機械式時計の精度はどのくらい? 一般的な精度と高精度のブランドを紹介 - 高級時計 正規販売店 ハラダHQオンラインショップ

機械式時計の精度はどのくらい? 一般的な精度と高精度のブランドを紹介

スーパーレーシングのムーブメント

機械式時計の精度について「一般的な精度はどの程度なのか」と気になっている方もいるでしょう。精度が高い腕時計は時刻調整の頻度が少なくて済み、日常の使用でも便利に着用できます。また、もし機械式時計の購入を検討している場合には、事前に平均的な精度を知っておくことで、その時計の性能の高さを推し量ることができるはずです。

本記事では機械式時計の精度について、腕時計の販売スタッフが詳しく解説します。精度の高さで有名なブランドや、購入後に精度を保つ方法も紹介するので、ぜひ参考にしてください。

機械式時計の基本構造と仕組み

機械式時計の精度について理解するためには、前提知識として基本的な構造や動作原理などを知っておく必要があります。精度について詳しくお伝えするために、まずはここで機械式時計の基本構造と仕組みについて解説します。

機械式時計の構造

機械式時計のわずか数十mmのケースの中には、200~300の小さな部品が詰まっており、それらが複雑に絡み合う状態で構成されています。

機械式と並ぶ腕時計の機構としてクォーツ式がありますが、クォーツ式時計の動力は電池です。クオーツ式時計では、電圧をかけると規則的に振動する水晶振動子の仕組みを利用して駆動します。機械式に比べて精度が高く、大量生産に向いていますが、電子回路が寿命を迎えてしまうと修理の必要が出てきます。その際、もし交換用の電子回路が生産終了となっていれば、腕時計自体も寿命を迎えてしまいます。

機械式ムーブメントの分解図

一方の機械式時計の場合は、部品から一貫して製造しているブランドも多く、メンテナンスさえ欠かさなければ長年の使用が可能です。ブランドによっては永久保証を謳っているところもあり、寿命の面で考えるとクォーツ式時計より優れているのがわかります。

機械式時計を構成する部品には、以下のようなものがあります。

  • ぜんまい:機械式時計の動力源となる部品
  • 歯車:がんぎ車、香箱車、2番車、3番車、4番車などの部品アンクル:ブレーキの役目を果たす部品
  • てんぷ:振り子のような部品

これら全ては機械式時計を語る上で欠かせないパーツで、時計の精度にも深く関係します。

機械式時計の動作原理

機械式時計はぜんまいを動力源とし、巻いたぜんまいのほどける力を利用して駆動します。ぜんまいが多数の歯車と連動し、最終的に脱針機へとエネルギーが伝わることで時計として機能するのです。

この多数の部品の主軸となり、時計の精度を高めるために重要なパーツが脱進機です。脱進機とはがんぎ車とアンクルで構成される調速機構のことで、てんぷと他の歯車の間にあります。各ブランドでは日夜脱進機の研究がなされており、時代が進むに連れて、機械式時計も高精度なものが増えてきています。ブランド独自の脱進機としてはオメガの「コーアクシャル脱進機」が有名です。

コーアクシャル脱進機

微細なパーツが精妙に組み合わさって作動する機械式時計の製造では、1/100mm単位、0.000001g単位での調整が求められます。この複雑さと技術的な難しさが、高い精度を実現する上での最大のハードルとなっています。高精度な機械式時計を求める方は、機械式時計の高精度実現がどれだけ難しいものかを理解した上で、どの程度の精度であれば許容範囲になるかを考える必要があるでしょう。

機械式時計の平均的な精度

slgh005

平均的な機械式高級腕時計の精度は「日差-10~+20秒」程度です。日差とは、1日で何秒のずれが生じるかを表す指標で、高級機械式時計では1日20秒程度のずれなら許容の範囲内とされています。また、アンティーク時計の場合は、少し範囲が広がり、日差+30~60秒程度、もっとリーズナブルなモデルでは、さらにズレが大きい場合もあります。

一例として挙げると、写真の「Cal.9SA5」は、グランドセイコー「SLGH005」に搭載されるムーブメントです。約80時間のロングパワーリザーブに、薄型設計を実現しながらも、静的日差+5秒~-3秒まで追い込んでいます。

ちなみに、クォーツ式時計の平均的な精度は月差±15秒程度です。日差に直すと±0.5秒程度となるため、精度だけでいえば機械式時計よりもクォーツ式の方が優れていることがわかります。

