【オメガ シーマスター プロプロフ1200M】
なぜ男はダイバーズウォッチの魅力に惹かれるのか

オーバースペックというロマン

突然だが、我々は一体なぜダイバーズウォッチに惹かれるのだろうか。

はっきり言って、我々の生活において卓越した防水性が活きる機会はそう多くない。

着用したまま食器が洗えたり、雨の日でも問題ないというメリットはあるかもしれないが、それならダイバーズウォッチである必要はない。要は、潜水に耐えうるほどの防水性は要求されないはずである。

もちろん、漁業の方であったり、素潜り、水泳が趣味の方、ダイビングを専門とする方であれば、ダイバーズウォッチはなんとも実用的なタイムピースなのかもしれない。

しかし、考えても見てほしい。

あなたは数十万もかけて、もしかしたら数年のローンを組んでまで購入した高級時計を、シーズンにたった1,2回程度のアウトドアで使うだろうか。

答えはきっとNoだろう。

専門職の方でもない限り（もしくはとんでもない大金持ちか）、腕から外して泳ぐことになるだろう。なんならアウトドアで傷つくのを恐れて、家で留守番をしていてもらう人もいるかもしれない。

つまり、潜水時計としてみた場合、ほとんどの人にとってダイバーズウォッチはオーバースペックとなってしまい本質的に必要ではないのである。

だが、スポーツウォッチの中でもダイバーズウォッチは間違いなく一定の地位を獲得しており、それこそシーマスターは世界的な人気シリーズとなっている。

つまりダイバーズ愛好家たちは、もちろん無骨なそのデザイン性を好む人も多いだろうが、プロフェッショナルに向けた、ロマンとも呼ぶべきそのオーバースペックに惹かれているのではないだろうか。

前置きが長くなってしまったが、今回ご紹介するプロプロフはそんなオーバースペックについて、一般向けの時計としては間違いなく最上位に位置するモデルなのである。

伝説的オメガダイバーズ、プロプロフとは

深海で作業を行うダイバーたちに寄り添う腕時計として、1970年に発表されたタイムピース。それがシーマスタープロプロフだ。

60気圧防水を実現した旧プロプロフは、シーマスターの上位シリーズ「シーマスタープロフェッショナル600M」と位置付けられ、同時に”熟練の潜水士”を意味するフランス語、「プロンジュール・プロフェッショナル」の頭文字をもじって、プロプロフと名付けられた。

当時としてはあまりにタフかつ高価なダイバーズであったプロプロフは、その斬新なフォルムも相まって、多くのファンを獲得するに至る。

2016年登場の本作はその伝説的ダイバーウォッチを復刻した、オメガダイバーズファン垂涎のモデルと言えるだろう。

超本格ダイバーズウォッチを構成する機能

ダイバー300M、プラネットオーシャン600Mを筆頭に、本格派ダイバーズウォッチを多くラインナップしているシーマスターシリーズだが、プロプロフに関してはまさにダイバーズツールの決定版とも呼ぶべくほどのハイスペックを誇る。

ここでは、プロプロフを最高峰のダイバーズウォッチたらしめている各種仕様についてご紹介する。

 

120気圧防水という高み

プロプロフは、オメガのダイバーズウォッチ史上、一般向けモデルとしては最も優れた防水性を実現している。

その防水性は初代プロプロフの60気圧防水を大きく上回る、120気圧（1200m/4000ft）防水。もはや光も届かない深海においても、このプロプロフは輝きを失わないことが証明されているのだ。

もちろん、ほとんどの人にこの防水性を使いこなす機会が訪れることはない。しかし、このロマンに満ちたオーバースペックにこそ我々は惹かれてしまう。

きっとそれは、120気圧防水というあまりに優れた性能からオメガの海に対する熱意や、ダイバーズウォッチ開発への途方もない企業努力が見てとれるからだろう。

時計づくりの在り方、現在まで続くその技術、伝統を愛する人ほど、我々では決して引き出すことのできない究極の防水性の魅力を見出せるのではないだろうか。

 

