タイトルへリテージコレクションの文字盤を俯瞰した画像

【仕組みは?クォーツ式、機械式との違いは?】
正規販売店がグランドセイコーの9Rスプリングドライブをご紹介

マニファクチュールの高い技術力を駆使し、「理想の実用時計」を追求し続けるグランドセイコーはその日本らしい匠のものづくりが評価され、国内外問わず高い人気を集めています。

そんなグランドセイコーが生み出した独自ムーブメント、それが「9Rスプリングドライブ」です。

当記事では正規販売店が機械式、クォーツ式との違いを踏まえながら、スプリングドライブというムーブメントについて詳しい仕組みやメリットをご紹介いたします。

 

 

グランドセイコーの誕生と独立

初代グランドセイコーの画像

1960年台、初代グランドセイコーは世界に挑戦する国産最高級の腕時計というコンセプトのもと誕生しました。

その挑戦の足がかりとして当時世界最高峰であった天文台コンクールに出場し、わずか数年足らずでトップを狙えるまでに技術力を向上。そして今に至るまで、スプリングドライブに代表される数々の画期的技術を生み出し続け、国産高級時計ブランドの地位を獲得しています。

2017年にはセイコーから独立し、その「SEIKO」ロゴは文字板から姿を消すことになります。グランドセイコーは大手時計メーカーの高級シリーズラインという立ち位置から、一つの高級時計ブランドとして生まれ変わったのです。

 

 

GSの独創性が形となった「9Rスプリングドライブ」

スプリングドライブは機械式時計のようにぜんまいを動力源とし、クォーツ式時計のように水晶振動子を用いて時計の精度を制御する、機械式とクォーツ式のハイブリッドのようなムーブメントです。

9Rスプリングドライブの画像

精度は月差±15秒と、機械式時計の一般的な精度(日差15秒程度)を優に超え、クォーツ式時計と同等の精度を誇ります。

構成する部品数は200以上、クロノグラフモデルであれば400を超えており、グランドセイコーの熟練の職人による0.01mm単位のち密な作業でないと組み上げることができません。

スプリングドライブ構成の各部品を並べた様子

その独創性の高さや優れた性能は国内外問わず高い評価を獲得し、グランドセイコーの技術力の高さの象徴とも呼ばれています。

 

 

スプリングドライブは機械式?クォーツ式?

さて、スプリングドライブに対する評価において、その革新的技術や性能を称賛する意見の一方で「スプリングドライブ=クォーツ式であり、機械式が好きな人に敬遠されがち」という意見を見かけることがあります。

SBGJ237のリストショット

確かに機械式は腕時計の起源であり、物理的な力だけで時を刻むメカニクスにはロマンを感じざるを得ません。

しかし、クォーツ式も実用性という面では極めて優秀な時計です。精度に優れ、機械式のようにぜんまいを巻き上げずとも電池の保つ限り動き続けてくれる時計は、これ以上なく実用的と言えるでしょう。オーバーホールの頻度も抑えられ、メンテナンスフリーというのも好印象です。

SBGX261のリストショット

そもそも、本当に「スプリングドライブ=クォーツ式」と言えるのでしょうか。というのも、グランドセイコーというブランドにおいてクォーツ式時計とスプリングドライブはその特徴が大きく異なります。

一際異なっているのが精度でしょうか。スプリングドライブの精度は月差±15秒であるのに対し、グランドセイコーの誇るクォーツムーブメント「9Fクォーツ」の精度は年差±10秒であり、1ヶ月に1秒もズレません。その代わりスプリングドライブでは、クォーツ式に比べGMTやクロノグラフといった追加機能を搭載したモデルが多くリリースされています。

実はこの違いのワケは、スプリングドライブの仕組みを考えると見えてきます。クォーツ式と思われがちなスプリングドライブですが、その構造はかなり機械式に似ていることはご存知でしょうか。

