グランドセイコー誕生の秘密
1960年の誕生から続く、たゆまぬ世界への挑戦の歴史。それは、過去から現在そして未来へ紡ぐ物語。
精度とデザイン、世界への挑戦はその追及から始まっています。
世界に誇れる高精度を、独自技術で実現する。
明治時代の日本の時計産業の歴史は、欧米の時計の輸入・販売から始まりました。
明治20年代に入ると国内にも時計工場が生まれ、その一つが明治25年(1892年)に設立された「精工舎(せいこうしゃ)」でした。当初は外国製を手本にした製品が主力でしたが、戦後になると復興への足掛かりとして、精密機械が国の基幹産業として重視され、時計もその一つに選ばれることになります。
しかし、欧米との技術差は歴然としていた上に、輸入規制のため最新の工場機械も手に入らず、セイコーも工作機械開発から始める必要がありました。
国産化を急いだ理由
ところで、セイコーはなぜ高品質な国産時計の製造を急いだのか。
その理由の一つは1961年に、腕時計の輸入自由化を控えていたからです。高品質のスイス製時計が大量に入ってくれば、国内の時計産業は駆逐される恐れがありました。
「スイスに追いつき、追い越す」を合言葉に国際的に通用する高精度腕時計の追求と、その製品化に挑戦する必要があったのでした。
熟練の職人の技術をとことん活かす
精度を高めるには、温度変化に強い「ひげぜんまい素材」と、空気との粘性摩擦が少ない「スムースてん輪」が必須でした。
セイコーは大学との共同研究や最新工作機械の導入によって、難問をクリアしていきます。
さらにてん輪の芯にかかる衝撃を受け止める「耐震装置」も、受石をバネで支える独自技術「ダイヤショック」によって解決します。しかし、パーツだけが揃っていても精度を高めることはできません。時計のクセを見抜き、一本ずつ調整する熟練の職人の腕を活かすには、精度を追い込める製造を実現しなければいけませんでした。
1958年の「ロードマーベル」に搭載されたムーブメントは、調整しやすい「可動ひげ持ち」だったがてん輪の直径は小さいものでした。
1959年の「クラウン」はてん輪を大きくして等時性を向上させましたが、ひげ持ちは固定式のままでした。そこで12mm径の大型てん輪と可動ひげ持ちを備えるCal.3180を開発し1960年の「グランドセイコー 」に搭載したのでした。
世界と戦える国産時計の誕生
世界と戦える高精度時計を目指して生まれた「グランドセイコー」は、セイコー独自技術の集合体でした。そしてその誕生は、海外製品を追いかけ続けた国産時計が、ついに本家に並ぶレベルに到達した瞬間でありました。
ディティールに表れた、美しさの飽くなき追求。
1961年に迫った腕時計の輸入自由化の目前、1960年12月18日に誕生した「グランドセイコー 」は、世界基準を意識して開発された初の国産時計でした。
その為、性能と品質の証明となる「精度」だけでなく、時刻が読みやすく装着感に優れ、さらには所有する喜びを実感できる「デザイン」においても、先行するスイス勢に追いつく必要がありました。
精度とデザインの両立
グランドセイコー のデザインが生まれるきっかけも、ムーブメントと同様に「ロードマーベル」と「クラウン」と言う二つのモデルの存在がありました。
「ロードマーベル」は実用重視の設計思考から生まれた時計だり、針もインデックスもキリッとした明快なデザインです。一方「クラウン」は、精度追求はもちろんですが、細い針で精細かつ優雅な雰囲気に仕上げていました。
この実用性とエレガンスという両者の個性を融合させたのが、「グランドセイコー 」だったのです。
デザインを魅せる細部への追求
ダイヤカットされた多面体のインデックスや針は、それまでのノウハウを活かして制作しています。このインデックスはボンベ式のダイヤルに植字され、これにも高難度の技術が求められますが、セイコーでは既に過去の2作で技術を会得していました。 さらに細部の品質を高めるために風防のアクリルの接着材料や、金張り技術の向上にも着手します。どっしりと存在感があるラグ部分は、独自の技術でロー付けされ、細部も完璧に磨き込まれました。
時代を写し出す鏡
1960年代といえば、IVTファッションが大流行し、鮮やかな配色やミニスカートなど、既成概念にとらわれない新しい感性が芽吹き出した時代でした。
もはや時計の評価基準もムーブメントの品質だけではなくデザインの美しさも大きな価値を持ち始めていたのです。
高精度でありながらエレガントさも両立させた初代グランドセイコー は、まさに「時代を写し出す鏡」でもあったのでした。
現代に受け継がれた、グランドセイコーのDNA
2017年3月、グランドセイコー は新たなスタートを切りました。
SEIKO傘下の1ブランドから離れて「Grand Seiko」という独立したブランドとなり、これまで受け継がれてきた「実用時計の最高峰」というコンセプトからさらなる高みを目指すのでした。
今後のモデルは精度技術やデザインに敬意を払いつつ、12時位置に「GS」「Grand Seiko」のロゴが掲げられます。
新生グランドセイコー からの第一弾は初代へのオマージュを込めた限定コレクション。「復刻デザイン」はプラチナ、イエローゴールド、スレンレススチールの3個のケースを用意し、初代モデルを現代的に熟成させた「現代デザイン」は軽く、硬く、美しい新素材のブリリアントハードチタン製ケースが用意されています。
今後のグランドセイコー は、グローバルブランドとしてさらなる進化を遂げます。スイス時計の協力なライバルとして生まれたグランドセイコー は、再び原点に立ち返ったのです。