高級機械式時計の精度指標

機械式時計の精度はブランドやモデルにより異なりますが、高級機械式時計は、下位の機械式時計に比べると精度の高いものが多くなっています。これは精度の高さを担保するために、多くの高級ブランドで認証試験が行われているからです。該当モデルが高い精度を持っているかを見極める指標としては、C.O.S.C.やMETAS認証などが挙げられます。

coscのロゴ

C.O.S.C.(スイスクロノメーター認定)は、1973年に設立されたスイスのクロノメーター認定機関による認定です。スイス国内で製造された時計のみを対象としており、年間160万本以上が認定を受けています。

C.O.S.C.の認定条件

  • 「日差-4~+6秒以内」の精度
  • 15日間にわたる動作、耐久性テストの通過 など

このようにC.O.S.C.には、時計の精度を担保する厳しい基準が設けられています。つまりC.O.S.C.認定を受けている時計は、このテストに通過するほどの品質や精度の高さを保証されているということです。

マスタークロノメーターの認定書

また時計の認証試験には「マスター クロノメーター」と呼ばれる認定もあります。この認証はオメガとスイス連邦計量・認定局(METAS)が共同で創立した認定制度で、すでにC.O.S.C.の認定を受けた時計のみを対象としています。

マスタークロノメーターでは、腕時計にムーブメントをケーシングした状態で、スイスクロノメーターよりさらに厳しい基準で検査を行います。創設からしばらくはオメガの腕時計のみが取得していましたが、2021年にはチューダーも取得に成功しました。

精度が高い時計かを判断する上では、これらの認証を取得しているかどうかという点も、指標となるでしょう。

高精度で有名な時計ブランド

高級な機械式時計では、精度に強いこだわりがあるブランドも少なくありません。ここからは、上述の認証試験に通っているモデルがある、または独自の高精度技術があるブランドを紹介します。高精度モデルも紹介するため、時計の精度に重きを置く方は参考にしてみてください。

ロンジン

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ロンジンはスイスの老舗ブランドのひとつです。機械式時計ではてんぷの振動数が多いほど計時の動作が安定すると言われていますが、ロンジンでは高精度ハイビートムーブメントにこだわっており、1959年には10振動/秒の腕時計を完成させています。

ロンジンを代表する高精度モデルが、1966年に開発された「ウルトラクロン」です。当時からC.O.S.C.の認定基準を上回る「日差±2秒」を実現していたこのモデルは2022年に復活し、今なおロンジンの高精度モデルの代表格として君臨しています。

オメガ

オメガは、高精度という観点で多くの人から信頼されているブランドの一つです。

オメガのモデルはほぼすべてがマスタークロノメーター認定を受けており、安定した精度と高い耐磁性を誇ります。そしてその中でも、2023年に登場した「スピードマスター スーパーレーシング」は特筆すべき存在です。スピレートと呼ばれるシステムによって、「日差0~+2秒」という驚異的な高精度を実現しています。

このスピレートは、オメガが現在、特許出願中の画期的なシステム。超精密なレート調整を可能としており、最高レベルの性能、精度、耐磁性を実現しています。

シチズン

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シチズンの最高峰「ザ・シチズン」は、精度に優れるクォーツウォッチを多くリリースする一方で、機械式時計においても優れた品質を誇っています。その代表格が「ザ・シチズン メカニカル Cal.0200/0210」です。

このメカニカルモデルに搭載されるCal.02は、スイスの名門「ラ・ジュー・ペレ」との共同によって誕生しました。優れた装飾だけでなく、フリースプラングテンプを備えるなど、先端技術が駆使されており「日差-3~+5秒」と、C.O.S.C.の基準を上回る精度を実現しています。

グランドセイコー

世界でも知名度を伸ばす高級腕時計ブランドのグランドセイコーも、その精度の高さに定評があります。

グランドセイコーの高精度モデルとして挙げられるのが「メカニカル ハイビート 36000」です。「cal.9S85」を筆頭とするハイビートムーブメントでは、1時間当たり3万6,000振動のハイビートによって日差-5~+3秒の精度を実現しています。

ちなみに、セイコー、グランドセイコーでは機械式とクォーツ式のハイブリッドといえる駆動方式「スプリングドライブ」も展開されています。ぜんまいを動力としつつ、IC回路で制御することで、機械式とクォーツ式の長所を兼ね備えた画期的な駆動方式を持っています。そのため、スプリングドライブは高精度な時計としても非常に有名です。

