台上に配置したSBGA211の写真

【グランドセイコー SBGA211 SBGA011】
一番人気モデル「雪白」の魅力を再確認!

腕時計の本質に迫るデザイン、匠の技で表現される独自の審美感で、国内外問わず高い人気を誇る日本のウォッチブランド、グランドセイコー。複雑機構であるコンスタントフォースとトゥールビヨンを組み合わせた「T0 コンスタントフォース・トゥールビヨン」を生み出すなど、その技術力は世界が認めるところとなリました。

当記事では、そんなグランドセイコーのコレクションから、定番モデルとも呼ばれる「雪白」モデルについて、人気のワケを今一度振り返ってご紹介したいと思います。

ちなみに、「雪白」とかくと「ゆきじろ」であったり「せっぱく」と読まれがちですが、このモデルに関しては、「ゆきしろ」と読みます。

 

 

雪白文字盤モデルの歴史【SBGA211とSBGA011】

グランドセイコーはもちろん、名だたる腕時計ブランドがどんなに技術力を注ぎ込んだコレクションであっても、基本的にどこかのタイミングでディスコン、つまり廃盤を迎える可能性があるのは仕方のないことだと思います。

特に、一年に何本も新作モデルをリリースするようなブランドは入れ替わりが激しく、いつの間にかカタログから探している型番が消えていることもあり得ます。

しかしそんな中、10年以上グランドセイコーの一線級に君臨し続けるモデルが存在します。

それこそが、ご存知SBGA211(または先行機のSBGA011)。通称「雪白」と呼ばれるスプリングドライブモデルです。

この雪白文字盤モデル「SBGA011」が発売されたのは2005年のこと。スプリングドライブが誕生した翌年にリリースされました。

Yukishiroモデルを上から眺める画像

そのデザインコンセプトは、グランドセイコー誕生の地である信州の景観。

ムーブメントの輪列や軸受で隆々とした穂高連峰を、ダイヤルでそこに降り積もった雪を表現し、グランドセイコーの底知れぬ審美感を体現する一本として大いに人気を集めました。

その後、セイコーからのブランド独立に際しSBGA011は廃盤となり、2017年にわたしたちがよく知るところである「SBGA211」として再リリースされることとなります。

もちろん、再リリースと言ってもその違いは微々たるもので「SEIKO」のロゴが廃されただけ。他は材質から腕時計全体の重さに至るまで全く同じもので、むしろ、盤面のロゴが占める割合が減ったことにより、さらに文字盤の美しさが強調されるという利点がありました。

SBGA211の文字盤を写した写真

こうして、SBGA011およびSBGA211は誕生から今日に至るまで人気を集め続け、15年以上経った今では「雪白」や「スノーフレーク」という愛称が付けられるまでになったのです。

では、なぜここまで雪白文字盤モデルが人気を集めたのか、その人気のワケを隅々まで注目して、探っていこうと思います。

 

 

信州に降り積もった雪を再現した文字盤

まず初めに、その最たる特徴である雪白文字盤について解説していきます。

そもそも、腕時計において白色の文字盤というのは定番中の定番であり、ビジネスからカジュアルまで使いやすいカラーリングです。しかし、オシャレというより無難という印象のある白文字盤は、腕時計にちょっとした個性、こだわりを演出したい人からすると選ばれにくい色であるのも確かです。

そんな人たちのニーズにかっちりとハマるのがこの雪白文字盤なのです。

SBGA211の文字盤の全容を写した写真

雪白文字盤はただ白いだけの文字盤ではなく、非常に細かい凹凸によるディテールが刻まれています。これは山肌に降り積もった雪原に強い風が吹くことによる風紋を表しており、他にない個性を盤上に演出しています。

 

SBGA011文字盤の製造過程を示した様子

この風紋の表現は熟練の職人が削り込んだ金型を、文字盤の原型となる真鍮にプレスすることによって作られます。要は先にディテールを刻んでから文字盤を白くしているわけですね。