ここからはそんなスプリングドライブの仕組みについて、機械式の説明を交えながらご紹介します。

 

 

スプリングドライブはいかにして時を刻むのか

スプリングドライブの解説の前に、まずは機械式時計の構造について簡単にご紹介いたします。

スプリングドライブの仕組みの画像 引用:Seiko Watch Global「Spring Drive function」

一般的に、機械式時計はぜんまいのほどける力を歯車に伝達することで、歯車の中心にある針を回転させて時刻を表示しています。

しかし、ゼンマイ駆動のおもちゃを想像するとわかりやすいですが、巻き上がったゼンマイを解放させると一気に全てほどけてしまうため、歯車、針が高速で回転してしまい、時計としての役目を果たすことができません。

ぜんまい駆動の時計が正しく時を刻むためには、ぜんまいのほどける早さにブレーキをかけ、正しい周期で歯車を回す必要があるのです。

スプリングドライブにブレーキがかかる仕組みの画像 引用:Seiko Watch Global「Spring Drive function」

機械式時計にはこの役目を担うブレーキング機構として「脱進機(エスケープメント)」が搭載されています。脱進機は1歯ずつ歯車にブレーキをかけることでゼンマイのほどける早さを調速し、正しい時間を生み出すことができます。

スプリングドライブの歯車にブレーキがをかける仕組みの画像 引用:Seiko Watch Global「Spring Drive function」

秒針が1秒を細かく刻むのもこの小刻みなブレーキによるものであり、そのまま精度に直結する脱進機は「機械式時計の心臓部」とも呼ばれています。

 

対するスプリングドライブの構造は、ブレーキにあたる脱進機を除きほとんど機械式と変わりません。

スプリングドライブの仕組みの画像 引用:Seiko Watch Global「Spring Drive function」

スプリングドライブのブレーキ機構には脱進機の代わりにTSR(トライシンクロレギュレーター)と呼ばれる調速機構が用いられています。

トライシンクロレギュレーターの画像

このTSRは電磁石によって歯車にブレーキをかけることでゼンマイの解ける速度を調速(遅く)し、正確な時刻を生み出します。

そのブレーキはクォーツ式時計のように水晶振動子とIC(集積回路)によって制御されており、機械式時計の脱進機に比べ、非常に精度に優れた調速を行うことができます。

スプリングドライブがクォーツ式だと呼ばれているのはこの調速機構の仕組みゆえかもしれません。

トライシンクロレギュレーターの仕組みの画像 引用:Seiko Watch Global「Spring Drive function」

つまり、スプリングドライブと機械式時計は、採用されている調速機構が異なっているだけであり構造はかなり似通っているのです。確かに水晶振動子が精度の制御に関わっている点ではクォーツ式と同様ですが、一概に「スプリングドライブ=クォーツ式」というのは間違いであり、「脱進機に水晶振動子を用いた機械式時計」と呼ぶのが正しいでしょう。

ちなみにクォーツ式時計は電池を動力としており、水晶振動子で制御した正確な1秒をモーターによって針に伝えているため、非常に精度に優れた時計を作ることができます。その点からも、ぜんまいで動き、モーターを使っていないスプリングドライブとは構造が異なっていることが伝わると思います。

余談

スプリングドライブと同じ仕組みだと勘違いされやすいムーブメントに「オートクォーツ(キネティック)」が挙げられます。

オートクォーツは内部に発電機構が備わっており内部のローターが回転することで発電し時計を動かしますが、その他の仕組みはクォーツ式と同じであるため、スプリングドライブとは別物です。

 

 

スプリングドライブのメリット

クォーツ式と機械式のいいところ取りをしたかのようなムーブメント、スプリングドライブ。ここではその特徴やメリットを機械式、クォーツ式と比較してご紹介します。

 