次世代の両方向回転ダイバーベゼル

一般的にダイバーズウォッチのベゼルといえば、回転方向を一方向に固定することで時間の見誤りによる想定以上の潜水を防ぐ、逆回転防止ベゼルが多く採用されている。

しかし、プロプロフに関してはこの逆回転防止ベゼルではなく、両方向への回転が可能なベゼルが採用された。

このベゼルは2時位置の特徴的なセーフティスイッチによってロックと解放が可能であり、一般モデルの逆回転防止ベゼルに比べ高い利便性を実現した。

スイッチのプッシングに非常に強い力を必要とするため操作性は決して高いとはいえないが、その分非常に強固なロックが可能であり、予期せぬ衝撃による潜水時間の見誤りは起こり得ないだろう。

プロプロフのデザインをよりユニークに見せるスイッチは、ダイバーの命を守ってくれる回転ベゼルに欠かせないギミックなのである。

 

腕時計と人を守る
ヘリウムエスエープバルブ

100mを超えるような本格的な潜水は飽和潜水と呼ばれ、減圧症や窒素酔いを防ぐために吸気にヘリウムガスが使用されることが多い。

ここで問題となってくるのが、ヘリウムガスの時計への侵入だ。

ヘリウムは原子が小さいため腕時計の内部に入り込み、潜水後の急な減圧によって膨張、腕時計を文字通り破裂させてしまうのである。

ここで活躍するのが、腕時計内部のガスを自動的に脱気してくれるヘリウムエスケープバルブ。

腕時計の破裂を防ぐこの脱気機構こそ、ヘリウムエスケープバルブがダイバーと腕時計の両方を守る機構と呼ばれる所以なのだろう。

本機には4時位置、セーフティスイッチの逆側にヘリウムエスケープバルブが配されており、わかりやすいHeの文字があしらわれている。

 

操作性とタフネスを兼ね備える
ねじロック式りゅうず

ねじロック式のりゅうずは腕時計を外し両手で操作するのが基本的だが、プロプロフはりゅうずを左側に搭載することで、手首から外さずとも操作ができるようになっている。

また、ねじロック式のりゅうずは見ての通り完璧なガードに囲まれ、強固なケースと一体化。衝撃による内部へのダメージ、浸水の恐れを感じさせない。

加えて、このりゅうずガードはりゅうずの回転と連動して解放されるようになっており、意外と簡単に操作することができるのだ。

こういった遊び心をくすぐる開閉ギミックに心惹かれる人も少なくないだろう。

りゅうず自体は段階的な引き出しによる時針単独操作機能を備えており、時刻合わせの簡便さも魅力となっている。

 

コーアクシャルマスタークロノメーター

おそらく、旧プロプロフから最も進化を遂げたのは搭載ムーブメントと言えるだろう。

卓越した耐磁性と優れた精度を備えるマスタークロノメーター準拠のムーブメントCal.8912を搭載し、プロプロフは単なる時間を刻むアイテムとしても優れた実用性を手に入れた。

シースルーバックからのぞく機能美あふれる景観はもとより、コーアクシャルによるメンテナンスフリーさえも獲得しており、実用時計としても申し分ない性能を誇る。

 

スーパールミノバ

ダイバーズツール、ましてや腕時計であれば、暗い深海でも視認しやすくする必要がある。

そんな需要に対し、プロプロフはスーパールミノバを要所要所に採用することで視認性を確保している。

ダイビングスケール、時針、秒針の先端は水色、分針とベゼル中央のマーカーは緑色で発光するようになっており、一切光の届かない深海においても時間を刻むという役目をしっかりと果たしてくれることだろう。

ルミブライトの発光の様子を動画に収めました。ぜひご覧ください。

OMEGA シーマスタープロプロフ

1200メートル防水というロマン。
非日常を手元に演出する腕時計。
オメガ最高峰のダイバーズウォッチ。

深海でも輝く蓄光の輝きを確認してみました！https://t.co/W51iLeFvJn pic.twitter.com/1qJIdQJjnQ

? 時計 宝飾 眼鏡 ハラダ (@kk_harada) December 24, 2021

 

