【シーマスターって何種類あるの?】
オメガダイバーズの歴史と歴代モデルを徹底紹介!
オリンピックの公式タイムキーパー、月面踏査の装備品、大人気スパイ映画への採用。そして海洋の探査・保護活動に対する長年の支援。
世界的ウォッチブランドであるオメガは、もはやいちウォッチブランドという範疇を超えたその影響力を世界に示し続けてきた。
その逸話の数々から腕時計に興味はなくとも、その「オメガ」という名前と「Ω」のロゴマークを知っている人は多いのではないだろうか。
そのラインナップには、スピードマスター、コンステレーション、デヴィル、シーマスターといったアイコニックなコレクションを中心に、我々の幅広いニーズに応えてくれる多彩なラインナップが展開されている。
さて、今回はそんなオメガのラインナップの中でも、ダイバーズウォッチとして類まれなる人気を見せるシーマスターシリーズをピックアップ。
実はこのシーマスターというタイムピースは、現代の多くのオメガウォッチの基礎とも呼べる存在であるのはご存知だろうか。
ここではシーマスターの辿ってきた歴史とその歴代モデルに加えて、現在ラインナップされているシーマスターの種類について一挙にご紹介しよう。
なお、もう一つのアイコニックなタイムピースであるスピードマスターについてはこちらのページで紹介している。スピードマスターについて詳しく知りたい方はこちらも参考にしていただきたい。
目次
シーマスターの誕生とその歴史
多彩なシーマスターシリーズの紹介に先駆けて、まずはシーマスターという時計について、その誕生や歴史について詳しく解説したいと思う。
オメガダイバーズ、シーマスターの誕生
時計ブランドとして史上初めてオリンピックの公式タイムキーパーに選ばれた1932年、オメガはもう一つ世界で初めてのことを成し遂げた。
それが世界初の一般向けダイバーズウォッチ、「マリーン」の市場化である。
135m防水という当時としては圧倒的な防水性を誇ったマリーンは瞬く間に人気を集めることとなり、ダイビングのプロフェッショナルにも選ばれるタイムピースの誕生は、間違いなくオメガというウォッチブランドの先進性を証明することとなった。
そして、このマリーンの誕生から16年後の1948年、ついにオメガの永遠のシンボルが誕生した。
初代シーマスターの誕生である。
ブランドの創業100周年を記念して誕生したこのタイムピースは当初軍用ウォッチを想定して作られており、現在のような潜水に特化したタイムピースではなく、陸、海、空とまでさまざまな場面で使えるように設計されていた。
現在は潜水時計のシーマスター、クロノグラフのスピードマスター、耐磁性のレイルマスター(耐磁性はコーアクシャルマスタークロノメーターの台頭でほとんどのモデルに標準実装されているが)と、それぞれのモデルで異なる環境に合わせた設計がなされているが、これらのタイムピースは元を辿れば全てこのシーマスターに集約するのである。
つまりこの初代シーマスターこそ、現代のオメガ・プロフェッショナルウォッチの先駆けとも言える存在なのだ。
シーマスターの耐久性の証明
1956年になると、シーマスターはプロフェッショナルウォッチとしてのその真価を問われることとなった。
シーマスターはその性能評価試験の一環として普通航空便の外装部に縛り付けられ、9時間にも渡る航空を課されたのである。
この航空便はカナダ発アムステルダム行のものであったが、北極上空を経由するルートであったため、シーマスターは9時間もの間、強烈な雨と風、過酷な温度環境に晒されたことになる。
その結果、アムステルダムに到着したシーマスターはしっかりと「時間を刻み、表示している」ことが確認され、シーマスターはその卓越した耐久性を手っ取り早く証明してみせた。
つまり、現代にも続くシーマスターの実用性の高さは初代モデルから既に確立されていたのである。
プロフェッショナルシリーズの登場
北極上空横断の翌年の1957年には、シーマスターをベースに3つの伝説が生まれることとなる。