精度に影響を与える要素

機械式時計の精度は、ムーブメントなどの内部要素だけでなく、環境などの外部要素にも左右されます。ここでは機械式時計の精度に影響する要素について、内部と外部の観点から解説します。

内部要素

時計の精度はケースに組み込まれた内部要素が大きく関係します。例えば、同じブランドでも搭載されているキャリバーによって精度は異なります。精度の高い機械式時計を手に入れたいときは、C.O.S.C.やMETAS認定を取得したモデルを検討するとよいでしょう。

なお機械式時計の精度を保つために、シリコン製ひげぜんまいなどの独自部品を使っているブランドもあります。シリコン素材は耐久性が高く、磁気の影響も受けにくいため、従来の金属素材を使ったムーブメントよりも精度が安定します。このように、精度を高める上位パーツ、技術があることも知識として押さえておきましょう。

外部要素

磁気検査

機械式時計の精度は、日常の保管方法が影響して下がってしまう可能性があります。例えば機械式時計は何百ものパーツが繊細に組み合わさっているため、強い衝撃が加わると精度が狂ってしまうことがあります。

また温度や湿度など、機械式時計を保管する際は、環境要因にも注意が必要です。激しい温度差は、金属パーツの膨張や縮小などの故障につながる恐れがあります。湿度が低すぎる場所で機械式時計を保管すると、潤滑油が乾いてしまい正常に作動しなくなる可能性もあります。

その他、日常の使用においては磁気帯びの影響についても考慮しておくことが大切です。現代のあらゆる電子機器は磁気を発しているため、耐磁性の低い時計の場合は磁石や電子機器から一定の距離を置いて使用することも心がけましょう。磁気に関する不安のある方は、高帯磁性の時計を選ぶことも視野に入れてみてください。

機械式時計の精度を維持するためのメンテナンス方法

上記で説明した外部要素に関しては、適切なメンテナンスを行うことで精度を保ちやすくなります。機械式時計の正しい取り扱い方を知り、長く愛用するための土壌を整えましょう。

最後に、機械式時計の精度を維持するためのメンテナンス方法を具体的に紹介します。

定期メンテナンスの重要性

機械式時計を長く愛用するには、定期的なメンテナンスを怠らないことが重要です。機械式時計のメンテナンスはオーバーホールと呼ばれ、パーツを分解して洗浄や修繕、交換などを行います。

機械式時計のオーバーホールの推奨頻度は、一般的に3~5年に一度とされています。ブランドによっても異なるため、購入時に確認しておくとよいでしょう。

オーバーホールをしないまま機械式時計を着用し続けると、潤滑油の劣化によるパーツの摩耗、ひいては時計全体の故障につながります。丁寧に製造された時計を台なしにしないためにも、定期的なメンテナンスは欠かさないようにしてください。

日常的な取り扱いと保管

アフターサポート

機械式時計の精度を保つためには、衝撃を与えないよう丁寧に取り扱うことが重要です。また長期間駆動させずに放置していると潤滑油が固まり、故障の原因となります。毎日の着用や、小まめな巻き上げなどをして、定期的にぜんまいを動かしてください。

機械式時計の保管には、温度と湿度の安定している場所が適しています。温度については、5~35度の範囲から逸脱しない場所を選びましょう。またパーツの劣化を引き起こす、直射日光が射す場所や磁気にさらされる場所も避けて保管してください。

高精度の機械式時計を長く愛用するためには、コレクションケースに収納するなど、外部の影響を受けない状態で保管するのがおすすめです。

機械式時計の精度を理解して満足した時計選びを

機械式時計の精度を重視するなら、まず基準となる精度を知ることが大切です。基準以上の精度を求める方は、標準的な精度を踏まえた上で、精度に定評のあるブランドの中から探してみるとよいでしょう。

機械式時計の精度を維持するためには、定期的なメンテナンスも重要です。適切な取り扱いを心がけ、お気に入りの一本を長く愛用してください。

機械式時計を購入する際は、高級腕時計正規販売店HARADAのご利用がおすすめです。HARADAは創業90年以上の老舗販売店で、充実したアフターサポートや点検サービスをご用意しています。購入後、腕時計の精度に不安を感じたときは、無料の精度検査もご利用いただけます。興味がある方は、ぜひHARADAまでお気軽にお問い合わせください。

この記事の監修

腕時計販売店 HARADA
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