腕時計には「ムーブメント」と呼ばれる動力源があり、仕組みの違いにより 「機械式腕時計」と「水晶(クオーツ)式腕時計」の2種類に大別できます。そして、もしあなたが高級腕時計の購入において、手を掛けたい、伝統を重視したいと感じるのであれば、「機械式」を選びたいところです。
今回は、初めて機械式腕時計を購入する方に向けて、機械式腕時計の種類やメリット・デメリット、選ぶ際のポイントなどを解説いたします。また、初めての方におすすめの機械式腕時計のブランドとモデルについてもご紹介します。
機械式腕時計とは
機械式腕時計とは、巻き上げたぜんまいのエネルギーを動力源として、歯車などの機械部品によって時を刻む腕時計のことです。物理的な力のみで動き続けるため、電池の力を必要としません。
一方、電池のエネルギーを動力源として駆動するのがクオーツ式腕時計です。内部に搭載した水晶の振動をもとに、IC(集積回路)が精度を制御しており、ステップモーターによって針が進みます。
クオーツ式の腕時計が1960年代後半と、比較的最近になって誕生したのに対し、機械式腕時計は17世紀には誕生していたといわれており、長い歴史と伝統を誇ります。
そのため、格式高い「高級腕時計」といわれるモデルの多くは、機械式腕時計です。
機械式腕時計の種類
機械式腕時計は、動力源となるぜんまいを巻き上げる方式によって、次の2種類に分けられます。
・自動巻き式
・手巻き式
種類ごとに仕組みや特徴を見ていきましょう。
自動巻き式
自動巻き式の腕時計は、ローター(回転錘)と呼ばれる部品を内蔵しており、腕時計を身に着けているときの動作に連動して、内部のぜんまいが自動的に巻き上がるようになっています。
一般的に、機械式腕時計は、ぜんまいが全てほどけてしまうと動きが止まってしまいますが、 自動巻き式なら身に着けているだけで巻き上がります。そのため、毎日着用しておけば、腕時計は止まることなく動き続けてくれます。この自動化された巻き上げ工程から、自動巻き式は「オートマチック」とも呼ばれます。
自動巻き式の腕時計の仕組みや歴史、魅力などは、こちらの記事で詳しく解説しています。併せてご覧ください。
自動巻き時計の仕組みや歴史、ムーブメントなど基本をわかりやすく解説!
手巻き式
自動的にぜんまいが巻き上がる機能がなく、手動でぜんまいを巻き上げるタイプが手巻き式の腕時計です。腕時計の「リュウズ」を手で回すことでぜんまいを巻き上げます。
手巻き式は、自動巻のように勝手に巻き上がらないため、一定以上の頻度でぜんまいを巻き上げないと時計が止まってしまうのがデメリットです。また、ぜんまいの巻き上げ量は精度にも影響するため、自動巻き式に比べて、腕時計としての精度が安定しにくいという課題もあります。
その反面、手巻き式は構成する部品が少ないのでケースが軽くて薄く、よりスマートな印象になるのが魅力です。また自動巻き式にあるローターがないため、ケースの裏側から内部の機構が見える「シースルーバック」のモデルで内部機構を鑑賞しやすいのも、手巻き式の良さといえるでしょう。事実、手巻きの腕時計は、各ブランドのこだわりが詰め込まれたモデルも多い印象です。
手巻き式時計の魅力やメリット・デメリットに関しての詳細は、こちらの記事でチェックしてみてください。
手巻き腕時計の魅力・メリットとは?おすすめのブランド・モデルも紹介
機械式腕時計のメリット
機械式腕時計には、次に挙げる3つのメリットがあります。
・ステータス性が高い
・長い年月にわたって使用できる
・多くの機構を搭載しやすい
以下では、一つひとつのメリットについて詳しく解説します。
ステータス性が高い
機械式腕時計は、小さな部品や数多くの歯車を緻密に組み合わせて製作されており、一般的なクオーツ式腕時計のように大量生産ができません。そのため、クオーツ式腕時計に比べて価格も高く設定されており、ステータス性も高いとされています。
高級腕時計の名門ブランドの中には、2024年現在クオーツ式を販売していないところもあるくらいです。ステータス性を重視して高級ブランドの腕時計を購入するならば、機械式を選ぶのが無難でしょう。
長い年月にわたって使用できる
機械式腕時計は、クオーツ式腕時計に比べて、長い年月にわたって使い続けられるのもメリットです。
クオーツ式も定期的に電池交換をすれば長く使うことは可能ですが、内部の電子回路が劣化すると修理できなくなることもあり、一般的には10年ほどが寿命の目安とされています。
一方の機械式は、定期的なメンテナンスを欠かさなければ、半永久的に使用できるモデルも少なくありません。大切な腕時計を子へ孫へと、代々受け継いでいくこともできるでしょう。
多くの機構を搭載しやすい
機械式腕時計は、 クオーツ式と比べてトルク(ムーブメントの回転力)が強いため、複雑な機構を搭載しやすいという長所があります。