現在のオメガウォッチの根幹を担い、復刻モデルでも絶大な人気を誇るスピードマスター、レイルマスター、シーマスター300の登場だ。
速度や時間の計測に徹したスピードマスター、潜水性を高めたシーマスター300、そして耐磁性に重きを置いたレイルマスターと、それぞれに違った強みを備えるこの3本。
オメガはアイコニックなこの3本によって新たにプロフェッショナルシリーズを打ち出し、のちのラインナップの基盤を作り上げたのである。
結果、この1957年はオメガというブランドにとって最も重要な1年となり、現在でもこの1957年にインスピレーションを得たモデルが登場している。
そしてシーマスターシリーズはこの1957年のシーマスター300の誕生を皮切りに、そのラインナップをさらに豊富かつ多彩に展開することとなった。
現行シーマスターシリーズの種類を一挙にご紹介
シーマスターの種類はマイナーチェンジや細かなバリエーションを含めると非常に多岐にわたるが、基本的に現行シリーズはアクアテラ150M、ダイバー300M、プラネットオーシャン600M、ヘリテージコレクションの4つで構成されている。
ここからは、シーマスター300を起源として今もなお増え続けるオメガダイバーズのラインナップ、種類について詳しく紹介したい。
一部、現在では廃盤となったモデルも紹介するが、オメガのシーマスターが辿ってきた歴史として目を通していただけると幸いだ。
なお、現行のシーマスターシリーズはほぼ全てのモデルにコーアクシャルマスタークロノメーターのムーブメントが搭載されており、卓越の耐磁性と高精度を備えている。
このムーブメントについて詳しくはこちらの記事を参考にしていただきたい。
シーマスターアクアテラ150M
「海と地球」を意味するシーマスターアクアテラは、シーマスターのシンプルライン「シーマスター120」の後継機モデルとして、2002年に誕生。
その名の通り120m防水であったシーマスター120を150m防水に改良し、よりオーシャンテイストを際立たせたシリーズだ。
2002年の初リリースから2度のアップデートを経た現行機の審美性は研ぎ澄まされており、溢れんばかりのその気品こそこのシリーズの魅力と言えるだろう。
特に、アクアテラは独自のストライプ模様である、チークコンセプトと呼ばれるダイヤルのモチーフが印象的だ。
クルーザーのウッドデッキを想起させるこの意匠はアクアテラに一層の個性を与え、他のシーマスターにはないエレガンスの立役者となった。
また、他のシーマスターに比べ無骨さが抑えられた流麗なデザインはリゾートシーンはもちろんカジュアルにも対応し、カラーにさえ気を使えばビジネスでも大きな活躍が期待できるだろう。
アクアテラにはかつてはクォーツモデルも登場していたが、現行機においては自動巻メカニカルモデルが主であり、高い耐磁性と精度を兼ね備えたコーアクシャル・マスタークロノメーターをもれなく搭載している。
それによりシーマスター120のシンプルダイバーズ路線を維持しながらも実用性を獲得しており、その洗練されたスタイルと合わせて非常に扱いやすいシーマスターと言えるだろう。
ちなみに、アクアテラの旧型と新型の見分け方としては日付表示機能の位置やそのストライプの方向を見ると手っ取り早い。(写真は旧型モデル)
アクアテラは最新のモデルチェンジによって、よりシンメトリックなデザインが採用され、カレンダーの位置は初代から貫かれてきた3時位置から6時位置に変更されている。
また、従来では独特な波模様や縦ストライプが主流であった文字盤が、一部モデルを除き横ストライプのチークパターンに統一されていることも見分け方の基準になる。
アクアテラを購入される際はぜひ参考にしてみてほしい。
シーマスターアクアテラは2022年の新作お披露目では新しく38mmのコンパクトモデルが発表された。
オメガの38mm径はレディースモデルが主流であるが、今回は男性向けのモデルも用意されており手首の細い人に嬉しいリリースとなった。
カラーリングは鮮やかなレッドを含む4カラーが登場しており、チークパターンではなくサンレイ文字盤が採用。ただでさえ使いやすかったアクアテラはさらに幅広い需要に応えられるようになった。