ぜんまい駆動としては異例の精度

SLGA009のリストショット

同じぜんまいで動く機械式と比較すると、スプリングドライブの精度は圧倒的です。

一般的な機械式時計の平均誤差が日差±15秒であるのに対し、水晶振動子によって制御されたその精度は日差±1秒まで追求されており、中には日差±0.5秒という数値を実現したムーブメントも発表されています。

また、時計自体の精度の高さはクロノグラフ等の計測機能の精度に直結するため、スプリングドライブは機械式に比べ非常に正確な計測が可能です。

 

独自構造が生み出す堅牢性

機械式時計の故障の理由として内部部品の摩耗、損耗が原因として挙げられ、中でも脱進機の構成部品の一つである、歯車と噛み合ってブレーキをかける「アンクル」と呼ばれる部品が摩耗しやすいと言われています。

スプリングドライブのアンクル部品の画像

スプリングドライブは電磁石を用いるその構造からアンクルを搭載していないため堅牢性や耐衝撃性に優れ、強固なスポーツ、ダイバーズウォッチを作ることができます。

スプリングドライブダイバーズの文字盤をアップで見た様子

 

ぜんまい駆動ゆえのハイトルクと利便性

スプリングドライブクロノグラフのダイアル

モーターで動くクォーツ式時計と異なり、スプリングドライブは「ぜんまい」で動いている為、機械式と同様に強いトルクを有しています。そのため、重厚な針やクロノグラフGMTといった強いトルクが必要な機構を採用することができます。

また、スプリングドライブはぜんまいのほどける力を利用し、自転車のライトと同じ原理で発電することで水晶振動子やICを動かしています。つまり動力関係が自己完結しているため、クォーツ式のように電池交換の必要がありません。

 

見るものを魅了する優雅な運針

スプリングドライブの針をアップで見た様子

クォーツ時計のような1秒ごとのステップ運針や、機械式のような細かく刻むビート運針と異なり、スプリングドライブはTSRの採用により文字板の上をすべるように進むスイープ運針となっています。

「御神渡り(おみわたり)」ことSBGY013の青針が描くスイープ運針を動画に収めました。

元来、スイープ運針は機械式のように1秒を細かく刻む運針のことを指しており、クォーツ式のステップ運針との区別に使われていました。しかし、今や機械式の運針はビート運針と呼ばれるようになり、厳密にスイープ運針と呼べるのはスプリングドライブのようなごく一部のムーブメントだけになりました。

 

 

充実のアフターサポート

アフターサポートしている様子

グランドセイコーは腕時計の品質を保証するために、非常に充実したアフターサービスを提供しています。2021年10月1日に延長された5年間もの保証期間があるのに加え、オーバーホールや電池交換ではケースの研磨などの追加サービスを受けることができます。以下ページも参考にしてみてください。

今回延長された5年間の無償保証は、2021年1月1日以降にご購入されたグランドセイコーのみが対象となります。2020年以前にご購入されたグランドセイコーは対象外となり、無償保証期間は従来通りの3年間となりますのでご了承ください。

 

 

GSの技術力を体感。9Rスプリングドライブのオススメモデル

ここではグランドセイコーの技術力を実感できる9Rスプリングドライブのオススメモデルをご紹介致します。

 

雪原をモチーフとした定番中の定番モデル「SBGA211」

グランドセイコー雪白の文字板を俯瞰した様子

グランドセイコー誕生の地、信州の透き通った雪原を表現したヘリテージコレクションの一本です。非常に細やかな凹凸で降り積もった雪を再現した文字板から「スノーフレーク」「雪白」の愛称で親しまれる本モデルは、その美意識の表現と実用性で世界中で愛用されています。ブライトチタン採用でキズに強く軽いという優れもので、ブルースチールの秒針のアクセントで遊び心も忘れていません。

「グランドセイコーを勧めるならまずはこれから」というほど、王道かつ信頼の一本です。

 