クオーツ式はトルクが弱いため、GPS通信などの電子的な機能は搭載できても、太くしっかりとした針や、瞬間日送り機能といった機構の採用には向いていません。
一方、トルクの強い機械式は、針を動かす力も強く、重みのある針でも動かすことができます。また、クロノグラフ機能などの拡張性も高い印象です。
機械式腕時計のデメリット
ステータス性が高いなどメリットの多い機械式腕時計ですが、次に挙げる3つのデメリットも認識しておく必要があります。
・クオーツ式より精度が低い
・ぜんまいの巻き上げ具合を気にする必要がある
・衝撃・磁気に弱い
それぞれ詳しく確認しておきましょう。
クオーツ式より精度が低い
時計の精度の面から考えると、機械式はクオーツ式に劣ります。機械式の精度は日単位(日差)で表すのに対し、クオーツ式の精度は月単位(月差)で表す点からして、両者の精度の違いは明らかです。
クオーツ式はの精度は一般的に月差±20秒程度とされます。しかも、標準電波の受信によって自動的に時刻修正ができるタイプもあり、かなり高い精度を実現できます。
一方、標準的な機械式腕時計の精度は日差数秒〜数十秒です。例えば日差5秒の場合、月に換算すれば約2分半もの誤差が生じてしまいます。
ぜんまいの巻き上げ具合を気にする必要がある
機械式腕時計をしばらく放置していると、ぜんまいが全て解け、動きが止まってしまいます。
自動巻き式でも、着用せず40〜50時間ほど放置すると止まってしまうモデルがほとんど。つまり、2〜3日着用せずに放置すれば止まってしまうということです。一度止まると、再度巻き上げて時刻を合わせる手間が必要です。
これに対し、クオーツ式なら電池寿命(一般的に2〜3年程度)を迎えるまでは、放置していても動き続けます。
機械式の腕時計を止まったまま放置すると劣化の原因にもなるので、ぜんまいの巻き上げ具合を常に気にかける必要があります。
衝撃・磁気に弱い
機械式腕時計は、クオーツ式よりも衝撃に弱い傾向にあります。細かなパーツが緻密に組み合わさっているため、少しの衝撃でも内部の動作に影響が出る恐れがあるためです。
また、磁気に弱いのも機械式腕時計のデメリットです。ステップモーターを使用するクォーツ式に比べると影響はそこまでですが、磁気を帯びてしまうと、精度不良やパーツの破損につながることもあります。
もちろん、磁力に強いモデルもありますが、基本的には磁気に近づけないよう、普段から注意して使用する必要があります。
機械式腕時計の選び方
機械式腕時計を購入するに当たり、どのような点に注目して選ぶとよいのでしょうか。初めて機械式腕時計を購入する方が意識すべき、3つのポイントを紹介します。
防水性能で選ぶ
購入した機械式腕時計を普段使いするつもりであれば、防水性能をしっかりチェックしましょう。一定の防水性能があるモデルを選ぶことで、日常生活での水被りや浸水による故障を予防できます。
腕時計の防水性能にはいくつかの種類があります。最も防水性が低い「日常生活用防水」は、雨や汗などに耐える程度の耐水性しか期待できません。
食器洗いなど、日常的な水仕事にも耐えられる防水性能を求めるなら「5気圧防水」以上の機械式腕時計を選ぶようにしましょう。
防水性能について詳しくは、こちらの記事で解説しています。
大きさ・厚みをチェックする
ビジネスシーンで着用する予定があるなど、スーツと合わせる腕時計の場合は厚みにも注意が必要です。
ビジネスシーンで長袖シャツを着用するとき、腕時計はシャツの袖口の中に収まるのが理想です。ケースの厚みがありすぎるとシャツの下に収まらなくなり、せっかくのビジネススタイルが崩れてしまいます。デザインにもよりますが、一般的にスーツに合わせる時計は、ケースが36〜40mmほどで、厚さ13mm以下のものが良いとされています。
自動巻き式は、ローターなどの機構を搭載している分、手巻き式よりも厚みのあるモデルが多い傾向にあります。ケースの薄いモデルを探す場合、手巻き式を中心に探すとよいでしょう。
ブレスレット・ベルトの種類もしっかり検討する
腕時計を選ぶ際、どうしても文字盤やケースにばかり目が行きがちですが、ブレスレットやベルトも満足のいくものを選ぶことが大切です。
ステンレスやチタンなどの「金属ベルト」、クラシックなモデルに最適な「レザーベルト」、スポーティな印象の「ラバーベルト」、カジュアルシーンにマッチする「ナイロンベルト」など、素材によって印象はさまざまです。
また、バックルも穴にピンを通す「ピンバックル」、折りたたんで開閉する「フォールディングバックル(Dバックル)」などの種類があり、それぞれに印象が異なります。
ベルトやバックルを付け替えできるモデルもありますが、基本的には当初購入したブレスレットやベルトで使い続けることを前提に、後悔のないよう選びましょう。チェックすべきポイントとしては上記のポイントの他に、色・デザイン、着け心地などが挙げられます。