アクアテラについてはこちらのページでも詳しく解説しているので参考にしていただきたい。
スモールセコンドモデル
アクアテラのようにエレガンスを意識したモデルであれば、やはり外せないのがスモールセコンドの採用だろう。
盤面にクラシカルさを与える役割だけでなく時計自体の厚みを減らすことができるスモールセコンドは、エレガンスを必須とするドレスウォッチにおいて最も好まれやすい仕様の一つだ。
オメガは2021年にこのスモールセコンドを搭載したアクアテラをリリース。新たに6時位置にサブダイヤルを配置することで、さらにそのデザインの多様性を示すことに成功している。
加えて、サブダイヤルにはあえてチークパターンを使わないことで文字盤にアクセントを与えており、スタンダードなアクアテラとの住み分けもきっちりとなされている。
スモールセコンドというありふれた機能でダイヤルの雰囲気をガラリと変えた、オメガのセンスが光るタイムピースと言えるだろう。
ワールドタイマー
シーマスターアクアテラにGMT機能を搭載し、オンリーワンのビジュアルを見せるのがこのワールドタイマーだ。
文字盤中央には上質なチタン素材であるグレード5チタンが配され、精密なレーザー加工によって見事にオーシャンブルーと大地を表現。その地球を表したかのような美しいデザインは、アクアテラ(水の大地)と言うモデルにこそふさわしい意匠と言えるだろう。
シンプルな文字盤の多いオメガの中でも特に異質な輝きを放つタイムピースながら、チークパターンとツートンカラーのGMTリングでまとめ上げられたウォッチフェイスは圧巻の一言だ。
GMT機能には世界主要都市のタイムゾーンを参照できるワールドタイムが採用。
文字盤外周に主要都市の名前が配されており、その中にオメガ本社が位置する小都市ビエンヌがさりげなく含まれているのはご愛嬌だ。
2017年に限定モデルとして発表され、2019年にはレギュラーモデルに加わった本作。自分の時計に最大限の個性が欲しい人はぜひともチェックすべき一本だ。
ウルトラライト
スポーティテイストを充実させるのではなく、より本格的かつ実践的なスポーツシーンに耐えうるよう作られたアクアテラがこのウルトラライトだ。
素材に2種類のチタンを使ったこのモデルは特別製のファブリックベルトを備え、57gという驚くほどの軽さを実現。
通常のアクアテラの3分の1ほどに重さを抑えた超軽量型のタイムピースとなっている。
この軽量化は、航空分野でも用いられるほど軽量かつ強靭なチタン素材「ガンマチタン」の採用によるものであり、オメガはこのガンマチタンをウルトラライトで初めて腕時計に採用するに至っている。
りゅうずを収納できるため着用者のアクティビティを一切邪魔することはなく、人間工学に基づいたその着け心地は究極のアスリートウォッチと呼ぶにふさわしいだろう。
アクアテラのみならず、全シーマスターコレクションの中でもハイエンドラインに位置するウルトラライトだが、オメガ渾身のスポーツウォッチとしてぜひとも注目したい一本だ。
シーマスターダイバー300M
シーマスター300の登場でダイバーズウォッチとしての地位を確立したシーマスターは、1993年に新たなシリーズとしてシーマスタープロフェッショナルダイバー300M、通称「プロダイバー300M」をリリースした。
このモデルこそ、現在のシーマスターダイバー300Mの先駆けとも呼ぶべき存在だ。
300mにも及ぶ高い防水性能に加え、ダイビングベゼルやヘリウムエスケープバルブといった専用の機能が採用されたこのモデルは、従来に比べより実践的な潜水が想定されたまさにプロフェッショナルの名にふさわしいタイムピースであった。
ちなみにヘリウムエスケープバルブについて詳しくはこちら。
プロダイバー300Mはそのあまりの本格派ゆえ、一般生活ではなかなか活かすことのできないオーバースペックモデルではあったが、プロからも支持を受けるそのロマン性能に心惹かれる人は多く、瞬く間にオメガの主力シリーズへの仲間入りを果たすこととなる。