そよ風に揺らぐ諏訪湖の水面をイメージ
「SLGA019」

SLGA019

グランドセイコーの次世代デザインコードを採用したこのSLGA019は、早朝の風でさざ波を立てる、諏訪湖の水面から着想を得たグランドセイコーサロン限定モデルです。

繊細なディテールが持たされたブルーダイヤルは光を受けるたびにニュアンスのある輝きを見せ、深みのある青が涼やかな表情を見せてくれます。

豊かな自然に囲まれた信州 諏訪湖にオマージュを向けた本作は、日本の美しさを巧みに表現してきたグランドセイコーらしい一本と言えるでしょう。

SLGA019の文字盤

ムーブメントに関しては、最先端の機構を多く採用したハイスペックスプリングドライブムーブメント「キャリバー9RA2」を搭載。最大約120時間(約5日間)という極めて長いパワーリザーブを搭載しており、高い精度も兼ね備えつつも、薄型化によって快適な着用感を実現しています。

なお、グランドセイコーからは同じく諏訪湖の水面をモチーフに採用した「SLGA021」も登場しています。こちらはケースにステンレススチールを使用しており、暗いネイビーブルーの文字盤はビジネスシーンにも当てはまる高い汎用性を備えています。

こちらも夏にオススメのモデルとなりますので、ぜひ比較してみてください。

SLGA021

 

知性の奥底に眠る野性を呼び起こす「SBGC253」

SBGC253を腕につけている様子

「SBGC253」は精巧な技術と無比の美しさとが融合した、スプリングドライブクロノグラフGMTモデルです。

シャイニーホワイトカラーの文字盤とブライトチタンの組み合わせが高級感を醸し出し、エッジの効いた力強いフォルムが個性を引き立てます。また、クロノグラフとGMTに始まる多機能性によってカジュアルシーンを中心に活躍し、持つ者に自信とステータスを与えます。

スプリングドライブによる高い技術力も体感できるモデルとなっています。

SBGC253を腕につけている様子

なお、本作は3針モデル「SBGA481」が登場しています。スポーティテイストの度合いでセレクトすることをおすすめいたします。

 

飽きのこない輝きを備えた定番モデル「SBGA373」

SBGA373のリストショットの写真

王道のデザインコードと、美しいシャンパンゴールドダイアルを採用したスプリングドライブモデルです。

中心から放射状に広がるダイアルは手元に輝きを与え、着用者の気品を際立たさせるモデルとなってくれます。また、青針がアクセントを加えただけのシンプルなフェイスは、長年連れ添っていくにふさわしい普遍的な輝きを放ちます。

 

他のグランドセイコーと比べても比較的入手しやすい価格帯になっており、初めてのスプリングドライブモデルにもぴったりの一本です。

 

GMTを搭載したモノクロスポーツモデル「SBGE277」

SBGE277のリストショットの写真

グランドセイコーのスプリングドライブモデルは、穂高連峰に囲まれた「信州 時の匠工房」で、熟練の職人によるハンドメイドで作られています。穂高連峰は、遥か昔に火山活動で大陸が激しく隆起したことで生まれ、長い年月の風雪に山肌を削られ続けることで、ダイナミックな山岳地帯になりました。この「SBGE277」は、そのような有機的なパターンを模したブラックダイヤルが印象的です。

ムーブメントにはGMT機能つきスプリングドライブムーブメント、キャリバー9R66を搭載。スポーティテイストを加速させるツートンカラーのベゼルが力強く精悍な印象も作り出しています。

 

 

まとめ 「独創性と革新に満ちたスプリングドライブ」

当記事ではスプリングドライブの仕組みやメリットについて、他ムーブメントの説明も踏まえながらご紹介しました。

グランドセイコーの技術の粋を集めたスプリングドライブはもはやグランドセイコーの看板とも言える存在となっており、その可能性は無限大に広がっています。

ぜひこの革新技術を手に入れて、あなたのウォッチライフを次なるステージへ進めてみませんか。

グランドセイコー その他のムーブメント