらに、オメガなど世界的に有名な時計メーカーで、クロノグラフのモデルがリリースされていることもあり、高級感を感じられる点も人気の理由の一つに挙げられるでしょう。
加えて、腕時計では数少ない操作できるという点がユニークさを兼ね備えています。眺めるだけにとどまらず、ボタンを押して腕時計を操作する感覚が、時計を愛してやまない人の心をくすぐるのです。
ビジネスシーンで活躍するクロノグラフモデル
一口にクロノグラフと言っても、デザインや機能が異なるため活躍する場面は異なります。どのような場面で利用したいかを考えて、それにマッチするかどうかで選ぶといいでしょう。
ここではビジネスシーンで活躍するクロノグラフの、【オメガ】ムーンウォッチ プロフェッショナル コーアクシャル マスター クロノメーター クロノグラフ 42MMと、【ロンジン】コンクエスト 42mm L3.835.4.72.6の2種類をご紹介します。
【オメガ】ムーンウォッチ プロフェッショナル コーアクシャル マスター クロノメーター クロノグラフ 42MM
オメガ・スピードマスタームーンウォッチは、人類の月面着陸の際に携行され、プロジェクトを影から支えた世界的に見ても稀有なモデルです。このモデルは、オメガの持つ冒険心溢れるパイオニアスピリットを垣間見ることができるでしょう。オメガ コーアクシャル マスター クロノメーター キャリバー3861を搭載し、スモールセコンドサブダイアル、30分計、12時間計、そしてセンタークロノグラフ針の複数の計測機能が備わっているクロノグラフです。
ブレスレットは、光沢が特徴的できらびやかさを感じられるポリッシュ仕上げのアーチ型リンク2つと、高級で落ち着いた印象を与えるブラッシュ仕上げのアーチ型リンク3つで構成される5連仕様。フロントガラスとケースバッグには、耐傷性に優れたサファイアクリスタルガラスが採用されており、ムーブメントのバックビューも楽しむことができます。
機能面でも優れた当モデルは、スイスクロノメーター検定協会（COSC）の基準である日差マイナス4からプラス6秒以内の条件をクリアし、クロノメーター認定を受けています。加えてスイス連邦計量・認定局（METAS）による8つのテストに合格しており、マスター クロノメーターの称号を得た防水性・超高耐磁性を持つモデルです。
なお、現代の腕時計は自動巻式モデルが一般的ですが、本作は、月面着陸に使用されたものと同じ、手巻き式となっています。
【ロンジン】コンクエスト 42mm L3.835.4.72.6
＞ロンジン コンクエスト 42mm L3.835.4.72.6
1832年に創業した老舗であるロンジンは、パイロットウォッチを中心に、現在に至るまでプロフェッショナル向けモデルを数多くリリースしてきたブランドです。
回転式ベゼルやフライバッククロノグラフといった機能を世界で初めて腕時計へと搭載した、パイオニア精神に溢れるブランドでもあり、現在では競馬やモーターレースといった数多くのスポーツとの強固なパートナーシップを築いています。
このコンクエストは、そんなパイオニアスピリットを引き継ぐプロフェッショナル志向のクロノグラフモデルです。
強固なステンレスケースには、傷に強いセラミック製ベゼルが取り付けられており、タキメーターを備えた本格派仕様。モノカラーにレッドを加えた判読性の高いフェイスは目新しさこそありませんが、それゆえにタイムレスな魅力に溢れています。
クロノグラフ機能は6時位置に12時間計、9時位置に30分計を備えており、秒表示はスモールセコンドとして3時位置に配置。それぞれのサブダイアルはホワイトのメインダイアルで際立つようグレーが採用されており、いかにもクロノグラフモデルらしい顔付きが所有感を引き立てます。
リュウズガードに覆われたねじ込み式リュウズや、操作性の高いボタンなど、細部にプロフェッショナル仕様へのアプローチが見られる点も本作の見所のひとつ。シースルーバックでムーブメントのバックビューを楽しめる点も本作の魅力となるでしょう。
カジュアルでもビジネスでも使いやすい！ クロノグラフモデル