特に映画への採用は大きな話題を呼び、腕時計ファンだけでなく映画ファンからも愛される腕時計であった。
そして、このプロダイバー300Mが現在のダイバー300Mへと名前を変えたのは2018年のこと。
シリーズ25周年となるこの年に、我々がよく知るシリーズ名とフォルムへとフルモデルチェンジが敢行された。
そのメインムーブメントにコーアクシャルマスタークロノメーターを新たに据え、ダイバー300Mは高い防水性、耐磁性、精度を兼ね備えたなんともハイスペックなタイムピースへと生まれ変わったのである。
また、存在感のあるダイバーズウォッチというカテゴリながら、フルモデルチェンジによってダイバー300Mは曲線美を際立たせる独自のスタイルを確立してみせた。
素材とカラーリングを使い分ければ、さまざまなシーンで本格派ダイバーズウォッチとしては規格外の働きを見せてくれることだろう。
しかも、これだけ便利なタイムピースでありながら、その価格帯は本格派ダイバーズウォッチとしては非常にお手頃であり、オメガのエントリーモデルとしての選択も是非ともお勧めしたいシリーズだ。
セラミックモデル
オメガはこれまでにさまざまな素材をケースに採用しており、中でもセラミック素材を多彩なモデルのケースやベゼルで活用してきた。
特にスピードマスターではフルセラミックモデルをダークサイドオブザムーンと名付け、一大シリーズとしてラインナップするほどセラミックを特別な素材として扱っている。
そんなセラミックはダイバー300Mにおいても同様に活用されており、一種のバリエーションモデルとしてフルセラミックモデルが登場している。
中でもブラック ブラックと呼ばれるモデルは黒一色のビジュアルでありながら、素材の仕上げの差に加え輝度に優れるスーパールミノバを使用することで視認性を確保した、非常にトリッキーなモデルとなっている。
クロノグラフモデル
防水性を備えたシーマスターにモータースポーツや陸上競技で役立つクロノグラフ機能を搭載することで、陸上での実用性までも高めたモデルがシーマスターの上位シリーズに位置するクロノグラフモデルである。
その素材にはチタンやセラミック、ゴールドなどの多彩なラインナップが揃い、カジュアルからラグジュアリースポーツまで幅広い需要に応えられるモデルだ。
2つのプッシャーとヘリウムエスケープバルブが配されたケースはなんとも迫力があり、潜水だけでなく地上での活躍も期待できる、ダイバー300Mのツールとしての側面がより強まったモデルと言えるだろう。
ボンドウォッチ
オメガウォッチの中でも比較的歴史の浅いダイバー300Mを、現在のオメガのメインプロダクトにまで押し上げたのは間違いなく映画「007」、そして、「ジェームズ・ボンド」の存在が大きいだろう。
1995年に公開された映画「007 ゴールデンアイ」でボンドウォッチに「シーマスタープロフェッショナルダイバー300M」が採用されて以降、現在に至るまで歴代のジェームズ・ボンドたちはシーマスターとともに任務を遂行してきた。
このダイナミックなスパイ映画への採用はシーマスターダイバー300Mの名を世界に轟かせたのみならず、同時にこのタイムピースの持つ卓越したタフネスを証明したのである。
もちろんそんなボンドウォッチに対しオメガがインスピレーションを見出さないはずもなく、これまでにオメガは限定モデルを含め、映画「007」とのコラボウォッチをいくつもリリースしてきた。
そんなボンドウォッチの中でも現在我々が最も入手しやすいのは、2021年に公開されたばかりの映画「007 ノータイムトゥダイ」でダニエル・クレイグが着用していた210.92.42.20.01.001「007エディション」だろう。
このモデルはダニエルクレイグ自らが監修したスペシャルなダイバー300Mであり、チタン素材を全体に使うことで”軽さ”に特に重点をおいたタイムピースだ。
軽やかで堅牢、そして潜水にも耐えうるこのモデルは、まさにスパイの相棒にふさわしいタフネスを秘めたタイムピースに仕上がっている。