しかし、この白く染め上げるという工程が難関でした。ただ塗料で白く塗ればいいだけのようにも思えますが、こと雪白文字盤に限ってはそうはいかなかったのです。

当たり前のような話ですが、文字盤を白色に塗ると塗料がのってその厚みが増します。フラットな文字盤であればそこから磨き上げることでなめらかな表面を作り出せますが、雪白文字盤の場合せっかくプレス加工したディテールが塗料によって埋まってしまい、雪白らしさが損なわれてしまうのです。

これには当時雪白文字盤の開発にあたっていたグランドセイコーの匠たちを悩ませました。

そこで考え出されたのが、銀めっきの使用による文字盤の白色化でした。
銀めっきは可視光の反射率が非常に優れているため、表面に光沢がなければ白く光を反射します。ここに匠たちは突破口を見出しました。

SBGA211の雪白文字盤をズームした写真

結果的にこの試みは成功し、匠たちはミクロン単位まで薄く銀めっきをすることによりテクスチャーを残したまま文字盤を白く染め上げることに成功しました。

また、この凹凸は視覚的に立体感を与えると同時に光の当たる表面性を増やす効果もあり、結果的により白く見える文字盤が完成したのです。

こうして、白を使わない純白の文字盤はグランドセイコーの匠の技の象徴として、手元に個性を表現できるモデルとして長く愛されることとなりました。

陽光に照らされた雪白文字盤

ちなみにグランドセイコーによると、1971年にリリースされていた「56GS」とその文字盤の型打ちサンプルが雪白文字盤の誕生のきっかけだそうです。

56GSのサンプルを写した写真

 

 

隠れた名脇役、ブルースチールの秒針

SBGA211のブルースチール秒針の写真

さて、この腕時計の美意識を作り出すのは何も文字盤だけではありません。信州の荘厳な雪景色、その表現を高める意匠がもう一つ組み込まれています。

それが、ブルースチールの秒針です。

青色の秒針はクラシカルな時計によく用いられる、なんてことのない意匠のようにも感じられますが、この雪白文字盤に限り、強いシナジー効果を生み出します。

例えば、あなたが広大な雪原を思い浮かべる時、頭上にはどんな空が広がっているでしょうか。おそらく、一点の曇りのない青空を想像するのではないでしょうか。それほど白色と青色は最高の相性を誇ります。

SBGA211はその抜群の相性にスプリングドライブのスイープ運針を加え、盤面に信州の雪景色を見事に作り上げたのです。

SBGA011ブルースチール秒針の様子

ちなみにこの秒針も、雪白文字盤と同じくその色合いに塗料は使用されていません。青焼きによってその色彩が作られています。

青焼きとは
焼き入れしたスチールをゆっくりと加熱すると表面に酸化皮膜が生じ、硬さや粘りの変化とともに全体が特定の色に覆われます。この時、大体300度ぐらいで加熱すると錆びにくく強い材質となり、綺麗な青色に染まります。これを青焼きといいます。

もちろん原理がわかったとしても青焼きは簡単にできるものではありません。わずかな温度の違いで色の仕上がりは変化してしまうため、1mmにも満たない太さの秒針に焼きを入れるのはかなりの技術を要することでしょう。

このブルースチールの秒針もまた、グランドセイコーの技術力の高さを象徴していることがお分かりいただけると思います。

 

 

美しい1秒を刻むスプリングドライブ

グランドセイコースプリングドライブの様子

グランドセイコーの生み出した独自ムーブメント、スプリングドライブ。
このブランドの象徴とも言えるスプリングドライブが、数ある雪白文字盤モデルに多く採用されているのはご存知でしょうか。

スプリングドライブの構造を簡潔に説明すると、機械式時計とクォーツ式時計のハイブリッドと言えるかもしれません。
クォーツ式時計のように水晶振動子をもとにした調速機構を搭載し、機械式時計のようにゼンマイによって1秒を刻みます。この機構によって、スプリングドライブはぜんまい駆動としては異例の精度と、クォーツ式にはないパワフルなトルクを実現しています。

スプリングドライブの運針の様子を動画でご確認ください!