カジュアルなシーンでもビジネスライクなシーンのどちらでも利用できるクロノグラフである【グランドセイコー】SLGC001、【ベル&ロス】BR05 CHRONO BLACK STEEL、【ノルケイン】フリーダム60クロノの3つをご紹介します。
【グランドセイコー】SLGC001「テンタグラフ」
SLGC001は日本で初めての腕時計を、そして世界で初めてのクォーツ時計を作り上げたセイコーから派生した、高級時計ブランドのグランドセイコーが手掛けるクロノグラフです。ブランド史上初となった機械式クロノグラフモデルであり、その特徴である、『TEN beat（10振動）』、『Three days（3日間持続）』、『Automatic（自動巻）』、『ChronoGRAPH（クロノグラフ）』から、TENTAGRAPH（テンタグラフ）と名づけられています。
岩手山パターンと呼ばれる有機的なディテールが刻まれたダイアルは、3つのインダイヤルが搭載されており、4時位置には日付表示を配置。比較的多い情報量がシンプルにまとめられており、無駄の無さゆえに視認性は抜群です。また、耐傷性の高いベゼルにはタキメーターが刻まれており、モータースポーツと関わりが深いクロノグラフモデルの本質が強調されています。
デザインはグランドセイコーの次世代デザインコードを採用。重心を落としたケースに、幅広のブレスレットは優れた着用感に貢献しています。また、サイズ感は直径43.2mm、厚さ15.3mmと、スポーツモデルとしては一般的ですが、ブライトチタンを採用しているため、比較的軽やかに着用することができます。加えて、10振動のハイビートモデルゆえに精度も安定しているため、デイリーユースにふさわしいクロノグラフモデルと呼べるでしょう。
【ベル&ロス】BR05 CHRONO BLACK STEEL
＞【ベル&ロス】BR05 CHRONO BLACK STEEL
ベル&ロスは、航空機や宇宙船に搭載する機器の専門家が集まり結成された背景を持つ時計ブランドです。過酷な環境に常に挑戦する人々のニーズに応えるモデルを発表し続け、パイロットやダイバー、レーサーに愛されています。中でも、BR05シリーズは2019年に登場したばかりのニューフェイスです。これまでの航空機器へのオマージュを残しつつも、シティウォッチとしての新たな適性を見出したコレクションとなっています。
このBR05 CHRONO BLACK STEELは、BR05のフェイスにクロノグラフを搭載することで、優雅さと力強さを醸し出し、クールな男性らしさが表現されたモデルです。落ち着いた印象を放つサテン仕上げと高級感や華やかさを表現するポリッシュ仕上げがバランスよく用いられたケースとブレスレットには、細部に至るまでのこだわりを感じ取れるでしょう。
42ミリのスクエアケースは手首でひときわ輝き、強烈なインパクトを与えます。サイズは大きいながらもブレスレットの落ちる角度は綿密に計算されているため、どのような場面でも手首にフィットし、快適な装着感が実感できます。
9時方向と3時方向にそれぞれ配置された30分積算計と60分積算計は、角が丸みを帯びた四角形とスネイル装飾が施されたネオレトロなデザインも魅力となるでしょう。
60年代の洗練されたテイストを持つ「フリーダム60クロノ」
ノルケインの「フリーダム60クロノ」は、1960年代の洗練されたスイス時計のヴィンテージテイストを持つ正統派なデザインが魅力のクロノグラフです。
文字盤に奥行きを感じさせるドーム型サファイアガラスがクラシカルな印象を演出。「NORQAIN」ステッチが施されたアンティーク感漂うレザーストラップ、細部までハンドメイドにこだわる理念が感じ取れます。
ストラップは4種類から選ぶことができます。ステンレススチール製ブレスレット、パーロンラバーストラップにくわえて、tide ocean SAとのパートなシップにより開発した海洋プラスチックを原料にしたアイボリー色のリネン「ノータイド」ストラップ、ブラウンカラーの「アルカンタラ」ストラップから選ぶことができます。
ケースサイズは、40ミリと43ミリの2つのラインナップです。40ミリのケースにはロイヤルブルーの文字盤が採用されており、外周やサブダイヤルのホワイトとともに高級感溢れる雰囲気を演出しています。