デザイン面では、ボンド家の紋章など007ファンに嬉しい数々の装飾があしらわれており、若干のクラシカルさすら感じるブラウンスーパールミノバで暗所の視認性も抜群。
実用性を確保しつつもエレガンスを忘れていない、強さの中に色気を感じるまさにジェームズ・ボンドのようなタイムピースとも言えるだろう。
現在でも需要と供給が釣り合わない超人気のモデルだが、ダニエル・クレイグ演じる最後の「007」のボンドウォッチとして、何ヶ月も待つ価値のあるタイムピースであることは間違いない。
シーマスタープラネットオーシャン
2005年、オメガはシーマスターダイバー300Mの上位モデルとも呼ぶべき、更なる深海を志すタイムピースをリリースした。それが600mを超える防水を実現した超本格派ダイバーズライン、プラネットオーシャンである。
ダイバー300Mやアクアテラは、ダイバーズウォッチらしからぬその優美なデザインで非常に使いやすいシリーズであったが、このプラネットオーシャンはより防水性へと舵を切ったシリーズだ。
スタンダードモデルはケース直径だけを見ると基本モデルが43.5mmとそこまで大きくはないが、注目すべきはその厚さと重さ。
16mmというスマートフォン2つ分ほどの厚さに加え、常に200mlの缶コーヒーを腕に乗せているような重量感を誇る、非常にマッシブなモデルに仕上がっている。
その性能はまさにプロユースだけを考えた非常に実用的なタイムピースであり、600m防水に加えてコーアクシャルマスタークロノメーターの搭載で、時計として見てもその実用性に抜かりはない。
デザイン面ではダイバー300Mとしっかり区別がされており、ダイビングベゼルの0〜15分までに印象的な仕様を採用しているのが特徴的だろう。この仕様はラバーとセラミックの組み合わせによるものであり一目でプラネットオーシャンを見分ける基準にもなっている。
また、ダイバー300Mと比べてプラネットオーシャンは鮮やかな色合いのモデルが多く、特にオメガオレンジと呼ばれる独自のカラーを採用したモデルはプラネットオーシャンだけの特権と言えるだろう。
もしあなたが、オメガダイバーズのロマンに対して求めるものが防水性であるのなら、プラネットオーシャンをぜひともチェックしていただきたい。
GMT、ディープブラック
プラネットオーシャンシリーズでは、クロノグラフやGMT機能を搭載した拡張モデルもいくつかラインナップされている。
中でもGMTモデルは白黒ベゼルで昼夜の区別をしっかりとつけており、ダイバーズウォッチらしい精悍なカラーリングと日常使いにも役立つ実用性を確保した。
そして、GMTモデルといえば上位シリーズであるディープブラックにも注目しておきたい。
このディープブラックも、スピードマスターダークサイドオブザムーンのようにセラミックを活かした屈強なモデルであり、カラーリングにはボールドカラーと呼ばれる赤と青の2色がメインカラーとなっている。
ダイバーズウォッチとしての卓越した性能はもちろんのこと、色ごとに深海で見えなくなる深度を定義付けることで、現在のおおよその水深を知ることのできるテクニカルなモデルとなっている。
海を熟知しているオメガだからこそ採用できた、実際の深海での活躍が期待できるタイムピースと言えるだろう。
ウルトラディープ
2022年に登場したばかりのプラネットオーシャンの新作「ウルトラディープ」は、これまでのシーマスター史上、最も型破りなシリーズと言えるだろう。
その防水性は、なんとこれまでのシーマスターの防水性をはるかに超える6000m防水。
直径45.5mm、厚さ18.12mmとその存在感も絶大であり、スペックとビジュアルの両面でロマンの塊のようなタイムピースである。
素材には、これまでのレギュラーモデルにはなかった新スティール素材「O-MEGASTEEL」や上質なグレード5チタンが採用され、過去最大級の外圧への強さと耐食性を実現している。
この脅威的な防水性の実現のために各所へこのモデルだけの特殊な構造が組み込まれており、水圧を効果的に外部に逃す「マンタラグ」であったり、ヘリウムエスケープバルブがなくとも内圧の変化に耐えられる強固なサファイア風防など、オメガの技術の粋を集めたスペシャルシーマスターと言えるモデルだ。