初めての機械式腕時計の購入におすすめのブランド・モデル
最後に、初めて機械式腕時計を購入する方におすすめしたい3つのブランド・モデルをご紹介します。
シチズン ツヨサコレクション
国産腕時計メーカーの中でも、技術派ブランドとして存在感を放つシチズン。機械式腕時計は、リーズナブルなラインからハイエンドモデルまで非常に幅広くラインナップされています。中でも、シチズンコレクションに属する「ツヨサ(TSUYOSA)」は、アンダー10万円の価格帯で良質な機械式腕時計が手に入るため、非常におすすめです。
デザインは、スポーティテイストがありながらも、控えめにまとまっている印象。カラーバリエーションが豊富であるため、さまざまなニーズに応えらえるコレクションと言えるでしょう。
また現在、2024年限定生産モデルの2種が登場しており、高い人気を博しています。
グランドセイコー ヘリテージコレクション SBGH273
1960年「世界に挑戦する国産最高級の腕時計をつくる」というコンセプトのもと登場した、日本発の高級腕時計ブランドが「グランドセイコー」です。日本の機械式腕時計のブランドとしてはトップクラスのステータス性を誇ります。
「ヘリテージコレクション」はその名のとおり、グランドセイコーが紡いできた伝統を継承する王道デザインが特徴のコレクションで、グランドセイコーらしい洗練された美しさが魅力です。
ヘリテージコレクションの「SBGH273」は、日本の秋分のころに広がる澄んだ夜空をまとったかのような、深い藍色のダイアルが印象的なモデル。日本の匠によって微細に調整された高精度な機械式腕時計は、普段使いにもおすすめの逸品です。
ロンジン マスターコレクション L2.793.4.73.2
1832年にスイスで創業したロンジンは、世界で初めて回転式ベゼルを腕時計に搭載するなど、プロフェッショナル向けモデルのパイオニアとして知られています。
2005年に発表された「マスターコレクション」は、複雑な機構を搭載したモデルが多く、機械式の魅力を深く味わえる同ブランドでも人気のコレクション。本格的な機械式腕時計としてはリーズナブルな価格設定も、人気の要因でしょう。
マスターコレクションのうち、ブランドの190周年を記念して発表されたモデルがこちらの「L2.793.4.73.2」です。シンプルながらもアラビア数字のインデックスとブルーの針がアクセントとなり、手元でさりげない存在感を示します。
オメガ スピードマスター 310.30.42.50.01.001
1848年にスイスで誕生した高級腕時計ブランド「オメガ」は、オリンピックの公式タイムキーパーとしても世界的に知られています。さらに、最高級ブランドに比べると手の届きやすい価格帯で購入できる点も、初めての機械式腕時計を選ぶブランドとしておすすめです。
そんなオメガの中でも特におすすめのモデルが、アポロ計画で使用されたことでも知られる「スピードマスター」です。クロノグラフやタキメータースケール付きベゼルを搭載しているのが特徴で、ステータス性と実用性を兼ね備えています。
スピードマスターの「310.30.42.50.01.001」は、月面着陸プロジェクトに携帯された第4世代のデザインを反映したモデルで、強化プラスチック製のガラスや、有名な「ドットオーバー90」など、第4世代の特徴を再現しています。
初めての機械式腕時計のご購入は正規販売店で
機械式の腕時計は、クオーツ式に比べて精度が劣るものの、適切にメンテナンスすれば長い年月にわたって使用できるモデルが多い点がメリットです。高級腕時計ブランドにおいて、ほとんどのモデルが機械式を採用しています。
機械式腕時計を選ぶ際には、防水性能や大きさ・厚みといった腕時計本体の特徴だけでなく、ブレスレット・ベルトの種類にもこだわり、満足のいくモデルを選ぶようにしましょう。
高級時計正規販売店HARADAでは、初めての方におすすめの機械式腕時計も多く取りそろえています。こだわりの1本をお探しの方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。
この記事の監修
- 時計は単なる時間を知るためのツールではなく、個性やスタイルを表現する大切なアイテムであるという信念のもと、ハラダではお客様一人ひとりのライフスタイルに合った時計を提案し、長く愛用できる商品選びをサポートしています。
当ブログでは、最新の製品レビュー、メンテナンスのコツ、時計に関するトリビアなど、腕時計に関する多岐にわたる情報を提供しています。
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