クロノグラフのメリット
クロノグラフのメリットは、以下の3つです。
・ストップウォッチ機能が使える
・多機能モデルならさまざまなものを計測できる
・スタイリッシュなデザインを楽しめる
それぞれのメリットを見ていきましょう。
クロノグラフのメリットとしてまず挙げられるのが、ストップウォッチ機能が使える点です。通常の腕時計でも時間の計測は可能ですが、元々の機能に組み込まれていない分、少々使いづらさを感じるでしょう。一方でクロノグラフなら、時刻を表すメインの針とは別に時間を測れる針やメーターがついているので、任意の時間を計測しやすくなります。
中には多機能型のモデルも登場しており、タキメーター（速度計）、テレメーター（距離計）、パルサメーター（脈拍計）、アズモメーター（呼吸計）などが搭載されているものもあります。
また、防水性をはじめとする耐久性を重視していることから、スポーツの場面で役立つモデルも多く、スタイリッシュなコーディネートを楽しめる点もクロノグラフのメリットと言えます。時間を計測するだけでなく、アクセサリーとしてファッションのアクセントに取り入れるのもいいでしょう。
クロノグラフのデメリット・注意点
クロノグラフの購入を検討している方は、メリットだけでなくデメリットも押さえておきましょう。クロノグラフのデメリットには、以下のものが挙げられます。
・ケースが大きい
・修理費用が高い
ケースが大きい
クロノグラフには通常の分針・秒針に加えて、30分計や12時間計が搭載されているため、自ずとケースが大きくなってしまうことです。
ケースが大きいと存在感がありますが、目立つので利用シーンが限られたり、重量があるため疲れを感じやすくなったりします。クロノグラフは平均的に40ミリ以上のサイズが多く、腕周りが細い女性の場合オーバーサイズになる可能性があるでしょう。
また、ムーブメントにクロノグラフモジュールを搭載したモデルについては、自ずとケース自体も厚くなる点もデメリットと言えます。
修理費用が高い
小窓が存在する分、通常の時計と比べてどうしても修理費用が高くなってしまう点です。クロノグラフを長く使いたい方は、ある程度修理費が必要になる点は念頭に置きましょう。
続いて、クロノグラフの注意点を4つご紹介します。
・ボタンは正しい順序で押す
・ストップウォッチ機能は寿命を短くする
・強い衝撃を与えない
・定期的にメンテナンスする
ボタンは正しい順序で押す
ボタンは「スタート→ストップ→リセット」と正しい順序で押さなければ故障の原因となります。基本的にスタート／ストップボタンを押すとクロノグラフ秒針と積算計が同時に動き始め、もう一度押すと停止し、リセットボタンで再び元の位置に戻ります。クロノグラフは精密な機構を採用しているため、必ず説明書通りの操作を心がけるべきです。
ストップウォッチ機能は寿命を短くする
機械式クロノグラフは、メインダイアルと同じくゼンマイがほどける動力を利用するので、頻繁にストップウォッチ機能を利用すると巻き上げ回数が増えて、部品の劣化が早まる恐れがあります。
かといって、なるべく負荷をかけないようにとストップウォッチ機能を利用せずにいると、不具合が生じる可能性もあるため、注意が必要です。適度にストップウォッチ機能を稼働させると、長く使い続けることができます。
強い衝撃を与えない
いくら耐久性のあるモデルでもクロノグラフは複雑なパーツがいくつも組み合わさっているため、強い衝撃を与えないように注意しましょう。激しい運動の際は特に慎重に取り扱い、保管する際もケースに入れて丁寧に管理することがおすすめとなります。
定期的にメンテナンスする
長く愛用できるようにメンテナンスは定期的に行いましょう。正しく動作し一見不具合がないように見えても、内部パーツが摩耗している可能性があります。腕時計を全分解し、全てを洗浄するオーバーホールを利用するのも重要と言えます。
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クロノグラフの仕組みとは?