また、デザイン面でも特徴的なりゅうずガードなど一眼でウルトラディープとわかるフォルムが採用されており、幅広いベゼルと比較的小さめのダイアルを採用することで、そのダイバーツール感はいよいよ増すばかりである。
ラインナップには前述のO-MEGASTEELモデルに加えて、グレード5チタンをケースに使用しNATOストラップを装着した軽やかなモデルもラインナップされた。
さて、このウルトラディープというモデルは、もともとオメガが有人深海探査プロジェクト「ファイブ・ディープス」で使用していた特殊時計が元となっているのは有名な話だろう。
この時ウルトラディープは世界一の深さを誇るマリアナ海溝にて、従来の最大到達記録を大きく超える深度1万935mでその性能が確認され、現時点で最も深い深度に辿り着いたダイバーズウォッチとなった。
もっとも、その時使用されていたウルトラディープはプロフェッショナルの名前を冠しており、一般発売されていない完全なプロユースモデルであった。
2022年に満を辞して登場した本機はこのプロユースモデルを一般向けにリバイバルしたモデルであり、潜水性能だけに特化していたウルトラディーププロフェッショナルを一般向けに作り直したタイムピースなのである。
市場化にあたりその防水性能は6000m防水まで型落ちしてしまったが、それでも十分すぎる防水性と、より一般人にも使いやすい仕様によって、我々が手に入れられる最高峰のロマンダイバーズウォッチであると言えるだろう。
我々が人生で決して訪れることのできない世界でも輝きを放ち続けるタイムピースは、それだけで他の腕時計と一線を画す輝きを放つのである。
シーマスター300
本来ヘリテージシリーズに分類されるシーマスター300だが、現代のシーマスターの根幹とも言えるシリーズであるためここで改めてご紹介したいと思う。
このモデルは1957年に登場した3つのプロフェッショナルシリーズの一つ、シーマスターがダイバーズウォッチとしての地位を確立したシーマスター300の復刻モデルである。
この復刻モデルの登場は2017年のこと、初代モデルのクラシカルなテイストや各部のディテールを残しつつも、コーアクシャルマスタークロノメーターを搭載することで、初代へのリスペクトを込めつつも革新技術を手に入れたシーマスター300であった。
特に、セラミックを使用した艶のあるベゼルに、初代のアイコニックな意匠であったブロードアローの採用はお手本のような復刻モデルを生み出しており、老若問わない人気を集めることとなる。
そして、そんなシーマスター300は2021年に再度復刻され、更なる進化を迎えることとなった。
2度リファインされたシーマスター300はその初代モデルへのリスペクトをさらに深めており、シンプルなシーマスター300のロゴに加え、当時の懐かしのロリポップ針を採用。
加えて、ヴィンテージ感と視認性を両立するサンドイッチダイヤルを新たに採用することで、そのクラシカルなテイストと実用性に一層の磨きをかけた。
ベゼルは艶のあるセラミックから特殊な加工を施したアルミへと変更されており、全体的にマットで上品な仕上がりに統一された。
シーマスター300が持ち合わせていた気品さえも高められたと言えるだろう。
また、このタイムピースの持つヴィンテージテイストをより高めているのが、サンドイッチダイヤルとベゼルに塗布されているブラウンスーパールミノバだろう。
茶系の色合いで往年の名機のような印象を与えつつも、暗所で要所が強く輝き、ダイバーズウォッチとしても申し分のない働きが期待できる。
カラーリングには黒と青の2種類がラインナップされており、昔ながらのシーマスター300を重んじる方には黒、新色を楽しみたい方には青がオススメだ。
ブロンズゴールド
2021年の新型シーマスター300と同時にリリースされたこのラグジュアリーモデルは、ブロンズゴールドと呼ばれるオメガ独自の合金素材を使用したモデルである。