サメに噛まれても切れないブレスレット

丁寧に編み込まれたメッシュのブレスレットは”ミラネーゼプレス”と呼ばれ、特にプロプロフのブレスレットに関してはサメに噛まれても切れないほどの強固さから、通称”シャークプルーフ”と呼ばれる。

精巧な金属細工のようなブレスレットは驚くほど肌に馴染み、チタンモデルを選べば軽やかさまで手に入ることだろう。

1970年代の腕時計のようなクラシカルさ漂うブレスレットだが、サイズ調整は問題なく行えるようになっている。

シンボルマークであるシーホースの描かれたバックルには2種類のエクステンション（延長）システムが搭載されており、合計で50mm近いサイズの延長が可能となっている。

このバックルの延長はダイバーにとって非常に便利な機能であり、ダイビングスーツの上から腕時計を装着する際、いちいち手首周りのサイズを変更する必要がないのだ。

 

グレードチタン

強固かつ、軽量、アレルギーフリーで温度耐性も高いチタニウムは、腕時計の素材として並々ならぬポテンシャルを秘めており、オメガは独自素材「グレードチタン」をさまざまなコレクションに採用している。

本モデルでは2種類のチタン素材が使用されており、加工が難しいチタン素材ながらも、ブラッシュ仕上げとポリッシュ仕上げの多彩な使い分けを見ることができる。

 

化粧箱から見えるこだわり

ムーンウォッチをお持ちの方ならご存知かもしれないが、オメガのプロフェッショナルウォッチのほとんどはその化粧箱にまで並々ならぬこだわりが見られる。

今回のプロプロフも例に漏れず、本格的なツールボックスのような面構えを見ることができる。

ボックスの内蓋を開けると、各種ストラップに加え自力交換が可能なツールが収納済み。自分の手でなんでもやりたい時計マニアにはうれしい仕様である。

特徴的な2つのカラーリング

プロプロフシリーズからは数多くのカラーリングがラインナップされているが、今回はその中でもアイコニックな2カラーをご紹介する。

 

グレーとオレンジの色合いが鮮やかなチタンモデル

シャークプルーフからケースに至るまで、ほとんどの箇所にチタンを使用したなんとも軽やかなモデル。

グレーのダイアルにまでチタニウムが採用されており、ニス塗装が施されたオレンジとホワイトの針でギャップによる視認性を演出しながらも、見事に調和した盤面が完成している。

鮮やかなオレンジのベゼルは最近ではオメガの十八番となってきたが、その巧みな色使いはさすがといったところだろう。

 

青白カラーリングのスポーティなプロプロフ

ホワイトダイヤルとブルーベゼルやインデックスが王道的なシナジー効果を見せる、スポーティなプロプロフをピックアップ。

プロプロフシリーズの中でも最も爽やかなカラーリングであり、無骨なツールの印象が強いプロプロフがなんともスタイリッシュに感じられるタイムピースだ。

チタンケース＆チタンブレスレットで見た目以上に軽やかなモデルとなっており、各所にオレンジの差し色を加えることでクラシカルゆえのカラーリングの物足りなさもしっかりとカバーされている。

まとめ「ダイバーズツールをひたすらに追求したタイムピース」

当記事では、シーマスターの最高峰に位置するプロフェッショナルモデル、プロプロフについてご紹介した。

ダイバーズのために作られたこのモデルが、いかに洗練され、実用性のみを考えた質実剛健なタイムピースであるということが、少しでも多くの人に伝わると幸いだ。

もしかしたら世の中に存在するプロプロフの中には、もはや水没すらせず、防水性を発揮することがないまま終わっていく個体もあるのかもしれない。

しかし、それでもこのモデルの持つオンリーワンの輝きは決して薄れることはなく、最高峰のオーバースペックをもってあなたの手元に個性を輝かせ続けてくれることだろう。