クロノグラフは、いくつかの種類の作動方式と伝達方式が組み合わさって動いています。
クロノグラフの一連の流れを制御する作動方式は主に、コラムホイール式と作動カム式の2つです。いずれも常時動いている時計にクラッチを介して接続して、ストップウォッチ機能を作動させる点が共通しています。
高い技術力が求められるコラムホイール式は耐久性と操作性に優れ、自社製ムーブメントに多く見られる方式です。一方の作動カム式は、ボタンが固い感覚はあるものの、諸コストが低く大量生産に向いています。
クロノグラフにいかにして動力を伝えるかを決める機構である伝達方式には、キャリングアーム方式、スイングピニオン方式、垂直クラッチ方式などがあります。
キャリングアーム方式は、メカニカルな見た目が特徴的な伝達方式です。シンプルで古典的な仕組みですが、消耗しやすいという特徴があります。水平クラッチ方式という名前でも呼ばれます。スイングピニオン方式は、低コストで量産が可能な伝達方式で、多くのクロノグラフで採用されています。垂直クラッチ方式は、垂直に重ねるためムーブメントの厚みは出るものの、針飛びしにくく精度の高い計測ができる点がメリットです。
基本はクラッチを介して動力を伝えますが、クラッチがない独立輪列方式なども存在します。
クロノグラフの種類
他にも、クロノグラフは以下の4つの種類があります。
・フライバッククロノグラフ
・レガッタクロノグラフ
・ワンプッシュクロノグラフ
・スプリットセコンドクロノグラフ
それぞれのクロノグラフの概要を見ていきましょう。
フライバッククロノグラフは、Fly（飛ぶ）とBack（戻る）が語源になっており、計測中にリセットボタンを押すことで、すぐに計測をリスタートできます。通常のクロノグラフは、「ストップ→リセット→スタート」と3回ボタンを押さなければならないのに対し、1回で済む点が特徴です。
レガッタクロノグラフは、通常の機能に加えてカウントダウンが搭載されています。ヨットレースなどでカウントダウンを行うために開発された背景があり、モデルによっては、最大10分間カウントダウンできるものもあります。
ワンプッシュクロノグラフは、1つのボタンでスタート、ストップ、リセットを行えるタイプです。アンティークや復刻モデルとして見られ、おしゃれな雰囲気が際立ちます。
スプリットセコンドクロノグラフは、通常のクロノグラフ秒針に加えもう1本秒針がついており、同時にふたつの時間計測ができる機能です。さらにプッシュボタンも通常は2つですが、スプリットセコンドクロノグラフには3つ付いている特徴があります。通常のストップウォッチ機能よりさらに複雑な測定ができる機構です。
スプリットセコンドクロノグラフの商品が珍しいのは、非常に繊細かつ高い技術力が必要なためです。
まとめ
計測方法や搭載されている機能の有無から、いくつかの種類に分けられるクロノグラフは多機能な分、ケースが大きくなりがちで諸費用もかかる傾向にあります。
しかしそれ以上に、洗練されたスポーティーなデザインや、操作できる感覚が男性に受け、いくつものメーカーから多くのモデルが排出されています。購入を考えている方は、ビジネスシーン、カジュアルなシーンのどちらで利用したいかを軸に選ぶといいでしょう。
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