雪白文字板にとって重要なのは、このスプリングドライブの運針がスイープ運針であるということです。

スプリングドライブは、クォーツ式時計のように1秒ずつ刻むわけでなく、かといって機械式のように1秒を細かく刻むこともありません。文字盤の上で止まることなく滑るように進むのです。
この運針は雪白モデルの持つ情緒を強調し、雪原の上をゆっくりと流れる時間を象徴しているかのように思わせます。

スプリングドライブというグランドセイコーの独自ムーブメントについて詳しくはこちらのページもご覧ください。

 

 

強く、軽く、美しいケース

SBGA211ブライトチタンを使用したケースを横から見た様子

デザイン面以外でSBGA211が選ばれる理由を考えるなら、ブライトチタンをケース素材に採用している点が挙げられるでしょう。このブライトチタンは軽く、腐食しにくく、傷がつきにくいという性質を備えており、GSの研磨技術によって特有の輝きが作り出されています。

このブライトチタンの軽やかさは、スプリングドライブというムーブメントとも相性抜群なのはお気づきでしょうか。

スプリングドライブはグランドセイコーの技術力の結実ともいうべくムーブメントですが、他のムーブメントに比べて厚いという欠点があります。この厚さのためにケースが大きくなり腕時計の重量は重くなりがちですが、素材にブライトチタンを用いれば、その問題を解決できます。

SBGA211のブレスレットを写した写真

実際、このSBGA211の重さは脅威の100g。他のステンレススチールモデルと比べ非常に軽やかに扱うことができます。

 

 

SBGA211のサイズ感、使用感、ラグ・バンド幅は?

SBGA211のリストショット

SBGA211のケースサイズは41mmの大きすぎず小さすぎない平均的なケースサイズとなっています。
厚みは12.5mmと控えめに存在感を主張するものとなっており、非常に使いやすいサイズ感が魅力と言えるでしょう。チタンケースが持つ軽やかさが生み出す良好な使用感も魅力となっています。

SBGA211のりゅうずを写した写真

さりげなく個性を主張できる雪白文字盤やデイト機能を活かし、スーツスタイルや落ち着いたコーディネートで抜群の相性を見せてくれるでしょう。
また、ラグ幅(バンド幅)は20mmで、グランドセイコーが販売しているレザーバンドへ交換できるようになっています。

SBGA211のデイト機能を写した写真

 

 

37mmのクォーツモデル「SBGX355」も登場!ペア、シェアウォッチにも

SBGX355のリストショット

2024年には同じ雪白文字盤を備えた新作として、37mmのクォーツモデルも登場しています。スイープ運針は備えていませんが、クォーツを採用したことで手に入れやすい価格帯となっており、4mmのサイズダウンは近年のトレンドにもマッチしています。

ブライトチタン採用でキズに強く、かつ軽やか。女性でも使いやすいサイズ感であるため、ペアウォッチ、シェアウォッチの選択肢にもぜひお加えください。

SBGX355とSBGA211を並べた写真

 

 

型打ち文字盤なら白樺モデル「SLGH005」も外せない!

SLGH005の盤面を写した写真

グランドセイコーからは、雪白モデルの他にも型打ちで盤面に個性を与えたモデルが多く登場しています。中でも、最も知名度の高いモデルが、新たなデザインコードである「エボリューション9スタイル」を取り入れたハイビートメカニカルモデル「SLGH005」ではないでしょうか。

グランドセイコーの機械式腕時計が作られる雫石のグランドセイコースタジオの周りにある白樺林。その寂しげながらも力強いあり方をモチーフとした型打ち文字板は、雪白モデル同様に型打ちと「めっき」によって作り上げられます。

SLGH005の盤面を写した写真

こちらのSLGH005は数々の賞を受賞したモデルであり、まさに傑作とも呼べるモデルとなっています。
詳しくはこちらのページからご確認ください。

 

 

まとめ

ここまでSBGA211の人気の理由を、搭載ムーブメント、素材、そのデザインからご紹介しましたが、一番はこのSBGA211の完成度の高さゆえだと思います。

燦然と輝く腕時計を追求するデザインと実用性、デイト機能のみというドレッシーさ、使われている素材から針の一本に至るまで、その全てがこだわり抜かれ、最高の相性を生み出していると言って良いでしょう。

ぜひあなたもグランドセイコーの誇る傑作を手に取り、ロングセラーのワケを実感していただけると幸いです。

より詳細なスペック等はこちらでご紹介しております。