合金の素材にはゴールド、ブロンズ、パラジウム、シルバーが用いられており、柔らかなブラウン系の色合いが類い稀なるヴィンテージ感を醸し出している。
スピードマスタークロノスコープでも採用されたこのブロンズゴールドだが、その最たる特徴として色褪せないその美しさが挙げられる。
この美しさを生み出すのがその非常に優れた耐腐食性であり、天敵である酸化による緑青(青サビ)ができないため、ゆっくりと進む経年劣化によって自然な美しさが長年続くのである。
この素材は長年をともにしたい機械式時計にとってはこれ以上なくふさわしい素材であり、数十年経った頃にはきっと熟練の色香を放つヴィンテージウォッチを作り上げてくれるだろう。
ヘリテージシリーズ
先んじてシーマスター300の復刻モデルを紹介したが、基本的にシーマスターシリーズの復刻モデルであったりオリンピックのコラボモデルはこのヘリテージシリーズに分類される。
そのラインナップには初代シーマスターを復刻したリバイバルモデルであったり、マスター3兄弟の一つレイルマスターが並ぶ。
本数限定モデルであったり高い人気ゆえに手に入りにくいモデルが多いが、オメガの歴史を形作った名機を求める方はヘリテージシリーズから探してみるのもいいかもしれない。
ここではそんなヘリテージシリーズから、ウルトラディープの登場までオメガのレギュラーモデルにおいて最高峰のダイバーズツールであったプロプロフを紹介する。
シーマスタープロプロフ1200M
1970年、シーマスター300の上位モデルとして60気圧防水を実現した「シーマスタープロフェッショナル600M」がリリースされた。
おおよそ腕時計のスタンダードを外れたそのフォルムに、編み込まれたミラネーゼプレス。シーマスター史上もっともツール然とした面構えのこのモデルは、熟練の潜水士を意味するプロンジュール・プロフェッショナルの頭文字を組み合わせて、プロプロフと名付けられた。
アイコニックな回転ベゼルロック機構を2時方向に備え左側に強固なりゅうずを配したこのフォルムは、実際の潜水の際に操作する回転ベゼルを優先したものであり、潜水中の利便性の高さを追求した結果ゆえのものである。
つまり、おおよそ通常の腕時計のスタイルから逸脱しながらも、プロプロフは潜水において理想的なダイバーズウォッチのシルエットを採用していたのである。
また、その600mという防水性能はのちにシーマスター1000が登場するまで、オメガというブランドにおけるフラグシップ・ダイバーズウォッチであった。
そして2016年には、その防水性を1200mにアップデートした新生プロプロフが登場した。
コーアクシャルマスタークロノメーターを新たに搭載し、ケースとの一体感を高めることでさらに強固となったりゅうずガードに、お馴染みのベゼルロック機構、新たなブレスレットとクラスプを採用することによって、さらなるハイスペックを手に入れたダイバーズツールが完成したのである。
ミラネーゼブレスと呼ばれるブレスレットについても、驚くほどの軽さながらサメに噛まれても切れないほどの強固さによってシャークプルーフという愛称で呼ばれるまでの高い実用性を誇る。
チタンケースによって驚くほどの軽さを手に入れたモデルも登場しており、旧モデルのアイコニックな意匠は残しつつも、よりそのオーバースペックというロマンを追求した、シーマスターファン垂涎のモデルが完成していると言えるだろう。
その詳しい仕様や、りゅうず開閉ギミック等について、詳しくはこちらのページでご紹介しているのでぜひ参考にしていただきたい。
まとめ
ここでは、オメガのアイコニックなダイバーズライン、シーマスターについてその歴史やラインナップについて詳しく紹介した。
オメガの他のアイコニックなモデルといえばスピードマスターが挙げられ、その月面探査への同行というロマンはまさしく唯一無二のものと言える。
だが、シーマスターシリーズはオメガが古くから関わってきた”海への探究”というロマンだけでなく、オメガの多くの現行機のオリジナルであるというロマンも兼ね備えている。
オメガのロマンウォッチを求める方はぜひシーマスターも選択肢に加えていただきたい。